JK四人が気兼ねなく過ごす、はーとふるな毎日のしょーとこんと♪
ぴこたんすたー
第1章 それでは四人集まって、にこやかに行きまショウ
第1話 落とし物、流れ者、素敵な食べ物(ケセラ視点)
麗らかな春の陽気に、窓を開けた教室へと流れてくる心地よいそよ風。
二時限目であり、白髪頭であるエンガワ社会科教師による世界史の授業を耳にしながら、ケセラは懸命にノートをとっていた。
──ウチの名前は今年で高校三年になるケセラ。
右隣の席にいるのはミクルといい、ウチの古くからの友達よ。
「ケセラさん、今、何か言いましたか?」
「ミクル、ウチの心を勝手に読まんでくれん?」
「もうどうせならケセラさんの心を電子書籍にして読みたい気分です。ケセラさんの赤裸々な過去が満載と‼」
「そんなん誰が読むんや。マニアックな趣向のおっさんかい!」
「いえ、例えおじさんが作ったとしても、シュークリームなら大好きなんですけどね」
この天然が入ったミクルという子はこんなバリバリな茶髪にピアスも着けたギャル風なウチに毎回気さくに話しかけてくる。
いや、与作や気さくはいいんやけど、今が授業中じゃなければ、もっと嬉しいんやけど……。
──ミクルが自身のノートに再び視線を移したその時、ウチの足元に茶色いサイコロみたいなのが転がってきた。
何やろ、ちょい変わった色やけど、形からして消しゴムやろうか?
筆記中に無いと困るナンバースリーに入るアイテムだし、ここは拾ってあげるか。
ケセラは先生が黒板に向いた瞬間の隙をついて床の落とし物を拾う。
「何かやたらと匂うな、コレ……」
それに触るとベトベトやし……何を消したらこんな質感になるんかいな。
転がった先のすぐ前の席には赤毛の女の子が教科書を机に立てて、机に置いてある何かに夢中である。
なるほど。
授業そっちのけで夢中で携帯ゲームをしていたら、この消しゴムを落としたというオチか。
彼女、確か新学期に転校してきたリンカだっけ?
ろくに勉強もせず、あんな遊んでる感じなら、今年は受験生を目指してなく、就職活動派かいな?
「ねえ、リンカだっけ。落とし物だよ?」
またもや黒板にチョークを走らせる先生の油断を狙い、ケセラは前のリンカの肩をつつき、小声で話しかける。
「まあ、何てことなの。リンカの貴重な食料が!?」
「はっ、今なんて?」
「ああ、リンカのママが端正込めて作ったサイコロステーキをこぼすなんて……バレたら明日から首なし姿で登校だわ」
「うへっ、肉の固まりなん、コレ!?」
ケセラは大慌てで食べられる予定だったサイコロステーキを後ろにあるゴミ箱へと素敵な流れで投げ捨てる。
ストライク、スリーアウチ(イタい)チェンジ!
「今度生まれ変わってくる時は立派な消しゴムになってくるんやで」
それにしてもあのリンカが授業中に早弁をしていたとは……。
ケセラは本能でああはなるまいと思いながら、机のノートに視線を戻し、先生の授業を心して聞く。
すると、またもや転がってきたというか、机の上に飛び込んできた落とし物。
細長い外観からして鉛筆のように見えたが、アレはビニールの包装紙に包まれていて……。
「これ、サラミやん」
投げてきた後ろの方向には黒髪の大和撫子、ジーラ。
彼女もリンカと同じ転校生だ。
そのジーラに視線を送るが、相手は知らないフリで授業のノートをとっている。
あれ?
ジーラが投げてきたんじゃないんか……?
まあ、今は関わっている暇はない。
ケセラは見なかったことにして、机の引き出しにサラミを入れ、ノートに向き直り、授業に集中する。
その時、ケセラは何かの動きを感じた。
「メシ取ったり‼」
猿と化したケセラは両手で真上を飛ぶアイテムをぶんどった。
掴んだのはさっきと同じドライソーセージのサラミ。
背後にはジーラが無表情のままで投球フォームの形で片腕を上げていた。
やっぱり、これを投げていた犯人はジーラだったか。
一体何の目的でと、投げた先を先読みすると両手を天井に上げ、このサラミを受け取ろうとしていたリンカの姿があった……。
「あー、貴方、リンカのオヤツを取らないでよね。机の中に隠したのも出してよ」
「あんたら、授業中に食べ物食うなよな!」
リンカの何気ない一言にウチの中の何かが切れた。
「ほーう、ワシの授業をそっちのけで食べ物に夢中じゃとは……」
ウチが突如発した大声にクラス中が私の方を向く。
「エンガワセンセー、コレは違うの……」
「ケセラ君、この学校は弁当以外の食べ物の持ち込みは禁止じゃぞ」
「あの、これはウチのやなくて……」
「それにまだ二時限目じゃ。そんなにも腹を空かすのなら、きちんと朝ご飯は食べてくるんじゃな」
「ええー!?」
ウチはその場でひっくりこけ、クラス中が笑いに包まれた。
だから何でこうなるん?
落とす物に救いの先生ありなん?
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