アースドラゴン戦1

 再びウルカン領の領境、すなわち以前ボク達が領地に入る前に馬車を止めた場所だ。


「GaooooooooOOOOO!!!」


 ウルカン領地の向こうから7~8メートルぐらいのアースドラゴンが向かってくる。デカい割にかなり速い動きをしている!!



◇◇◇


 半日前、またもやマスターのシォマーニおじさんから依頼を受ける。内容はウルカン領地沿いの街道で通行人達を襲う一頭のアースドラゴンを討伐して欲しいとの事。状況から考えるとどうやらスタンピードの生き残りのようだ。でも、


「ウルカン領・・・ってボクはヤだよ、今のあそこはあのロジャーとかの領地なんでしょ?どうしてマイちゃん達を追い出したヤツラなんか助けなきゃならないんだよ」

「俺も同感だ、悪いが他を当たってくれないか?」


 思慮深いルーブルまでボクに同意してくれる、もうボクらはあの子達の親代わりなんだ。あの子達の怒りはボク達の怒りだ。


「お主らの気持ちはわかるが・・・こう考えてもみてくれんかのぅ、

『スタンピードで現れたモンスターというのは一体でも逃がすとその個体がボスにまで成長し、速い段階で再びスタンピードを引き起こす要因となる』

という報告が上がっておるんじゃよ、つまり」


「事はウルカン領だけに留まらない、という事か?」

「うむ・・・最悪先日のようなモンスターによるロザリスの町への侵攻、もあり得るワケじゃ」


 スタンピードで現れたモンスター達は前領主様、マイちゃんの御両親や家臣達でさえ相討ちしてしまった相手だ。また盛り返したスタンピードはロジャーの引き連れていた警備兵ぐらいじゃ食い止められないだろう。

 次にロザリスにくるヤツラは前回と同じ数とは限らない、そうなるとマイちゃんやデルト君まで・・・。


「・・・仕方ないなぁ、そう言われると断れないよ・・・行こうルーブル!」

「ああ、気は進まないが後顧の憂いを断っておくか」

「すまぬ、軍隊の出動が要請されるアースドラゴンはAランク以上の討伐対象・・・Aランクパーティーが未だに全快にならない今お主らだけが頼りじゃ・・・宜しく頼む!!」



◇◇◇



 大きな頭を下げて牙の生えた口を開けながら突進してくるアースドラゴン。ボクを噛み殺すつもりだろうか。


 アースドラゴンは翼がなく前足の小さいドラゴンだけど後足の脚力が凄まじく、人間なんかひと蹴りで潰せるほど。また尻尾も巨大でその威力は後足よりも強力だ。おまけにリザードマン以上の堅いウロコを持っているので武器が通りにくい。


 でもアンガーハンマーを持つボクには凄い脚力もデカイ尻尾も堅いウロコも関係ない、噛み殺す気なら逆にその頭を潰してやる!

 ボクはアースドラゴンに向かって走り出す。


「はぁぁぁぁあああ!アンガァァハンマー!!」

「Gya!・・・・・・fugoaaaaaaAAAA!!!」


 アースドラゴンの頭に一撃を入れようとしたボクのアンガーハンマーは、咄嗟に出してきた小さな前足でガードされてしまう。それでもかなりのダメージを与えたようだ。


 隙を見せている今がチャンスなので拳を固めて突進する。


「防がれたか・・・でもまだ終わらないよぉ!アンガーハンマー!!」


 しかしアースドラゴンは逃げようとはしない?大きな後足を上げて踏み下ろす!

 ドラゴンの足元から地面が盛り上がって・・・壁になった!?


「こ、これは?!ボクと同じバリケィド?・・・負けるかぁああああ!」


 ボクは構わずに土の壁を突き抜ける。何だ、やっぱりボクのハンマーには砕けないものはない!


「そのまま押し切ってやるっ!アンガァァハンマァァァアア!!」

「退けウィルマ!拳を撃つな!!」


  ドガァッ!!


 つっ・・・痛い、ボクの拳がドラゴンのウロコを突き破れない?!そんなバカな、コイツはどんだけカタイヤツなんだ?


「GuuuuuuuuUUU!!!」


 痛みに耐えているボクにドラゴンは巨大な尻尾を叩きつける・・・しまった間に合わな!!


 バッッシィィィィィィィィィン!!!


「くぁっ!!・・・・・・いたた、何とか無事か」


 気が付いた時には10メートルほど吹き飛ばされていた。その割にダメージは少ない。転がったボクの周りには何かの破片が落ちている?もしかして!


「間に合ったか、クトファ製スモールシールドがおじゃんだな」

「ありがとルーブル!盾でボクを守ってくれたんだね!!」


 どうやら尻尾の攻撃の瞬間に念動力で小盾を入れ込んで直撃を防いでくれたようだ。


「ウィルマの鉄拳は効いてはいたが・・・ヤツの作った壁を壊すのにエネルギーを使い切ってしまったようだな」


 そういうことか、壁を突き抜けた時点でボクのハンマーはただの拳に戻ってしまったのか。


「危険だけど思い切って懐に飛び込むしかないか・・・」

「待て、俺に策がある・・・鉄拳を作ってヤツに壁を作らせてくれ!」

「・・・分かった、じゃあ行くよ!!」


 ボクは鬼力を込めてもう一回ハンマーを作る。そしてドラゴンに向って飛び込む。


「今度こそ・・・アンガァハンマァァァァァ!!」

「Gaaaaa!!」


 ドラゴンがまたもや足踏みする、出来上がった強固な壁。ボクの横に飛び込み壁に触れるルーブル。


「・・・モルキュールトランスファ」


 バゴゴゴゴンッ!!


 その瞬間ドラゴンの作ったバリケィドは粉々になってしまう。何が起こったのか分からないドラゴンの懐に素早く入り込み、


「決めてやる・・・アンガァハンマァァァァァ!!」

「Goua??GgyaaaaaaaAAAAAAAA!」


 思いっきり入れたハンマーの威力はドラゴンに致命的なダメージを与えたようだ。


 ルーブル最強の技モルキュールトランスファ、何回か技の説明をしてもらったけどボクには何のことかさっぱりだった。でも氷や壁なんかは瞬時に壊せるスゴイ技だ!


「今だ、トドメを刺せ!」

「よし、いくよぉぉぉ!!」


「待て、それ以上の狼藉は我らアール=ウルカン警備隊が許さん!」


 ボクを止める声、アール=ウルカン警備隊?

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