第79話 猫目線(20)

 思い出には足りない。

 さらう波があつめる砂のようだから。

 黒猫が肉球を押し込み、ぐっと爪を4つ立てる。そして、前にその力をうつし5つ爪を立てる。

 じたばたの途中だったから、右側は浮いていて左側の手足が地面にぐっ、ぐっとキズをつけた。

 9つの爪痕はすぅーっと流れて、星座から星座へ目を遊ばせる時の……流れる涙の速度に似た余韻を感じさせる。


 にゃにゃ。

 にゃーにゃ。


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