第54話 ねねの部族
神は日本人という言葉に驚き。
動きが止まってしまった。
頭を上げてもらい。話を聞くことになった。
古くから、この地に住み着き。ご神木を祀っているらしい。
「だが神は、時々何もない所から現れる。最後に現れたのが3年前。だめな奴らを連れて来ていた。その前がさらに2年前。私は巫女としてもらった」
族長兼、巫女のねねは胸を張る。
とりあえず。持ってきたお土産を渡して、もう少し。詳しく話を聞こうと思ったが。出されたのは、神の飲み物と称する白いどぶろく。だが……。 これは、米を噛んで、ぺってした奴だよね。せめて、ぺっとしたのは、巫女のねねさんであってくれ。飲まないという選択肢は、なさそうだ。
浄化を発動しながら、飲み込んだ。
「今年の酒は、いかがだろうか?」
「良いのじゃないか?」
俺がそう言うと、小さな子? 中学生に、なっていない位だろうか?
顔に書かれている、泥の化粧が白だけだな。
ねねさんは白と黒。
その子が、褒められていたから、あの子が造ったのか。
じゃあ。いまいちとか言ったら、首とか平気で落とされたんじゃないか?
そう思って、ぞっとした。
「先ほど持ってきた、荷の中に、酒がある。出していいぞ」
やはり、白い化粧のその子が、荷物の前に跪き。何かを頂くような儀式をしている。けれど、こっちからだと、いろんなものが見えるんだよ。部族の視線を見ると、俺にわざわざ見せつけてる? そういえば、3年前とさらに2年前。ねねさんは5年前に、巫女にしてもらったといったな。
神地行人おまえは。そっち方面の、奴なのかぁぁ。
日本人として、だめだ。はっ。ここは日本じゃない。だからなのか? 定期的に表れ。神として、若い子を巫女として頂こうと……。
会いたいが、会ったらまず説教。いや逃がすとまずい。あーそうだな。お話し合いをしなければ。能力は何だ? 転移か? 空間系か? 逃げられないように魔道具を作らなければ。
「ねねさん。神様。神地行人様は、どうやってやって来るんだ?」
「はい。神様は、突然来られるので。来た時は見ていません。ですが、帰るときには天界へと通じる。不思議な板を開きます」
「板? どんな形だ? 」
そう聞かれて、ねねはこちらへやって来て、地面に枝で書き始める。
周りのみんなも、のぞき込む。
こっち側にいるのは、全員身内ね。地面に座っているけれど。
どう見ても、横開きのスライドドアと、もう一つは玄関ドアかな? 絵がうまいな。
「このような、板でございます」
絵を描きあげて、すごく満足そうに、ねねは答える。
「普通の扉だね。ということは空間系かな?」
周りの、精霊や妖精に。神地行人がこの世界に来たら。教えてくれと伝える。さらに、俺たちの村。大体の位置を、彼に伝えてくれと伝言をした。
話を聞くと、あのオークたちは、定期的にやってくるようだ。
お近づきのしるしとして、村の周囲に壁を造る。中に、簡単だが、家を建ててあげた。
井戸を掘り。水道を引く。作業をしていると、大木の横。
大きな切り株は、風呂だと言うので、給湯の魔道具を設置した。
沐浴をしないと、神様が会ったときに、いやそうな顔をするらしい。
ええい。
「神地行人め。何処までも」
あっ。声に出しちゃった。
香織が、一瞬目の光った、ねねを抑えてくれた。
あぶねぇ。
久美がこそっと言ってくる。
「気持ちはわかるけれど。ここでは神様だから、気をつけようね」
ふふっ、と笑っているが、ちょっと顔が引きつっている。
すると、妖精が教えてくれる。
「精霊にお願いすればいい。ちょっと表れて、跪けば。上位者だと彼らは認めるよ」
そう言ってきたが、それはそれでいやだな。
ぐじぐじ思っていると、火と土が現れて跪く。来たものは仕方が無い。茶番に乗ろう。
「久しぶりだな、2柱とも」
俺がそう声をかけると、周りからどよめきが上がる。
「元気そうで何よりだ。あっという間に、こんな所まで来るとはな」
「さっき妖精に伝えたこと、よろしくお願いします」
「ああ。分かった。任しておけ」
手を振って見送る。
精霊のおかげで、部族のみんな。見る目が一気に変わった。
特に、白い化粧の巫女さん。
すすす、と寄ってきて。
「私、りりと申します」
そう言って、俺に跪く。
「あなたは、精霊を従える者。やはり神なのですね」
すごい。ウルウルした目で、問いかけてくる。
「あーまあ、そうなのかな?」
「やはり。お願いします。このりり。誠心誠意お仕えいたします。あなた様の巫女として下さいませ」
もう。涙がこぼれて、化粧が。完全にピエロ状態で、怖いのだが。
周りのみんなは、あ~あという感じ。
遠巻きにして、生暖かい目で見ている。助けてよ。
少し離れたところで、みゆきや久美がぼそぼそ言っている。微妙に聞こえる声で。
「やーね奥様。あれってどうするのかしら? 小さな子供に……。 ナニする気よ」
寸劇をしている。
ねねさんは、それはもう。完全に期待に満ちた目。対して、香織は寒さを感じるような。冷たい目をしていらっしゃる。
「あー分かった。佐藤普人の名において、巫女としてりりを認めよう。だが、今すぐじゃない。もう少し、大きくなってからの話だ。いいね」
俺が言うと、メンバーが増えるだけか。という感じで、家族の期待感が下がった。
香織は、頭を抱えているけど。
そこからは、持ってきた日本酒で、宴会となった。
だけど、認めてから以降。りりが側にいて、離れないんだよ。どうしよう。
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