第17話 ホワイトチョコレートとアリス
翌日とても忙しいティータイムが終わり、夕方になると、アリスが一人でやってきた。よかった……j来てくれなかったらどうしようかと思っていたわ。
「リンネ様……お言葉に甘えてやってきちゃいました」
「アリスさん、ありがとうございます。それで……それはなんなのでしょうか?」
私が彼女の鞄についている淡い若草の髪の毛のぬいぐるみを指さすと、アリスは恥ずかしそうにいった。
「その……昨日優しい言葉をかけてもらえたのが嬉しくてついリンネ様人形をつくってしまったのですが……迷惑だったでしょうか?」
「いえ……可愛らしくて素敵ですね」
推しぬいだぁぁぁぁぁ!! 冷静に考えたら乙女ゲーのヒロインなのだ。オタクたちの感情が混じっていてもおかしくはないだろう。いや、おかしいわね。そこは普通ジュデッカとか攻略対象の推しぬいを作るべきでは?
それよりもだ……せっかく来てくれたのだ。彼女にチョコレートを楽しんでもらわないと……私は彼女へ食べてもらうためのチョコレートが入ったお皿をテーブルに乗せる。
「リンネ様……これはもしかして……」
「はい、この白いのホワイトチョコレートと言いまして、光魔法を使えるアリスさんを模して造らせていただきました。私達気が合うかもしれませんね」
お皿の上にはいくつものチョコレートの中に一粒だけホワイトチョコレートが混じっている。様々な果物が混じったチョコレートの中に、あえていびつになっているホワイトチョコレートのおかげでお皿が少しにぎやかになっているのだ。
「アリスさんは自分は他の人と違うと言っていましたが、私たちはみんな違うんですよ。例えば私は植物魔法が使えますし、ジュデッカは氷魔法が使えます。あそこで接客をしているノエルは魔法こそ使えませんが、家事が得意です」
「確かに、そうかもしれません……でも……」
「いきなりこんな事を言われても困りますよね。よかったらこれを食べてもらえませんか? 最初にホワイトチョコレートを、次にこのフルーツチョコレート、最後にもう一度ホワイトチョコレートを食べてもらえたら嬉しいです」
「……わかりました」
何か言いたそうなアリスさんだったが、ぐっと飲みこんで私の言う通りにホワイトチョコレートを齧る。
「すごい……ミルクの甘いくちどけと、滑らかなくちどけが素敵ですね。果物の入ったチョコレートは……フルーツの香りと共に苦みと甘みが同時にやってきます。これはレモンでしょうか? 食感と共に果実のさわやかさも味わえる。すごいです!!」
初めてホワイトチョコレートとフルーツチョコレートを食べた感動か、アリスが目を輝かせる。そして、再度ホワイトチョコレートに手をつけて、一瞬悩んだように止まった後にホワイトチョコレートを食べると目が見開かれる、
「これは……さっきよりも甘みが増している?」
「そうです。このフルーツチョコレートは甘みを抑えているんです。それがこのホワイトチョコレートがの甘みを引き立てるんです。フルーツチョコレートとホワイトチョコレートがお互いを支え合う事によってより美味しくなるんですよ」
「お互い……支え合う……」
私の言葉を彼女は真面目な顔をして反芻する。そして、意を決したように口を開いた。
「私も……誰かと支えあうことが出来るでしょうか? 人とは違う能力を持つ私でも、人とわかりあえるんでしょうか?」
「はい、もちろんです。だって、あなたは誰よりも先に私のケガに気づいてくれた優しい子じゃないですか」
「リンネ様……ありがとうございます。これ、もっといただきますね」
彼女は私にお礼を言うとチョコレートおいしそうに食べ始める。そして、帰り際に「今度は知り合いを誘ってみようと思います」と私に言った彼女は確かに笑顔だった。
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