第22話 ソフィアはじーっと見つめる

「いきなり申し訳ない。でも、ソフィア様がいなくなってしまうかもしれないと思ったら、つい言葉まで熱くなってしまいました……」

「いえ……。私も反論してしまって申し訳ありません」

「初めからソフィア様に私の気持ちを素直に言っていればよかったのです」

「気持ち?」

「私はあなたをずっと守っていきたい。いや、はっきり言って私が守られている気はしますけどね。だから、私はソフィア様の人生と幸せを守っていきたい」


 今までのドキドキとは比べものにならないくらい胸にグサッと刺さったような気がした。

 はっきりと気がついたのだ。

 私はアーヴァイン様のことを男として、ずっと一緒に過ごしたい相手なのだとようやく気がついた。


「でも、私は魔女で色々とご迷惑が……」

「今までソフィア様の行動や発言で迷惑だと思ったことは一度もありません!」

「さすがに嘘でしょう。私が『剣技を教えてください』って他の騎士に言って剣技を習っていたらすごく怒っていたではありませんか」

「あれは嫉妬です。私が食料の調達で食べ物を探していたとはいえ、私を選んでくれなかったことが悔しくて」

「アーヴァイン様はただでさえ忙しいから、休み時間の合間に鍛錬していた騎士にお願いしただけですよ……」

「ソフィア様が望むのならば、寝る時間を削ってでもお相手しますよ。いや、私でなければ……」


 だめだ。

 アーヴァイン様とこういう話をすると、論破されてしまう。

 しかも、どれも私の心にグサグサと刺さってきてこそばゆい。


「もしも私が国の敵とみなされたらアーヴァイン様にもご迷惑がかかるのでは? 国の騎士団長でしょ?」

「仮にそうなったら、私が国と戦います。そもそも、ソフィア様は陛下や公爵様の怪我や病気、呪いまで治したのです。そんな恩人を敵だなどと考えるわけがないでしょう」


 なにを言っても一緒にいてくれるという言葉を聞き、ようやく私の居場所が見つかったような気がしてきた。

 私はお母様と会ってみたいという気持ちは変わりない。

 そのこともアーヴァイン様は知っている。

 その上でもなお、私と一緒にいたいと言ってくれる気持ちが嬉しかったのだ。

 もし、『お母様は国の敵だ』という状況が変わってくれたらもっと嬉しい。

 アーヴァイン様の発言には、なんとなくそのような雰囲気も漂っている気がしたのだ。


「ソフィア様のことを大事にしたいと思っている以上、伝説の魔女……ソフィア様のお母様のことだってなんとかしたいと思っていますから」

「アーヴァイン様も私の心を読む魔法が使えるのです?」

「違いますよ。私の場合はソフィア様のことをずっと見てきて、なにを考えているのかがなんとなくわかるようになっただけです」


 また心にグサグサと刺さってきた。

 私も、アーヴァイン様がなにを考えているのかわかるくらい、今まで以上に彼のことを観察していこうと決めた。


 じーーーーーーーーーーっ。

 じーーーーーーーーーーっ。


「ソフィア様……。そんなに見つめられると私の抑えなければいけない感情も出てしまいそうなので……」

「大丈夫です。今度からはアーヴァイン様に剣技を習うことにしますから」

「そういうことを言ったのではありません!」


 アーヴァイン様がなにを考えているのか見抜くまでには、まだまだ時間がかかりそうだ。

 せめて王都へ帰還する前までにはある程度見抜けるように頑張ろう。


 私は、何度もなんどもアーヴァイン様の観察を続けたのだった。

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