第15話 一瞬のこと

 深夜、ラジオから2人のパーソナリティが聞き流せるほど心地いい会話をしている。

 中型トラックが田舎町近くの大きな3車線を走る。

 運転手は時々欠伸をしながら、横目で家族写真を覗く。

 男子小学生とロングヘアの女性の明るい笑顔。

 運転手は小さく笑みの息をつき、よし、と呟いた。

 ハンドルをしっかり握り締めて、前方を見た。

 黒い影が道路を横切るように動いたのが見え、呻きながら運転手はブレーキを踏む。

 重たく跳ねる音が響いた。

 呼吸を乱す。

 汗が湧き水のように滲み出て、顔は青ざめていく。

 路肩にハザードを点灯させて停車し、運転手は恐る恐る降りた。

 スマホのライトで周囲を照らす。

 白が照らす場所には赤の溜まり。

 人の指先が微かに映る。

 運転手は呼吸を忘れてしまう……――瞬間、道路を叩く音が聞こえ、すぐにスマホで照らす。

 誰もいない。

 運転手は微かな鳴き声を漏らし、道路に転がる血まみれの人を前に、膝から崩れ落ちた……――。

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