第37話 私が反省するのですか?
屋敷に帰ると、すぐに映像を確認した。怖い顔で、私を何度も殴るネイサン様の姿が、バッチリ映っている。よし!これは使えるわ。
早速アンネ様に通信を入れる。
“ジェシカ様、どうされました…て、そのお怪我はどうしたのですか?”
私の怪我を見て、かなり驚いているアンネ様。隣にいたネリソン殿下も固まっている。
「ちょっとネイサン様に口答えしたら、この有様ですわ。でも、バッチリ映像は撮れましたわよ。ぜひアンネ様もネリソン殿下と一緒にご確認くださいませ。それから、ネイサン様はメイドたちにも暴言や暴力を行っていた様です。本当に、どうしようもない人ですね…」
“ジェシカ様、わざとネイサン殿下を怒らせたのですか?それにしても、女性を殴るなんて…”
“異母兄上がどうしようもない人だとは思っていましたが、まさかここまで酷いとは…ジェシカ嬢、君は令嬢です。どうかこれ以上、異母兄上を刺激しないようにしてください。あなたが体を張る必要は無いのです。どうか、自分を大切にして下さい”
ネリソン殿下は私の心配までしてくれるのね。優しいお方…彼の様な方が国王になったら、きっと民たちに寄り添い、よりこの国を発展させてくれることだろう。
「アンネ様、ネリソン殿下、ご心配をおかけしてごめんなさい。でも、私は決してわざとネイサン様を怒らせたわけではありませんわ。ぜひ映像をご確認ください」
その時だった。メイドがやって来たのだ。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
「わかったわ、すぐに行くわね」
“それじゃあアンネ様、ネリソン殿下、失礼いたしますわ“
小声で2人に挨拶をして、通信を切る。そして、急いでお父様の元へと向かった。
「ジェシカ、王太子殿下を怒らせたらしいな。それで、殿下に殴られたそうじゃないか。さっき陛下と殿下、それぞれから連絡があった」
どうやらお父様のところに連絡がいった様だ。
「陛下からは謝罪が、殿下からは文句が来た。あの男、私には“僕の婚約者に暴力を振るうな”と言ったくせに、自分は暴力を振るうなんて。とにかく、大した怪我ではない様だな。殿下からはくれぐれも自分がやったとは口外しないようにとの事だ。いいな、ジェシカ、殿下に殴られた事は誰にも言うなよ。全くお前は、殿下を怒らせるなんて。いいか、男は立てておけばいいんだ。わかったな」
何が立てておけばいいんだ!よ。本当にネイサン様といい、お父様といい、時代錯誤もいいところだわ。日本だったら、傷害罪で逮捕されているところよ。
ん?傷害罪か…
この国にはそういった罪はないのかしら?
明日にでも図書館で調べてみよう。
翌日、何食わぬ顔でネイサン様が迎えに来た。さらに
「ジェシカ、少しは反省してくれたかい?今回は許してあげるけれど、次口答えしたら、ただじゃ置かないからね。それから、その怪我は転んだことにしてほしい。さすがに僕が殴ったなんて言ったら、体裁が悪いだろう」
と、言っていた。どうやら私が悪い事になっているらしい。本当ならここで文句を言ってやりたいところだが、ぐっと堪えた。
「昨日は申し訳ございませんでした。以後気を付けます」
「分かってくれたらいいんだよ。その傷、目立つね。早く治してね」
そう言って笑っていた。誰のせいで顔に傷が付いていると思っているんだ。本当に、DV野郎が!
そう叫びたいのを必死に堪えた。私、よくこんなクズ男に付きあっているわね。本当に自分を褒めてやりたいわ。前世の私だったら、間違いなく飛び蹴りをくらわしているところだろう。
きっと、以前までのジェシカが、まだ心の中に残っているのだろう。彼女は、ことなかれ主義だったものね…ある意味、私たちの性格が中和され、今いい感じになっているのかもしれない。
それでももちろん、この男を許す事なんてできない。早速図書館で色々と調べたのだが、法律について詳しく書いてあるものは見当たらなかった。
やっぱりこの国では、暴力は認められているのかしら…
そう思ったのだが、その日私を心配してくれたアンネ様からの通信で、やはり暴力はこの国でも認められていないという事が分かった。
ただ、相手に殴られたという証拠を提示しなければいけないらしく、中々罪には問われないらしい。今回の場合はばっちり映像に残っている為、この映像を元にネイサン様を罪に問う事は出来るらしい。
といっても、大した罪にはならないらしいが、それでもネイサン様のイメージダウンには絶大な効果を持つと言っていた。よし、それならどんどん証拠を集めようと思ったのだが…
“ジェシカ様、あなた様は十分すぎるほど証拠を提示してくださいました。どうか、これ以上ご自分を傷つけるようなことはお控えください。約束ですよ!”
と、アンネ様にきつく言われたので、もうネイサン様に反抗するようなことは控える事にした。やっぱり殴られるのは痛いしね…
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