ウルカン領1・ライオネットの実力
ロザリスの町からウルカン領までは速掛け馬車に揺られまくっても半日かかる。お陰でお尻が痛い。
ルーブルはこんな時にも必死になって地図に目を通している。馬車が揺れまくっているのに酔わないのかな??
やっとの事で着いたウルカン領。正しくはアール=ウルカン領って言って頭に貴族の爵位をつけないといけないそうだ。やっぱりボクには貴族社会はよく分からないや。
「はぁ、やっと着いた・・・ルーブル、どこに行けばいいの?」
地図とコンパスを見比べながらルーブルが答える。
「よし、まずはアール=ウルカンの屋敷に行こう・・・ひょっとすると領民達も集まっているかも知れない」
「さっすが!じゃあお屋敷まで行こう!!」
ボク達を乗せてくれた馬車とはここでお別れだ。広い領地だから馬車で行った方が早いけどどこにモンスターが潜んでいるか分からないから馬と御者にとっては危険だ。
途中の小高い丘にさしかかった時、ウルカン領の一帯を見渡す事が出来た。広い領地の割にはまだ未開発の場所と一度は畑となったものの放棄された場所が目立つ。
「この領地はおかしいよね?これだけ広い土地なのに畑が少ないよ」
「ああ、原因は恐らく領地に川がない事だろうな?土地があっても水がなきゃ作物は育てられない」
ボクも農村出身だから分かる。川がない畑にまで水を運んでくる事がどれだけキツい事か。故郷の狭いアルクア村でもそういう場所は大変だった。
「あっ!あそこの畑にリザードマン達がいる!!アイツら畑を荒らしているよ、早く止めに行かないと!!」
畑を荒らされている様を見ていたボクは怒りに燃える。でもそんな様子のボクにルーブルは冷たい言葉を放つ。
「待て、俺達の任務は領民の避難支援と領主家族の保護だ・・・こんな所で力を消耗させるんじゃない」
そうだった・・・いくらボク達が同じ属性の最強のパートナーと言っても相手は大軍モンスター、昨日のように他の冒険者達がいればいいけどボク達2人じゃ無駄死にになる事は間違いない。
「Syaa??SyuiiiiiiiIIIIIaaaAA!!」
突然聞こえる舌なめずりするような声・・・あっという間にボク達の目の前にはリザードマン達が現れていた!その数はぱっと見ただけでも100体はいる。こんなのがゾロゾロ出てくるのがスタンピードのようだ。
でもボクは恐怖よりも領地をムチャクチャにしているリザードマン達に怒りが湧いてくる。思わず口調まで荒くなる。
「ねぇルーブル!ボクらの任務は分かってるけど・・・冒険者は自己防衛が基本だから全部カタづけても良いよねぇぇぇ!?」
「ああ、やるなら素早くだ・・・ここなら誰もいない、俺達の力を発揮できるぞ!」
荒っぽいボクの意見に賛同してくれるルーブルの返事を聞いて闘志が湧く。
「そうこなくちゃ!いくよぉ、アンガァァハンマー!!!」
ハンマーのように縦に振り下ろされるボクの拳がリザードマン達をウロコごと叩き潰す!ボクの念属性・反発力をまとったパンチなら砕けないものはない。
念属性は場所によっては忌み嫌われる属性だから普段は地面を使って土属性とウソをついているけどここなら安心だ。ここには同じ属性のルーブルしかいない!
「Siya?syuuuUUUUUAAA!!」
ボクの攻撃力に驚くも隙をついて襲い掛かってくる3体のリザードマン。あっという間に至近距離だ・・・願ったり叶ったり!
「いくよっ!スプリング・アタァァァック!!」
一体に攻撃を加え、反発力の反動でもう片方のリザードマンの間合いへ瞬時に入り込みその一体を叩く。攻撃と同時に移動を合体させた技で一対多数戦にはもってこいだ。
残った一体を攻撃し踏み台にしてリザードマンの軍勢の中に攻め入っていく。
30体あまりを叩き潰したところで170体ほどのリザードマン達に包囲されていることに気づく。ルーブルの言う包囲陣形だけどさっきより数が増えているようだ?
オマケに包囲しているリザードマン達はこっちの攻撃力を見て考えたのかボクが動くと遠巻きにして陣形を崩さない。こういう場合は根気よくボクのスキを狙っているようで突破しにくい。やっぱり冷静にならないとダメだね。
「ウィルマ、盾を飛ばす・・・上に跳べ!」
「了解、スプリングフェザァー!!」
瞬間、ボクの身体は10メートル上空へ飛び上がる。リザードマン達はボクを見失ったようだ。
「sya?・・・syeaaaaaa!」
ボクの位置に気づいたリザードマンは下で武器を構えている。落ちたところを切り刻むつもりだろう。でも!
「ムーヴメントエリア・・・ファアムーヴメント!」
ボクの足元にルーブルの持っている小盾が現れる。ボクはその盾に足を掛けて。
「ふっ!!」
今度は横一直線に跳ぶ。その後をさっきの盾がボクを追いかけて足場となって跳ぶ。これを3回繰り返すとあっと言う間にルーブルの隣に着地。
「まったく・・・先走って前に出過ぎだぞ?」
「ゴメンゴメン、でもルーブルの編み出してくれたスプリングフェザーがあるから何時でも逃げられるよ!」
スプリングフェザー、ボクの反発力リパルジョンを基本技の全身バリアーや応用技のアンガーハンマーではなく足に発生して地面と足を反発させて高く飛ぶ技だ。旅を始めた時から何気に思いついた技らしい。
この国に来る前のゼルベの町にある水辺で練習したところ、空中感覚を掴むのが難しかったけどなんとか使えるようになった。
もちろんホントに空を飛行できるんじゃなくてただの強いジャンプ力に過ぎない。でもさっきのようにルーブルが飛ばす盾で足場を作ってくれたら色んな方向に跳ぶ事が出来る。
何より2人の合体技って感じがいい、やっぱりボク達は最高のパートナーだよ!
「過信はするなよ、スキルには限界があるからな?今度は2人で掛かるぞ!」
「OK!」
今度はボクも冷静に戦う。相手にハンマーを叩きこんではバックステップで退きのヒットアンドアウェイで攻める。ルーブルから教わった敵に包囲されない戦術だ。
ルーブルは投げナイフと20センチメートルほどの小盾を幾つか漂わせて攻撃と防御を行う。威力の小さいナイフには毒やしびれ薬が塗ってあるのでモンスターにも効果てき面だ。
以前持っていた鬼力を強化してくれるブレスレットをアークに壊されてから力を失ったと言っていたけど、頑張って修行し直して以前より広い範囲の念動力が使えるようになった。
2人がかりで対応する事30分、全部で300体余りのリザードマンを全滅させることが出来た。途中でリザードマン達はもう100体ほどの仲間を呼んできたけど、冷静になったボクとルーブルのコンビネーションには敵わなかったね。
ルーブルは念動力で使ったナイフと魔石をすばやく回収していく。
「魔石は分かるけどナイフは回収しないでまた新しいの買えばいいじゃん、何かケチくさいよ」
「何言ってる、クエスト中に武器屋なんてないだろう?補充が効かないんだから仕方ない・・・よし完了だ、屋敷に向かうぞ?」
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