第22話 喪

 車輪が回る。

 太いタイヤと細いタイヤが交互に回っていた。

 ひゅうちゃんは暗闇を歩く。

 ずっとずっと素足で歩く。

 すると、前方に明かりがちらついた。


『父を返してください! 返して、返して!!』


 喉が枯れるほど返せと叫ぶ女性と、隅に隠れて静かに泣いている女の子。

 喪服姿の夫婦が深々と頭を下げて謝罪を繰り返している。

 後ろで何も言えずに戸惑っている男性と、女性をなだめている男性。

 沈黙したまま棺を見下ろす高齢の男性。

 外で震えている女の子。

 励ますように隣で声をかけている男の子。


「…………っ」


 表情筋を歪め、ひゅうちゃんは手で喉を押さえた。

 強く瞼を閉ざす。

 視界が霞む……――。




「っ⁉」


 はっきりしない意識のまま目を覚ます。

 田舎町の外れにある神社。

 ひゅうちゃんはむせ込む。

 ゆっくり辺りを見回すと、点々とした赤い液体が映り込んだ。

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