第19話 第二王子との婚約

 ただ待つだけのもどかしい時間を過ごした。


 お兄様が森に入って行って、無事を祈ることしかできない。


 不安を膨らませた私に、さらに追い打ちをかける出来事があった。


「ユーリア……話がある……ちょっと来なさい」


 険しい顔をされたお父様が私を直接呼びに来たので、何事かと思った。


 そのまま執務室に連れて行かれて、お父様に見せられたものは、王家からの書状だった。


「お前に、第二王子との婚約を王家が打診してきた」


「えっ!?どうして!?」


「どの面さげて、どれだけユーリアをバカにすれば気がすむんだ!!」


 お父様は顔を真っ赤にし、唇をワナワナと震わせて怒りを露わにしている。


「王子殿下は病気が治って、学院に入学されたばかりですよね?」


「王家は、まだうちの資産を諦めてはいないようだ。第二王子は、ユーリアよりも年下だ。おまけに、最近まで部屋に閉じこもって、公の場に出たことがない。彼の境遇には同情するが、厄介払いがしたいだけだ!!それにユーリアと我が家を巻き込んで。私は、独立を宣言してでも、断固拒否する!!」


「お父様、落ち着いてください」


 もちろん断れるなら断りたいことだけど、こんな感情的に王家に楯突いたら、それこそ付け入る隙を与えてしまう。


「神殿でも認められた王家有責の婚約解消だったのです。これ以上の暴挙を、王家ができるはずがありません」


 お父様を宥めるために言ったことだったけど、私自身が不安でいっぱいだった。


「わかった。少し落ち着こう。この件は私が全力で対処する。お前は心配しなくていいから、もう部屋に戻っていい」


「はい。失礼します」


 足取り重く、モヤモヤしたまま部屋に戻って過ごしていると、驚くことは続くもので、予定よりも早くお兄様達が帰還されて、慌てて出迎えた。


 下調べのようなものだったので、帰還は早かったのかと思っていると、様子が違った。


「どなたか、怪我をされたのですか?」


 調査隊の空気は沈鬱で、お兄様達は疲労困憊だった。


「いや、突然の雨と雷にやられて……それから飲料水がダメになった。詳しい事は後で親父にも報告するが、森に入った途端に剣と水筒が腐食しだして、使い物にならなくなった。何か良くないものが雨の中に含まれているか、あの森自体にガスのようなものが充満しているのかもしれない」


 そう話すお兄様の隣にいるキャルム様は、悔しげな表情をされていた。


 ご無事であるのが何よりだけど、何の成果も得られなければ、帝国に帰って叱責を受けるのかもしれない。


 メイド達と一緒にタオルを配り、キャルム様の汚れを落とす作業を手伝っていたけど、何も声をかけることができないでいた。


 あの森は呪われている。


 入るものを拒んでいる。


 そう思ってしまうのは、ごく自然のことだった。



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