連れ子

連喜

第1話 結婚

 俺は今53歳。コロナ寡が始まるちょっと前から、婚活サイトを使って婚活をしていた。結婚したい理由は何だったかと言うと、老後一人では生きていけないと思ったからだ。別に介護してほしいと言うわけじゃないけど、入院したりした時に、着替えを持って来てくれたり、保証人になってくれる人がいないと困る。動機が不純だと思うだろうけど、現実的な問題だった。長年独身だったから、一人でも全然寂しくはない。


 結婚相手の希望は30代までにした。自分がおじさんなのに気持ち悪いと思われるだろうけど、あと何年かで更年期という人でない方がよかった。更年期になると女性はうつ状態になったり、体調を崩しがちだと聞いていたから、新婚早々、奥さんが家事ができないというのだと困る。せめて何年かは俺も楽をしたいし、おいしい家庭料理を食べたかった。


 俺の条件としては、短大卒以上の学歴。正社員の仕事をしている人で、実家が地方でない人だった。まあ、普通のOLさんみたいなのが希望だった。バツ一や子連れも可だった。俺はもう50歳だったから、今から子どもを作っても、子どもが小学生のうちに定年を迎えてしまう。さらに、大学生の時に70歳近い年齢だと、病気のせいで子どもに迷惑をかけるかもしれない。今、俺と同年代で小さな子どもがいる人には申し訳ないが、今までの人生経験からそう思ったのだ。


 俺は年収1,000万以上あったから、50歳でも割と返信をもらえた。バツ一やシンママ可としてたので、あちらから申し込みが来ることも多かった。俺は、その中で、見た目がきれいで、性格が優しい感じの人だけを選び、20人くらいに会った。電話で話してみて、きつい感じの人や会話がかみ合わない人とは、そのままフェードアウトした。取り敢えず、同時進行で会っていたが、その中の誰かとは結婚するつもりでいた。


 はっきり言って、見た目がきれいで、家事をやってくれて、結婚してからも仕事を続けられる人がよかった。いいなと思う人でも、子どもは2人欲しいとか結婚生活に夢を抱いている人は、早々にサヨナラした。俺よりふさわしい人がいるからだ。


 その中で、一番惹かれたのは、旦那さんと死別して男の子を一人で育てているシングルマザーの人だった。あちらから申し込んで来たが、清楚な美人だった。年齢は38歳で、勤務先は大企業。出身は有名女子大。大学からだから、資産家の令嬢というわけではないんだろう。26歳で結婚したけど、旦那さんが2年後くらいに癌で早世してしまったということだった。小学生の男の子がいるが、実家のすぐ近くに引越して、祖父母に世話をしてもらっていた。10歳だから4年生だ。


 実家は埼玉の川口。俺の家は都内で持ち家だった。子どものことを考えると川口に住んだ方がいいが、俺の家は3LDKだったから、義父母にはいつ来て泊ってもいいし、合い鍵も渡すということにした。


 優斗に初めて会ったのは祖父母の家だった。俺は結婚の挨拶をしに行ったが、子どもには会ったことがなかった。どんな変な子どもでも結婚は決めていたからだった。それに、入籍まではいつでも婚約破棄できると思っていた。彼女も条件的に不利だから、独身の女性のように婚約不履行で訴えて来るような感じではなかった。


 優斗はおじいちゃんの陰に隠れていたが、見た目の可愛らしい子どもだった。色白で、目鼻立ちが整っていて、まつげが長い。品のある顔だ。俺がいる間、ずっとうつむいていた。彼は世話をしてくれている祖父母には、なついているようだった。祖父母と叔母家族、母だけの小さな世界。割と大家族だし、暖かい家庭に見えた。


 連れ子が男だったのも迷わなかった理由の一つだった。女の子だったら、絶対に異性として見てしまうと思うから、できれば避けたかったのだ。

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