第20話 首
呼吸を整える。
汗だくの顔に軽くへばりつく髪を指先で直す。
か細く霞んだ瞳孔は田んぼに囲まれた田舎町近くの小さな神社を見つめる。
学校名のシールが貼られた自転車が1台、鳥居の横にあった。
「…………」
神社の短い石段に腰掛けているタケル。
猜疑心と羨望に染まった目つきが、ひゅうちゃんを睨む。
「っ」
じわり、じわりと近寄ってくる。
「お前、何か知ってんだろ」
「…………あ、し、しらな」
「お前が黙ってたせいだ!」
肩が跳ねるように驚く。
「なぁ、なんで言いたくないんだよ、なぁ?」
大きな手が迫る。
逃げようと後ろにつま先をかけたところで、襟が掴まる。
引き寄せられて、脚は前進。
背中を木に貼りつけられ、細い首に長い指先が絡む。
ひゅうちゃんの表情が歪んだ。
「誰かをかばってんだろ?」
タケルの声は吐息が多く震えと半笑いが混じる。
体中の水分が凍るほどの言葉が突き刺さった。
逃げられないひゅうちゃんの瞳に、無愛想な顔が近づく。
「今更だよな……もう、でも辛い、苦しい、ここから逃げ出したい」
渇いた笑い。
「俺も、1人になっちまう。母親が俺を怖がってる」
「ひ……ぁ」
徐々に強まっていく長い指。
「死ねよ、俺と一緒に」
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