第26話

「グガガガガガ……」


「すぅ、すぅ……」


「すやあ……すやあ……」


 豪快ないびきをかます次葉先生1名と、静かに寝息を立てる江藤さんと国崎さん。


 工事現場みたいないびきをたてる人が近くに居る中でよく寝れるなという関心は置いておくとして、国崎さんの寝息はちょっとおかしくないですかね。『すやあ』なんて寝息は漫画の表現でしか聞かないんですよ。もし仮に現実でもあったとしても、しっかりと発音はしないんですよね。せいぜいSUAAとかSUHAAAA位だよ。SUYAAじゃないんだ。


 決してYは発音されないんですよ。



 これは本当にどうでもよくて。


 誰か吐いている人が居ないかの確認しないと。普通に窒息とかの危険性があるんだからさ。


 念のために俺は三人の顔元に近づき、確認することに。



 まずは一人目、次葉先生。超豪快ないびきをかまし、同時に歯ぎしりをかますというおっさんムーブを決めている。まだ30にすらなっていないのにこの先大丈夫なのだろうか。


 しかし口元を見てもよだれが垂れている以外に変な所は無いですね。


 乙女とはかけ離れた姿だが、美人であるせいでギリギリ形を保てている。


 ちなみにそんな姿は姉としては100点です。仕事の出来る美人な姉の弟だけが知っている残念な部分感があって特権階級感を味わえるので最高。


 まあ徹頭徹尾年がら年中この人は残念なんですけどね。


 しかし今はこの寝顔と姉という属性だけで評価しているんです。関係ありません。


 まあ、その属性があっても100点は揺るがないけど。


 そして二人目、国崎さん。現実にはあり得ない寝息を立てている点は気になるが、しっかりと寝ているし、大層幸せな顔をしていらっしゃる。多分夢の中では美味しい物を食べているんだろうな。


「BLおいしいれす……」


 違った。男が食べたらお腹を壊しそうな危険物を食べていたよ。


 と、寝言評価はここまでにしておいて、肝心の寝顔はどうなのかですよ。


 国崎さんは横向きに寝ている為、普段は髪で隠れている目が半分だけ見える。


 両目隠しスタイルから片目隠しスタイル。つまりメカクレへ変化を遂げたわけです。


 普段はお目にかかる事の出来ないスタイルの国崎さん。つまり神ですね。文句なしの100点ですね。俺はメカクレも大好きなんですよ。後赤紫って髪色のチョイスも良いですよね。かっこよくて。




 そして最後は江藤さん。


 うっっっ!!!!!!


 何だこの純粋な破壊力の高さは……


 聖母のようなお方の寝顔というだけでただただ素晴らしいのに、寝ているせいで全てが無防備で、色んなものが見えそうなのだ。


 江藤さんが来ている服が強いお陰で大事なものは全て隠されているのだが、それはそれで破壊力が高いんですよ。


 ほら、見えそうで見えないって一番良いだろ?世の男なら分かってくれるよな?


 ああもうダメです。これは100点どころじゃないです。110点ですね。



 え?ここは1000点とか10000点とか出して脳内でお祭り騒ぎする場面だろって?


 他の姉も素晴らしいんだからそんな差が付くわけが無いだろ!!!!


 ったく100点の事を一体何だと思っているんだ。満点の100点だぞ。




 っと、これ以上長居したら森園さんに変態だと勘違いされてしまう。俺はあくまで弟であり、紳士なんだ。業務を果たしたからさっさと外に出ねば。


 そして寝室を出た俺は再び人を駄目にする系のソファに腰を掛け、休憩をすることにした。





「ん……」


 どうやら疲れすぎたせいで眠ってしまっていたみたいだ。でも時間はそんなに……って!!!!



「起きたね」


「おはよ~」


「まだ寝ていても良かったのに」


 目の前に居たのは、先程まで寝室で見事な寝顔を披露していたお三方の姿だった。


「今って何時ですか?」


「16時くらいだよ」


「え!?!?!?!?」


 記憶が確かであれば、この3人が寝室で寝たのは11時くらい。そこから俺が寝室に嘔吐チェックをしに行ったのが30分後位だと考えると、4時間くらい寝てたってことだよな。


 泥酔した姉三人の介抱という責務を果たさず呑気に長時間睡眠をかましてしまうなんて。完全に弟失格だ……

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