道玄坂・社会問題・オカピ
オカピが動物園から逃げ出した。それは対してニュースに興味がなかったのにも関わらず耳に飛び込んできた。
首を短くしたキリン。ニュースサイトに載っていた写真を見たときの感想だ。その体にはシマウマみたいな縞もある。不思議な動物だなぁ、なんて呑気に考えていたのだけれど。ことは思っている以上に
なにせ逃げ出したオカピは見つかっていないのだ。体長が1.5メートルもある巨体な四足歩行が目撃情報もないとのこと。逃げ出した動物園も都会にあるらしく、危険視されていた。人を襲うことはないが、車にぶつかったりなんかしたら事故につながる。
草を食べるにしたって、手当たり次第に食べられたりなんてしたら迷惑この上ない。
目撃情報も募集している。もちろん見かけたら連絡するが、今いるのは道玄坂だ。さすがに渋谷までオカピはやってこないだろう。そう思っていたのんだけれど……。
人の流れが一部だけおかしな場所を発見して思わず足が止まった。人が常に流れるように動き続ける渋谷でオカピが立っている。それもこちらをジッと見ている。まるでオカピと自分だけが時間が止まったみたいだ。
おかしいのはオカピも自分も誰にも咎められないのだ。普通に考えて邪魔でしかない。まるで見えていないかのよう。
オカピと視線を交差させたままどれだけの時間が経過したのかも分からなくなったころに、オカピは何かを思い出したかのように駆け出した。それを追いかけるでもなくただ見送っていたら、後ろから見知らぬ人にぶつかって、舌打ちまでされた。
慌てて自分も歩き出す。そうしてからスマホを取り出し、オカピを見つけましたと連絡すべきか悩む。幻だった気もしてくる。だって誰も騒ぎもしなかったのだ。自分だけにしか見えていないなんてことがあるはずもなく。だったら幻覚を見ていたんだと考えたほうが自然だ。
連絡したって、他に目撃情報がなければおかしなやつ認定されておしまいだ。だったら連絡する必要もない。
その日はそれでおしまいだ。他に変わったことも起きなかったしオカピの話もすっかりと忘れてしまった。
でも、数日経ってもオカピは見つかりはしなかった。しかし、妙な目撃情報だけは飛び交っていった。人混みにオカピを見た。という人が増えていったのだ。でも、オカピを捕まえることは出来なかった。
目撃情報。しかも、いるはずのない場所でひとりにしか目撃されないオカピ。それは次第に社会問題へと変化していった。それも世界全体を巻き込んだ。大きなもの。
その第一発見者かもしれないと密かな自慢だけが自分の人生を支えることになった。
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