第17話 主の目覚め
日本国 東京都千代田区永田町
内閣総理大臣公邸地下秘密シェルター
2025年3月某日 未明
森成利警視監はとっても緊張していた。
地下通路を使って、警視庁から専用の電気自動車で官邸地下のシェルター行きエレベーターの前に着いた。黒岩弥生理事官と中山新一理事官が同行していた。
あのお方に仕えて440数年になるも、まだ会う度に緊張をしていた。それだけ偉大で覇王のオーラと風格を持っていた。好奇心旺盛で新しいものが好き、冷静に判断を下すかと思えば、烈火のごとく怒り、破壊神にもなる。身内には優しく、但し働きに関して、シビアな視点を持ち、成果を上げる者、どんな人でも、どんな出身でも、どんな国籍、人種、宗教でも、必ず認める。そして信頼を裏切った者に対して一切容赦しない。
転生しても、その豪胆な性格は変わらず、この国をずっと裏で導いてた。徳川家康が明智光秀を唆したことは分かっていたが、光秀を心から信頼していたので本能寺の攻撃には驚いてた。
無念のまま亡くなってたまるかと強く祈って願い、本能寺の変中に転生し、虫の息だった森成利たち家臣を転化させ、しばらく行方をくらました。
猿の時代を密かに過ごし見守り、家康が天下を取った後、本人の前に堂々と現れ、苦しませ、操り、真の意味で天下を取った。以後家康の子孫、明治維新、近代化の裏で活躍し、この国を大きく発展させた。1931年に初めて冬眠という、主(マスター)級に必ず訪れる異変をし、以後94年の冬眠期間に入った。その間あの禿げメガネと軍部が国を乗っ取り、天皇を事実上人質にし、民衆の前に祭って操り、無意味な戦争へ突入させた。乗っ取る際、前の主(マスター)専用のシェルターを数千人の軍隊で奇襲し、護衛の弥助や数名の長寿者(エルダー)を滅ぼし、冬眠中のあの方も滅ぼす計画だったが、幸い忠誠を誓った様々な長寿者(エルダー)と人間(ウォーム)たちの働きにより、難を逃れ、戦後この東京に戻ることが出来た。
3人はエレベーターに乗り、あのお方が冬眠中の一番下の階に下りた。
冬眠部屋へ繋がる門の門扉には左に織田家の家紋と右には五七桐花紋が取り付けており、その門番に2人の長寿者(エルダー)が立っていた。
その2人は少年な姿をしていた森長隆と森長氏、森成利警視監の弟たちであり、長寿者(エルダー)だった。
「兄者、お久しぶりです。」
と2人の門番が同時に挨拶した。
「ご無沙汰しております。弟者たちよ」
と森成利が答えた。
「弥生さんに新一君かな?」
右の門番の森長隆が声をかけた。
「はい。お久しぶりです、森長隆様。」
と弥生が挨拶した。
「ご無沙汰しております、右の門番様。」
と中山が挨拶した。
「まさかだと思うけどお館様を起こしに来たのか?」
と左の門番の森長氏が質問した。
「はい、長氏。一大事があった。この国が危ない。」
と森成利が答えた。
「実は最近お館様が目覚める気配を何となく感じている。」
右の門番が話した。
「ならば通してくれ、弟者たち、お館様を起こします。」
と森成利は2人に向けて言った。
門番たちが門を開け、3人を中へ通した。
弱い点灯で照らされていた広い通路を歩き、あのお方が冬眠している部屋の扉の前に着いた。
頑丈な扉の上部の真ん中辺りが開いて顔認証システムが静かに起動した。
「森成利警視監と確認。」
と機械的な女性の声が言い、扉が開いた。
暗く大きな部屋に3人が入った。その部屋の真ん中に大きな土で出来た床の上に裸のままで冬眠中のあのお方が居た。同時に3人の膝は床についた。
「お館様、森成利です。お願いです、起きてください。」
と森成利が緊張しながら言った。
土の上で横たわっていたあのお方の体が少し震え出した。背伸びし、あくびをしながら、座った。まだ目を開けてなかったが、一気にオーラが解放された。
3人が覇王オーラの威圧に耐え、静かにお館様の目覚めを待った。
冬眠から目覚めたばっかりのお館様は長く伸びた黒い髪の毛、黒い髭も生やしていた。文献での描写より、身長は高く、オリンピック選手以上に筋肉質な体をしていた。顔は凛々しく、現代の日本ならば並の俳優より、男前だった。
「成利か。」
と声(テレパス)ではなく、威厳のある本当の声が響いた。
「お館様、申し訳ございません、一大事です。新勢力が我が国に侵入し、乗っ取りを模索中である。」
と森成利があのお方に報告した。
「また世界が戦争に巻き込まれたか?、成利?」
とあのお方が聞いてきた。
「世界はまた戦争に巻き込まれてないが、この国は名誉と権力の亡者どもに荒らされ、再び戦争の引き金を引くことになる。」
と森成利が更に伝えた。
「お館様は大戦のことがご存知だったでしょうか?」
と森成利はあのお方に聞いた。
「冬眠していたが、意識があったわ、悲しみ、死、忠誠のため命を落とした家臣ら、友らの声を全て聞いたわ。冬眠と言う呪いを解くことが出来ず、そなたたちたち、我が家臣、我が友、我が子らのことをずっと感じていた。」
とあのお方が感情の籠った力強い地声で言った。
「今の状況はご存知でしょうか。」
と森成利が再び聞いた。
「何となくだ、成利よ、悪意に満ちた薄汚い恐ろしいオーラを感じた。」
とあのお方が話した。
「南米大陸の大国の元大統領は転生し、新たな系統の開祖(ファウンダー)となり、しばらく消えたのだが、実はその下郎が戦後の元首相の手引きで入国した。」
と黒岩弥生が報告した。
「弥生か、我が姪よ。久方ぶりだ、弥助のことはまことに残念だった。」
とあのお方は彼女に優しく声をかけた。
「我が主(マスター)の力が必要です。」
と中山新一が話した。
「おお、証の子よ、我が血筋と高潔なルスヴン卿の同盟の結晶。」
とあのお方が声をかけた。
「お館様、我が主(マスター)、第一戦であり最終決戦でもある戦いが近日中に始まる。」
と森成利が話した。
「ならば急がねばならんな、成利よ。そして先ずは94年ぶりの腹ごしらえをする。」
とあのお方が真剣な声で話した。
「お館様、是非これを試していただきたい。」
と森成利が手に持ってたリモコンのボタンを押しながら、紹介した。
右側にあった扉から男女数10人の人間(ウォーム)たちが入って来た。全員志願者だった。
「この者たちは源平合戦の時代より敵味方関係なく歴史に名前を刻んだ武将たちの血筋である、お館様のため、血を差し出し、転化を望み、命をかける志願者たちです。」
と森成利は説明した。
「でかしたぞ、成利よ、皆の衆、こちらに寄れ、我の新たな家臣たちよ。」
とあのお方は長い4つの牙を出しながら言った。
あのお方の腹ごしらえが終わった後、その場に居た志願者全員無事に転化し、主(マスター)の命令を待っていた。
「我が子らよ、転化したばかりのお前たちも腹ごしらえしろ、この日の本の未来を左右する戦が待っている。」
と力強い地声であのお方が全員に言った。
「仰せの通り、我が主(マスター)。」
と全員が一斉に答えた。
同じく右側の扉より自動運転の数台の台車が入って来た。様々な血液型の血袋が積んでおり、転化した新人者(ニューボーン)たちはそこから各自で取っていった。
新人者(ニューボーン)の腹ごしらえ中に森成利、黒岩弥生と中山新一が今後の作戦について、あのお方に説明をしていた。
「成利よ、近日中と言わず、今から出陣の準備だ。」
とあのお方が森成利に命じた。
「はい、仰せの通り、お館様。」
と森成利が喜々とした声で答えた。
「この織田上総介平信長がいる限り、日本には2度と無意味な戦争に参加させん、外国の勢力による乗っ取りもさせん。」
とあのお方、日本系統の主(マスター)、織田信長が響く大きな声で皆に伝えた。
「我々全員はお館様に付いて行きます!!」
と黒岩弥生、新生織田軍切り込み隊長がたくましく叫んだ。
「いざ出陣だ!!」
と織田信長が声を上げて皆を引いて部屋を後にした。
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