劉毅3 隠退請願、しかし
「お国において教化をなすものはその仁・孝を尽くすものであるべき、と言うのが道理。こうした道理を天に訴えられるのは、親の喪失を十全に弔うことができたもののみにございましょう。しかるに臣は凡庸であり、こうした孝心もまともに果たせず、さりとて軍職を辞することに踏ん切りもつかず、結果として親の葬儀を十全に果たし切れておりませぬ。
無論此度の国難は天をも穢さんばかりの大事。されど忠義を果たすための日々にも、やはり親を弔えぬ引け目がついて回っておりました。去る春に陛下の還御が果たされるも、桓玄の配下はいまだ滅びず、またそうした配下を滅ぼし得たところで、各地で乱の余塵が密かにくすぶり続けております。その武威はなかなか各地に届ききれず、いたずらに文武を疲弊させてしまいました。敢えてその苦しみを申し上げずにはおりませんでしたが、振り返るだに悲しみや自らの無力への憤りを隠しきれませぬ。
いま、陛下の威厳にて近隣は粛然とし、国内もまた清められました。対して臣不孝の毒にまみれております。どうか陛下、改めて申し上げます。どうか、お聞き遂げ下さいますよう。不孝の毒のみならず、いまこの身には決して軽からぬ病を得ております。様々な病状がこの身を蝕み、いまなどは横になっていても人並みの思考すらままならぬ有様。臣はもとより生きることに甘んずるつもりもございませぬ。伝えるべきことを伝えたならばそのまま死すとて構わぬ所存にございます。どうかこの残骸に余生を賜り、我が家の墳墓にて朽ちるをお許しくださいませ。この陛下の御代にて、幾ばくなりとも臣が忠孝の道を忘れずにあったのだ、とお認めいただきたいのです」
しかしこの申し出は却下された。それどころか
以前、桓玄が
間もなくして
初,毅丁憂在家,及義旗初興,遂墨絰從事。至是,軍役漸寧,上表乞還京口,以終喪禮,曰:「弘道為國者,理盡於仁孝。訴窮歸天者,莫甚於喪親。但臣凡庸,本無感概,不能隕越,故其宜耳。往年國難滔天,故志竭愚忠,靦然苟存。去春鸞駕回軫,而狂狡未滅,雖奸凶時梟,餘燼竄伏,威懷寡方,文武勞弊,微情未申,顧景悲憤。今皇威遐肅,海內清蕩,臣窮毒艱穢,亦已具於聖聽。兼羸患滋甚,眾疾互動,如今寢頓無復人理。臣之情也,本不甘生;語其事也,亦可以沒。乞賜餘骸,終其丘墳,庶幾忠孝之道獲宥於聖世。」不許。詔以毅為都督豫州揚州之淮南曆陽廬江安豐堂邑五郡諸軍事、豫州刺史,持節、將軍、常侍如故,本府文武悉令西屬。以匡復功,封南平郡開國公,兼都督宣城軍事,給鼓吹一部。梁州刺史劉稚反,毅遣將討擒之。初,桓玄于南州起齋,悉畫盤龍於其上,號為盤龍齋。毅小字盤龍,至是,遂居之。俄進拜衛將軍、開府儀同三司。
盤龍齋の南州は、魏晋南北ブログ様よりのご指摘で姑孰なのだそうです。
『太平御覽』百八十五 晉徵祥說
玄鎮姑熟屋壁,先晝作黃盤龍。號盤龍齋。俄而玄敗,將軍劉毅居之。毅小名盤龍。
はえ~、御覧調べんのめんどくさい……コーチューさんもちゃんと拾ったげてよぉ……ってこれ、桓玄伝のほうに入ってるのかな。
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