第48話 佐藤君の日常

「うー。バイメタルじゃレスポンスが悪い。やっぱりサーミスタだよな。あれって合成物の焼結。単純に考えれば、ヒーターだよな。温度で、抵抗値が変わればいい。スイッチは、ブリッジ回路で大丈夫だろうから。リレーかトランジスタ」


 俺はぶつぶつ言いながら、ちゃぶ台に向かっている。

 ふと見ると、周りにいる。

 みんなの目が、おかしい。

「どうしたんだ?」


「いや。佐藤さんが。さっきから、何もない空間に向かって、ぶつぶつ言っているので。遠巻きにしているだけで。別に、変な人だとか、思っていませんから。大丈夫ですよ」


 そう言って、元バスの運転手。

 高瀬勉さん55歳が、にこやかに言ってくれる。

 それって、変な人だと言われているよね。


「周りの魔素は、認識できました?」


 そう今。3人そろって、仲良く魔法の修行中。

 周りにある。魔素を取り込み。体の中で自由に、駆け巡らせる第1段階。

 これができれば、身体強化も使える。


 それが、できるようになれば、次は体からの放出を練習する。

 習得できれば、あとは、放出時に自分のイメージを、魔力として乗せるだけ。


 慣れれば、無意識にでも。できるんだけどね。

 自転車なんかと、同じ感じかな。


「まだ、よくできないです。なんだか、魔素っていうのが漠然として」

 金髪の信二君が言ってくる。


「それなら、これでどう?」

 自分たちの周りに、魔素をかき集める。

 周りで、妖精が乱舞し始める。

 妖精は、魔素が好きだよね。


「うわあ。なんか、空気が重くなった」

 感じることができたのか、誠一君が叫ぶ。


 その時。

「うわあ」

 叫び声が、信二君から発せられ。

 信二君の、手の辺りから、火炎が広がり始めた。

 周辺の魔素に、働きかけて、変化を打ち消す。


 信二君の、前髪が焦げてしまったが、仕方がないだろう。


「出すのはまだ早い。体の内側で循環させること」

「いや。魔法を発動しようとか、思っていなくて。ちょっと、火でもつかないかなって。思って」

「それは、魔法を発動しようとしたって。いうことだよね」


「えっ、ああっ?」

 信二君は、自分の言った言葉。矛盾に、気がつけないようだな。


 変な顔をしている、信二君。

「普通は、何もない所に、火なんかつかないだろう」

「ああ」

 こっくりと、頷く。


「それに対して。君は、火でもつかないかなあと、思ったんだよね」

「おう」

「それは。周りの何もない所に。火がつけとか。火が発生しろと、君が命令をしたから。周りの魔素が、魔力と変化して、実行された。つまり、君の意識により、魔法を使ったと。ならないかい?」


「おっ。おおっ。すいません」

 理解できたようだ。

「いや。良いんだけど。コントロールのできない変化は、単なる事故だから。危険だよ。さっきも、こちらで、変化をとどめなかったら。家が燃えていた。気を付けてね。まずは、コントロールだ」

「はーい」



 そう言って。俺は手元で、金属片を次々に錬成していく。


 こっちの勝手で作った。テスターを使い。

 抵抗値の変化を調べる。


 魔法を使い。

 凍る0度のイメージから、水が沸騰する100度まで。

 数値を、方眼紙へと、書き込んでいく。

 

 0度から50度くらいまで、変化が緩やか。

 50度から100度まで、一気に変化するグラフになった。


 うん。まあ、いいのじゃないか?

 ブリッジ回路を組み。

 一つの抵抗を、これと差し替え。

 セットで、もう片方の抵抗を、可変にすれば。

 ダイヤル式か、スライド式のリモコンができる。


 昭和40年から、50年くらいのレベルだな。

 そこで、思い出す。…… 冷媒どうしよう?


 この世界で、フロン君を合成して。

 オゾン君を、虐待するのも気が引けるな。

 どうしよう。魔道具の方がクリーンだよな。


 プレート型の魔道具。

 起動すれば、温度を一定にする機能。

 魔力を流せばオン。

 もう一度流せばオフ。


 温度を一定だから、暖房も冷房も関係ない。

 背面に、風の魔道具を付けて、強制的に空気を循環。


 色々考えながら、組み立てる。

 あれ? なぜか、トーテムポールができた。

 なんでだ? 

 仕方がない。

 ここは。トーテムポールは、魔道具だったと、布教するしかないな。


 すぐ横で、修行中のみんなの目が、冷たくなっている。

 うん。よく冷えるな。


 そうこうしていると、お昼になった。

 村上さん。宅間さんと、川上さんが覗きに来た。


「それじゃあ。休憩か昼から自習。どっちがいい」

「魔素の取り込みと、循環だけなので自習します。師匠は、その置物を作るのでしょう?」


「置物? ああ。これは、エアコンの魔道具だ」

「なんだか。呪われそうですね」

 村上さんに言われて、ダメージを受ける。

 俺は、泣きながら、かついで帰った。


 家に帰って。

 デザインを、みんなに考えてもらう。

 柱状の、スリットタイプのエアコンができた。

 全体に、光らせることもできて、明るさも3段階に変更可能。


 試しに、みんなの部屋へ設置をした。

 ついでに、居間や廊下。トイレにまで設置する。


 エアコンを置くと、隙間が気になり。

 今度は、家の補修と排気の取り回し。

 そんなことを考え、作業に入る。

 すると、久美から防音を見直してと、依頼が来た。


 結局。家の大改築。

 家の内外壁。

 天井を、やり直すことになる。


 外壁は、焼杉の外壁だったが。

 同じ雰囲気の、セラミックスをパネル化。

 腐っていた、下部から張り替える。

 その時に、発泡ウレタンをイメージした物質を充填する。


 内部も、部屋の間取り変更。

 そして、土壁をはがし。

 筋交いを入れて補強。


 空間にさっきの発泡剤を充填して、壁には無垢板を張っていく。

 久美から、ピンクの壁紙と言われたが、却下した。


 ちなみに、各部屋の上部には、明り取りと換気を考え。窓を変更。

 今まで、板でできた、突き上げ窓だったが取っ払う。

 木枠だが、2重のガラス窓を、取り付けた。


 土間と竈(かまど)を、潰そうかと考えたが。

 釜のご飯も食べたいと言われ。

 竈(かまど)部分は、家にでっぱり部分を作り、そちらに設置。

 各部屋。

 断熱と防音のために、天井を張って密閉したせいで、煙の排出が困難となったためだ。

 囲炉裏には、専用の排気装置を、天井につけた。


 玄関をつけて、げた箱の設置。


 各部屋の扉は、狭い廊下に配慮して横開きだが、ドアの厚みを増し、密閉性を高めた。

 各部屋の換気は、天井に吸排ダクトを通した。

 パイプの途中にボックスを作り、吸音材を入れて、フィルターの役目も持たせた。

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