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「ぎゃっ!」
ひょろりが顔を覆ってうずくまった。
弾みで拳銃が手から落ちる。反射的にそれを拾い上げて構える。
「許せないっ!」
え? ユリちゃんっ⁉︎
「謝って! くじらさんに謝ってよ!」
ユリちゃんが必死に、手に掴んだ砂をひょろりに投げつけていた。すっごいデジャブだけど、
「くじらさんを悪くゆうなんて、許さないんだからぁ! あっちにいけ! あっちにいけ!」
ゴッ
鈍い音がしてひょろりがつっぷす。
ちょっと待っていまユリちゃんなにを投げた?
丸っこいのに一発確実に撃ち込んでから、ユリちゃんの手を掴む。
「許せない! 許せない! 謝って!」
ユリちゃん! もういい、もういいから!
ユリちゃんを両腕に抱き込んで動きを封じる。
遠くから、みうちゃんが呼んでくれたらしいパトカーのサイレンが聞こえてくる。
「だって、」
ユリちゃんが、わかってくれてるなら、それで、オレは、
「だって…」
あやすように背中をなでる。ずず、と、鼻をすする音がする。やっと興奮が冷めてきたようだ。
あぁ、ダメだ…
「許せないもん…」
ユリちゃんがオレの胸に顔を埋めて泣く。
あぁ…ダメだ…、これは…
この子を…激しく優しくて…ついでに手ぐせの悪いこの女の子を…ほかのだれかになんて、とうてい、任せることはできない…
『ユリちゃんには敵わないよ』
朧月のしたり顔があたまをチラつく。ちょっと悔しいが、
「ユリちゃん、」
「はい、」
「ユリちゃんのハートを、オレにください」
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