第6話 大人の事情

同居して数ヶ月が過ぎ――――



「そろそろ、二人の子供を見てみたいものねー」




尋渡さんの母親のが口を開く。




「えっ?」

「そうよ。陽南、まだ予定ないの?」

「それは…もちろんほしいけど…」

「けど…何?」


「お姉ちゃん達、夫婦だもん。やることやってんでしょう?」


「えっ!?」


「だったら、ほら1日も早く孫の顔見せてやりなよー」

「…そうね…」




数日後の夜――――




「ねえ…尋渡…子供…欲しい?」


「えっ?…それは…欲しいけど…陽南が欲しいなら協力はするけど?俺達、夫婦なんだし」


「うん…そうなんだけど…私は、正直…まだ、仕事続けたいし…でも…孫を見たいって言われると……」


「そうか…まあ、同居しているから協力はしてくれるだろうけど…」


「うん…」




「両方の親にはハッキリ言っておこうか?」

「えっ?」


「二人で話し合った結果、まだ、子供は良いって…まだ、仕事したいからって」


「尋渡…」


「きっと分かってくれる」


「うん」





そして―――――



「そうなの?じゃあ…当分は先ね」と、親達。


「そういう事」と、尋渡さん。



「え、でも、チャチャと産んで仕事に早く復帰した方が良くない?育児休暇とか取れるだろうし」


「藍李ちゃん、確かに、そうだけど緊急時は周囲に迷惑がかかるんだ」


「えっ?」


「子供が熱を出しました。とか、迎えが必要になるから社会人と学生じゃ随分と違うんだよ。会社や職場の人や周囲に迷惑かかるから」




「……………………」



「社会人は自分の決められた仕事があるから。学生は自分の問題で差が成績に差が付くだけだけど…社会人は給料という、お金が発生するから。他社や企業さんに迷惑がかかる。責任っていう文字を背負っているんだよ」



「そう…なんだ…良く分からないけど…」


「藍李ちゃんも、そのうち社会人になれば分かるよ」


「…うん…」






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