第64話 祭りと村の事

 海辺の村へ到着すると。

 ちょうど、船が浮かんでいるのを、見せることになった。

 当然。第2の方は航海中なので、初期型である。


 ハル(船体)は航海後。

 電蝕作用が見られたので。外板をはがして、現在はカーボン構造。

 そのものが見えているため、真っ黒い。


「これは、カーボンですか?」

 田口さん。趣味が広いな。

 一目で、カーボンだと分かったようだ。


「そうです。中はハニカムにして、強度と浮力を担保しています」

「エンジンは、何を使用しているんでしょうか?」

「ターボファンと言いたいところですが。魔道式です。そう言えば、かっこいいですが。単なるコマのようなものです。回れと命令すれば、ずっと回るだけの物ですね」

「化石燃料ではなくて、魔法ですか? するとこれは、魔道具ですね」

「田口さん詳しいですね。そうです。空気中の魔素を利用して、回転しています。エコでしょう」

 そう言って、田口さんと笑い合った。


 その後。

 海の村にある施設を見学。

「冷凍・冷蔵設備がこの大きい建物で、そちらの、少し小さなものが、加工場となっています。海の村は、こんな感じで。海産物は、今晩持ってきてくれるそうですよ」

 先ほど紹介しながら、今晩宴会と言うことは。触れ回わってもらった。


「次は、西の村にある農場へと、向かいましょう」

「いやあ。村というには、規模が大きいね」

「少し前までは、始まりの村へ。ここから担いで、荷運びをしていたんですよ」

「それは、大変だね。それも、1年ちょっと前の話だよね」

「ええそうです」


 移動用の、トロッコへ乗って。西の村へ移動する。

 最初は、村から通っていたが。最近は、移住する人がぽつぽつと、家を建てている。


「ここの畑と、水田かな? 規模が大きいね。まさか、人力で管理をしているのかい?」

 国見さんの目が光る。機械でも売りつけるつもりかね。


「さすがに無理です。専用魔道具を、作物に合わせてカスタマイズしています」

「やっぱり、魔道具があるのだね」

 そう言って、国見さんは遠くまで続く畑を見ている。


「国見さんは、畑にお詳しいのですか?」

「家が農家でね。いやになって都会へ出たが、こういう風景はやはり。なんとなく懐かしくてね」

「そうですか」


 一通り見学をした後。村へ戻ってきて、村で宴会の準備をする。

 3人は村長に任せて、話を詰めてもらう。


 日没近くになって、皆が集まって来る。


「今日は、日本からのお客さんを歓迎と、皆にも関係があることについて、少し決めたい。じゃあ始めよう」

 その村長の掛け声で、いつものように。まったりと祭りが始まる。


「今回。日本との交流を始めるが。まず、最初に、この村の戸籍を作ろうと思う。これから先、子供も生まれるだろうし、必要だろう。どうだね」

「税金は払えんぞ」

「そうだ、貨幣もないしなあ。物納か?」


「いや、何かあったときには、どうせ皆で作業が必要なんだ。税金は考えていない。これから先で、事故で亡くなったが、日本へ帰りたいと。願うものが現れたときの、手続きの一環じゃな」

「だが、それだと。若返りはネックにならんかね」


「すみません。厚労省の国見です。今日は、過分な歓迎をして頂きましてありがとうございます。若返りも悪くはないと思います。むろん日本側での処理などを少し整える必要がありますが、知識を持った方が、若返って帰ってくれば。国としてもありがたいことです」

「だが下手に広まると、試しに死ぬ奴が出るかもしれんぞ。転生できるかどうかは、女神次第だからな」

「そこはまあ。宣伝次第ということがあるのかもしれません。宗教的な話ですが、努力したものは、まれに救済されるという感じで」

「日本でそれは。政教分離の原則に反するから、言っちゃあだめだろう」


「完全に、女神教が始まる気がするな」

「俺もそう思う。若いモノなら、こそっと継続をさせるのもありだが、年寄りは、戸籍からでっち上げる必要が、ありそうだな」


「わかりました。皆さんからのご意見を、参考として持ち帰り。検討をさせていただきます。それで、戸籍の方はいかがでしょうか?」


「そりゃ要るだろう。なあ?」

「そうだな。これから先。子供や孫の代で、困ることになるからなあ。佐藤君」

「えっ、なんで俺?」

「そりゃ。そんな、別嬪さんを抱えていりゃ。3代目には、身内ばかりになるだろうが?」

 村人の視線と、にやにやが止まらない。


「えっ、ここって。重婚ありなんですか?」

 国見さんと、溝口さんが驚いている。


「今は生活が安定したが、ちょっと前まで、コロコロ死ぬ場所だったからな。結婚で一夫一婦などにしたら。すぐ未亡人ばかりになってしまう」

「そうだな、食い物の確保も大変だった。今やっている祭りなんぞ、夢の又夢だったよな」

「そうだな、腹いっぱい食い物を食いたい。という事が夢だったよな」


 村人が口々に言うそんなセリフが、ちょっと前までのこの村での現実だった。


 神地さんが、分かってくれたようだ。

「大変だったのだね」

 しみじみと言ってくれて、ひどく胸に刺さった。


 その後ゆっくりとしながら、話をする。

 村に欲しいものとして、一家に一台で。3kva発電ユニット(インバーター回路とモーターのみ)と家電をお願いする。

 そんな話を話していると、誰かが、テレビと言ったが、番組は受信できないと言うことで、ゲーム機とセットをお願いした。

 俺は、いろんなジャンルの。本が欲しいと頼んだ。

 採取しておいた、マンガンノジュールを、サンプルという名のお土産として渡す。


 化石燃料について聞かれたが。この歴史以前に、生物が居て。堆積と高圧と高温が必要な化学変化だから、存在自体が怪しいと説明。多少落ち込んでいた。

 今度、土の精霊に聞いてみよう。


 神地さんに、ゲートみたいなものを作って、地球と固定できませんか?と聞く。

 同じ星の上なら大丈夫だろうが、世界をまたいで固定すると、悪影響が出そうで怖いと言われた。やはり、自分で努力をしなければ駄目なようだ。

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