第26話

 【今朝早くに、ウクライナ政府と国連からメッセージが届いた。僕達の功績をたたえて、謝礼金をくれることが正式に決まったんだ。

 

 僕はアメリカ政府と、自国の兵士を守る契約をした。僕はまだその契約金を受け取っていない。今日、将官に呼ばれて、ベースキャンプでミーティングをした。将官が言うには、契約金は僕達の任務が終了する前に、現金で発送されて支払われるということらしい】

 

 ??? そうちゃん、今もしかして、わたしと同じ疑問を抱いてる?

 

 謝礼金から契約金になっている件、だよね。

 

 いやいやいやいやいや、デタラメじゃあないでしょ。ローランド、単に言い間違えているだけだって。

 

 talkingならともかく、writingでこんなミスをするはずがない? しかも、口座振り込みじゃなくて現金で発送されるのも変?

 

 ………まあ、一理ないこともないこともないこともないけど……とりあえず、続きを読んでみようよ。

 

 【彼らの話によると、契約金は一括いっかつで僕達の代理の受取人へと送られる。でも、任務終了前に支払われるとなると困る。僕には代理の受取人がいないんだ。娘はまだ若過ぎるし、そんな大金を管理するのは難しいだろう】

 

 やっぱり『契約金』のままだね。

 

 でもまあ、せっかくわたしを頼って相談してきているんだし、ここは知恵を絞ってみるよ。

 

 〖あなたの育った孤児院のスタッフならどうですか?〗


 【孤児院を出て一人になってから、もうずいぶん経っているしね。今は誰とも連絡は取り合っていないんだ。


 銀行口座もしばらくアクセスしていないから、凍結されてる。そもそも、ここに銀行はない。テロリストに襲撃された時、銀行の物も含めて僕の荷物も全て持って行かれてしまった】


 あ、強奪されたって、テロリストにやられたのね。


 あれ? そうちゃん、また疑ってる? 

 

 自分が話を作るなら、もっと上手くやるって?


 作ってないってば! ローランドは現状の事実を言ってるの! いつも文章を書いている人とは違うんだから、多少至らない部分があるのは仕方がないよ!


 【テロリストが僕達の口座からお金を引き出すかもしれないことを懸念して、チーフは僕達の口座を凍結するように銀行に申請したんだ。だから、今回の契約金も現金で支払われることになった】


 ???………そうちゃん、もしかしてまた、わたしと同じ疑問が浮上した?


 さっき、銀行口座はしばらくアクセスしていないから凍結されているって言ってたのに、今度はチーフが銀行に申請した?


 いやいやいやいやいや、嘘じゃあないでしょ。しばらくアクセスしていないのも、チーフが申請したのも、どっちも事実なんじゃないの?


●翌朝

 

 【栄光の日はここにあります。希望はすでに与えられているのです。曇りなき心で、あなたの目標を成しげるためにはげみなさい。

 

 おはよう、my special。僕の代理人として、僕の私物と現金の入った荷物を受け取ってくれないか?】


 ? いきなり荷物を受け取る? 何だろう? 現金って言うと、謝礼金だか契約金だかが入ってる荷物だよね? 


 今朝はきれいなお花の画像をくれないし。


 今時間がないから、帰ってきてから返信するね。


●その夜

 

 はてさて、何て返信しようかなぁ?

 

 そうちゃん何? え? いい考えがある? 言う通りに返信してみろって?


 〖こんにちは、ローランド。あなたの申し出に感謝します。

 

 その報酬はあなたが命懸けの働きで得たものですし、そんな大切なお金をわたしは無駄にしたくはありません。なので、わたしが時々行く教会に寄付しようかと思います。献金として。

 

 いかがでしょう? ちなみに、その報酬はお幾らですか?〗


 こんなんでいいの? って言うかさぁ、そうちゃん、そもそもローランドがニセ医者であることを前提に考えたでしょ。


 【うん、いい考えだね、my love。それじゃあ、荷物が届いたら、その中から現金を取って、教会に寄付するということでいいかな?


 あ、それと、報酬は1500万ドルだ】


 ………あれ? そうちゃん、今、1ドル幾らだっけ? 結構円安だったよね?


 145円ぐらい? (2022年9月14日時点)


 わたし、計算苦手だけどさ、これって日本円だと億単位に……って、そうちゃん、計算しなくていいから。


 145円で計算すると、¥2,175,000,000? いや、だから、別に計算しなくて良かったのに。

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