第54話交友パーティー2
ムツキは、会場が見える部屋で紹介されるまでエレノアと待機していたのだが、シャーリーが人に囲まれているのが目に入ってしまった。
「シャーリーさんの所に行ってあげたいのでしょう? ここは私が対応しておきますから行って来て下さいませ」
エレノアは、ムツキに微笑みながらそう言った。
どうやら、ムツキの考えはお見通しらしい。
それに、ここ数日エレノアとシャーリーは一緒にいる事が多かった為、2人も仲良くなったと言う事なのだろう。
一緒に行くと言わないのは、さすが外交を学んだ王女だと言える。
「それじゃ、エレノア、頼んだよ」
「はい。でも、帰って来たら私にもご褒美を下さいね?」
可愛い婚約者なのだが、グイグイ来られるのに慣れていないムツキは、ぎこちない笑みで「わかった」と言って席を立った。
「シャーリー、やっぱりそのドレスは良く似合うね。待たせてすまない。君の綺麗な姿を早く見たくて早めにここまで来てしまったよ」
ムツキは素直に思った事を、貴族達の前なので自分が思う限りギザっぽく言った。
エレノアには、似合わないと言って笑われてしまいそうだが、シャーリーは驚いた顔をした後、頬を赤くした後、「ありがとうございます」と小声で返事をしてくれたので成功と言っていいだろう。
「急に割り込んでくるのは失礼ではないか」
ムツキがシャーリーと見つめあって2人の空気を作り始めた所で、シャーリーの向かいにいた貴族の集団の男性から苦情が入った。
「ああ、すまないね。私の贈ったドレスを着てくれているシャーリーを見たら嬉しくなってしまってね」
ムツキは自己紹介の代わりにそう返事をした。
この貴族達の親には全員顔を合わせている訳だし、シャーリーがムツキの婚約者である事はいわば公然の秘密。それも今日の発表までだが。
発表と同時に知らなかった様に全員が祝うのがいわば様式美なのである。
なので、シャーリーのドレスを贈った。
それだけでムツキが誰なのかは分かるはずである。
「あなたが、ムツキ様ですの?」
「ああ、そうだな」
貴族達の中心に居た赤髪の少女の質問にムツキは興味なさげに答えた。
実際、あまり興味がなく、なんならシャーリーを連れてこの場を離れて2人で話をしたかった。
確かに貴族達は貴族なだけあって、美男美女が揃っているが、いくら美男美女でも興味がない物はしかたがない。
友達に勧められて、見ていくうちにはまったアイドルなら推せるが、チラッと見た可愛いアイドルぐらいなら「へぇ」くらいで興味を無くしてしまうのがムツキである。
「貴様、トリエ様に失礼ではないか?」
先程苦情を言ってきた男性がまた苦言を挟んできた。
しかし、このトリエと言うのが誰か分からないが、この国の貴族ならムツキより立場が下なわけだし、しかもその息子や娘なら爵位もとっていないわけだ。正直この苦言は話にならなかった。
「まあ、いいじゃない。それでムツキ様、シャーリーは置いておいて私と2人でお話しませんこと?」
赤髪の少女がそう言いながら胸を寄せて、アピールしてくるが、ムツキはそれに興味が無かった。
いや、この少女に興味が無かっただけであるが。
「いや、すまないが私はあなたなんかよりもシャーリーとの時間を大切にしたい。 なので私達はこれで失礼する」
「な、」
驚きに言葉をなくした少女を無視してムツキはシャーリーの腰に手を回し、この場を離れていく。
「おい、キサマ、失礼ではないか! これだから平民と言うのは、やはりそのドレスといい、貧相な宝石といい、程度が知れるな!」
「そ、そうですわ。シャーリーにはその程度がお似合いですけど」
ムツキは投げられる言葉を無視してシャーリーをこの場から連れ去った。
エレノアの所までたどり着いた時は、シャーリーだけでなく、ムツキの顔も赤くなっており、エレノアに揶揄われるのだった。
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