第25話 平野開拓と変化
勢いのまま。道と線路を、この前見つけた平野部まで、一気に繋ぐ。
もうすっかりピクニック気分で、一応一つ屋根に暮らす。
家族の皆も、ついて来ている。
なぜかと言うと、試作自動車が出来上がったからだ。
ディーゼルエンジンを造ろうとか言って、2週間悩んでいたが。
発想そのものを変えた。
井戸に使った、単なる回転する魔道具。
あれの、少し大きな物を作り、そこにクラッチを繋いだ。
魔道具自体は、定速回転だから、速度は変速機で調整して、普通に走ったよ。
魔道具だから、とってもエコ。
村の人たちは、焼酎が守られたと大喜び。
良いんだけどね。
どんどん、道と線路を繋いでいき。あの割れ目を超えて、進んで行く。
割れ目は、トンネルではなく。
ごっそりと、えぐり込んで道を付けた。
あくまで、道は標高差なく。なるべく、平たんに造った。
だが、平原側に届いたとき。
妖精から警告がやってくる。
この先は沼地。
つまり湿原で、水の中に、俺たちや動物にとって、悪い物がいると教えられた。
とても小さくて、水に入ると皮膚を通して体に入って来る。
入ってくると、弱って死んじゃうよと、可愛く脅しを言われた。
皆には、ちょっと車に居てもらって、妖精に悪い物がいる範囲を教えてもらう。
最大パワーの電撃を食らわせて、水をせき止めていた、堤を抜いた。
大規模な、自然破壊。
妖精は、周りで喜んでいるけどね。
もう一度、悪い物を探してもらう。
すると、あの一回で終わったようだ。
水が抜けるまでは、しばらくかかりそうなので、今日の作業はここで終わらせた。
車で、村まで帰る。
この前。3日かかった道が、2時間もかからず帰ってこれた。
あまり、スピードは出ないのだけどね。
そう言えば、隆君もこっちに来てから、すごく賢く良い子になった。
もう、幼児と言う感じでは、なくなっている。
そして列車だ。
おもちゃのようだが、車を見て。村長もそれ以降、列車がいるとは言わなくなった。
もうね。いろいろ考えて試しても、ことごとく、素直にうまくいったためしがなくて。
心が折れそうになってしまう。
できあがるのは、妥協満載や、中途半端なもの。
それでも村の人は、喜んでくれている。
敷設した線路は、また何かに使えるか。
基本。石の上に鉄板を巻き、表面に亜鉛をコートしてあるから、すぐに錆びる事もないだろう。
列車は、ほっといて、小型荷物運搬用トロッコを作ってみた。
すると、使った海の民から、冷蔵庫を搭載してくれと言われて、試す。
だが、構造的に隙間が無いとうまく冷えないため、使用目的を聞くと、魚を運びたいと言うので、氷が出て来る魔道具を作ってみた。
そうすると、すぐに、海から魚が届けられるようになり、海側への線路は2本に増設されて、荷運びトロッコはうまく運用される様になった。
そうしているうちに、平野部の水が抜けたと、妖精から連絡があり、また行ってみる。
干上がった元湿原を、道を作りながら。ついでに干拓もして進んで行く。
途中で、1人の骨と9人余りの墓を発見した。
たぶん、湿原で水の中を歩いたり、水を利用して寄生虫に感染して、動けなくなり。ここで息絶えたのだろう。ここはちょど、湿原との境で最後の一人が、皆を見送ったのだろう。
村まで、持ち帰ろうかとも思ったが、9人の墓。すぐ横に埋葬した。
村に帰り、村長に報告をする。
村長は、「そうか」とだけ、答えたのみだった。
後で村の人に聞くと、村長と同時期に来た人が、幾人か参加をしていたらしい。
まあ道もついたし、会いに行くのは、いけない距離じゃない。今度、看板を立てておいてあげよう。
こんな感じで、地道に発展をしてきているが、精霊に教えられた、他の大陸に向かうため。船も作らないといけない。
実は船外機タイプは、もう実用となっている。
海辺の人たちが、漁をするのに、非常に助かると言ってくれた。
意外と、離岸流とかがあって、沖から戻ってくるのが、大変だったらしい。
ついでに作った、双胴船が漁をするのに便利だとも聞いた。
双胴船の船底を、どうしてもガラスにしたくて、妖精たちと素材の強度を上げるため苦労をした。そのおかげで、村の家にガラス窓が付いたが、今度はカーテンがいるわねと問題になった。急遽すりガラスも作ったし、風で砂を吹き出すサンドブラスターも作ってみた。いろんな加工に使えると評判になった。
そう言えば、村で使っている光魔法の明かりに、副次的効果があり。
家にいると、ケガが早く治るらしい。
村人に言われて、そりゃそうだと納得をした。
とまあ、こんな生活を一年近くして、俺が村のみんなから、賢者と呼ばれ始めたころ。
そんな、春のある日。
村に来た新人の中に、ありえない人を見つけてしまう。
僕は信じたくなかった……。
「高橋香織です。よろしくお願いします」
「委員長。なんでこっちに?」
その声に驚き、こちらを見る委員長。
そしてお互いに、一年ぶりに顔を見合わせる。
そして、思い出とともに、あの笑顔が目の前にあった。
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