第18話 居場所

「おはよー。今日は早いね」と、美香菜。


「うん…家にいるのが超辛いだけ。即効出て来た。つーか…喧嘩中だし、顔を見るのも嫌ってやつ?」


「そうかー」


「ねえ、美香菜ん所、しばらく泊まっていい?」

「えっ!?駄目だよ!」

「えーーっ!親友じゃん!」

「そうだけど……」




そして、その日、帰る気などなくてブラついていた。




その途中――――




「藍李」

「…尋渡…」



私は逃げようとした。


グイッ



引き止められる。



「やだっ!離してっ!」


「このままじゃどうにもならないだろ?また、心配させて、もっと仲をこじらせる気なのか?」


「…いいの!私の居場所なんて一切ないんだからっ!」


「そんなわけ……」



「あるんだよ!…お姉ちゃんは二人の異性にチヤホヤされて私なんか全然…誰も相手してくんないの!お互いの両親も好き勝手してるし私なんかいない方が良かったんだよ!!」



「藍李、そんな事、言うものじゃない!誰も必要としてくれない人間なんていない!」



「だって!尋渡はお姉ちゃんが、まだ、心残りなんでしょ!?つーか、好きだから私の事、見向きもしないんだよねっ!?」



「…藍李…」



「友矢は、お姉ちゃんと相思相愛だし!…結局…私の想いは誰にも届かないんだよ…!!…私だって…」




バッと振り解き、走り去った。




「藍李っ!!」






しばらくして、雨が降り出す。





「…藍李…アイツ…」






そして―――――




「ただいま…」


「おかえり…やだ!尋渡、ずぶ濡れ…すぐタオル持ってくる。待ってて」


「…ああ…」



どうやら兄貴が帰って来たと思われる。




少しして――――




「はい、タオル」


「…サンキュー…」


「ねえ、藍李と会わなかった?連絡あったりとか?あの子、まだ帰ってなくて」


「…藍李?…そう言えば見かけて一緒に帰るように声をかけたら、もう少ししたら帰るって…心配しなくても大丈夫だと思う。今、友達待ってるからって言っていたから」


「そう?」


「ああ」


「本当、あの子ったら反抗期なのかしら?尋渡、お風呂入る……」




兄貴は陽南が言い終える前にキスをした。


偶然にもタイミングが悪すぎだ。



「…尋…」


「…悪い…すぐ、お風呂にするから着替え頼むよ」


「…う、うん…」





その日の夜――――




パタン



「藍李」



ドキッ


玄関に入ると偶然に鉢合う友矢と私。





「お前、ずぶ濡れ…すぐタオル…」

「良いっ!!大丈夫!すぐシャワー浴びるし!」

「いや…でも…」

「優しくしないでっ!!余計なお世話だからっ!!」




私は足早に脱衣場に行った。




バタン


脱衣場のドアに寄り掛かり崩れ落ちる。





「…………………」




私はゆっくりと立ち上がり、浴室に入る。


そしてバスタオルを体にくるみ自分の部屋に行くとベッドに、そのまま横になる。




すると―――




「風邪引くぞ!」




ビクッ


振り返るとドアに寄り掛かり腕を組んで立っている友矢の姿。



ドキッ



「…な、何してんの?」



起き上がる私。



「別に」

「出てって!」



そう言う私に、お構いなく歩み寄る友矢。



「な、何?なんかしたら、その頬引っ叩く……」




グイッと腕を掴み、ベッドに倒され両手を押さえ付けられ私の上に股がった。



ドキッ



「は、離してっ!お姉ちゃんにバラ…」



言い終える前に唇をキスで塞がれた。



ドキッ



「…な、何す…お姉ちゃんいるのに何考え…」


「バラしたいならバラせば?つーか陽南も言える立場じゃねーし」


「…えっ…?」


「兄貴とキスしてんの見かけたし!」


「何言って…そんなわけ…」


「嘘じゃねーよ!タイミング…悪すぎ…」


「だったら…尚更…こんな事すんの…」




私の上に体重を掛け抱きしめるようにする。




ドキン…




「…友矢…寂しさとかを紛らわせるなら辞め…」



コンコン…


私の部屋を誰かがノックした。



ビクッ




「…藍李…いる?」



尋渡だ。



「…兄貴…?…嘘だろ…?…な…んで…だよ…」




私から降りる友矢。



「約束…してたのか?」



私は首を左右にふる。




「…………………」



私は起き上がる。



「…尋渡…?…何…?」

「大丈夫だった?」

「えっ…?」

「相当雨に濡れたんじゃないかと思って」


「あ、うん…でも…大丈夫…つーか…私の心配しなくても良いよ…」


「…でも…」


「本当に大丈夫だからっ!…ごめん…疲れたから…」


「…そうか…ごめん…」




尋渡は去り始める。



「…優しくすんの…辞めてよ…尋渡も…友矢、あんたも……」



振り返ると同時にキスされた。




「なあ…藍李の心ん中…今、誰がいんの?」



ドキン…



至近距離で、いつになく真剣な眼差しに胸がザワつく。




「そんなの…」

「兄貴?俺?」

「私は…。…そ、そんなの…友矢には関係…」

「関係あんだよ…!」



ドサッと推し倒し私の両手を押さえ股がった。



ドキン…



「…友矢…お願い…辞めて…尋渡も友矢も…私の心を掻き乱すの辞めてよ…」



泣きそうになった。




「…藍李…」



友矢は押さえていた両手を解放した。


私は体を横に向ける。



「…優しくしたり…思わせぶりな態度とったり…私の心…グチャグチャなんだから…2人とも…お姉ちゃんが好きなんでしょう?だったら…」



背後から抱きしめられる。



ドキン…




「…藍李…だったら…兄貴辞めて…俺にしろよ…」



ドキン…



「…えっ…?」



私は振り返り、向き合う私達。


視線がぶつかる。



ドキン…



「確かに陽南の事は好きだけど…今、俺の心ん中には…お前もいる……」



ドキン…



「…友矢…寂しさ紛らわせる為とか同情とか辞めて…」



両頬を優しく包み込むように触れるとキスをし、再び唇を塞ぐと優しいキスを何度も繰り返すと、私の上に乗り体重を掛けると首筋に唇が這い、バスタオルが外された。



「友矢…ちょ…ちょっと…待っ…何…」



キスをされ熱が唇を割って入ってくる。


慣れないキスに戸惑う中、唇が離れ至近距離にある顔にドキドキと胸の鼓動が早鐘のように早くなる。




「……………」



友矢は私からおり布団を乗せると自分の上の洋服を脱いだ。



ドキン…



「…友矢…?」



「俺も…最低な男なんだよ…でも…みんな…お互いの異性に心ん中、行ったり来たりしてるんだと思う…」



私は起き上がると、友矢を抱きしめる。




「…藍李…?」


「友矢…私…好きだよ…尋渡よりも…私は…多分…友矢が…でも…私も良く分かん……」




キスをされ、そのまま倒される。



唇が離れ、すぐに唇は塞がれ何度も何度もキスを繰り返す。


唇が離れると至近距離で視線がぶつかり私の胸がドキドキと加速する。


再びキスをし唇を割って熱が入ってくると吐息が洩れる。




かあぁぁぁぁ〜っ!


恥ずかしいと思う中


自分が自分じゃなくなる瞬間。



私は両手で顔を隠すも、友也に両手を外され押さえ付けられた。


見つめ合う私達。










































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