第6話 初のLHR◎

「それではLHRを始めます!」


 その言葉と同時に僕らの初のLHRが幕を開けた。

 先生がぺちゃくちゃ前でなんか喋っている時に光が後ろを向いて来た。顔の表情から(どうしよう?)と、でも思っているようだった。


「どうした? 光」


「いや、なんと言うか、保険関係書類全部家に忘れた」


「は!? お前何やってんの!!」


 僕は思わず笑ってしまった。しかもお前呼びしてしまっていることに僕は気づいていないのであった。

 そのことに気づいた仮先生こと由美先生が

 


「こら! 北村とえっとー、この列の一番前だから大倉! 静かに私の話聞いとけ!」


 由美先生が少し口調を荒げて言う。


「「すいません」」


 2人揃って謝罪する。今日は発狂から何からで何かしら、やらかしてばかりな気がする。

 ここで僕は1つ疑問ができた。(なぜ先生は僕の名前はしっかり覚えてたのだろか…。あ、僕、思いっきり体育館で叫んだんだった。そりゃ僕の印象深いよね……)と、自己完結する。

 本当の所は、由美先生が北村、つまり僕の名前を覚えていたのは、もちろん天野さんのサプライズする相手だからだ。そのため体育館で叫んだからと言うわけではないのだが。


「はい。よろしい。それでは保険関係の書類集めます!」


 ここでとうとう回収になった。光は絶望でもしているのだろうか。ずっと下を向いている。


「光ー、」


 返事がなかった。


「光!!」


 よく見ると頭をカクンカクンと動かしていた。そう、光は寝ているのだ。


 (いや! 学校初日から寝るバカどこにいる!? それにあれでしょ? 保険関係書類持って来てないんでしょ?? 尚更ダメじゃないの!?)


 僕は体を揺らす。そしてなんとか光を現実に引き戻すことができた。


「光! 保険書類のこと言いにいかないとダメだよ!」


「おう、わりいわりい、恩にきるぜ! 悠」


 そんな会話が繰り広げられた後、光は手を挙げて言う。


「平野先生! 保険関係書類全部忘れました!」


 光が宣言すると、このことにクラスに軽い笑いが起きる。

 そして、


「このばかタレ! 絶対忘れちゃダメでしょ! それ! さっきもおしゃべりしてたし! 本当の私なら許さない所なんですけど、まあ、明日ちゃんと持って来たら許してあげます」


 普通に友達同士がするようなノリの後、先生の謎名優しさにより、なぜか許されたようだ。


「はい! ありがとうございます!」


 光がそう言って座る。


「他に忘れた人居ませんか?」


 先生の呼びかけに誰も反応することはなかった。

 つまり、忘れたのは光ただ一人だけだった。


「はい! えっとー、大倉君以外は優秀!」


 光はかくりと落ち込む。

 自分以外持ってきているのだから、やはり恥ずかしいのだろうか。


「まあ、この件はどうしようとないからさておき、次は自己紹介を行います! 時間もそんなにないので皆さんの名前、趣味、みんなへの一言だけをお願いします! 天野さんから順番に出席番号順で行います!」


 と言うことで天野さんの自己紹介が始まった。


「どうも! みんな! 初めまして! 天野 楓です! 主席です! 趣味は、小説を読むことや、ゲームをすることですかね! 女の子としては意外でしょうが、まあそんな感じです! みなさん気軽に話しかけてくれると嬉しいです! よろしくねっ!」


 最後にみんなに向けてウィンクをしてクラス全員が同時にこう思った。


((((かわいい!!))))


 と。盛大な拍手が鳴り響き次の人へと移ってゆく。


 それから順調に進んでいき、次は光の番となった。


「はい! ちわ! 大倉 光だぜ! 趣味は野球! 一筋だぜ! 野球部入る予定だ! 誰でも気軽に喋りかけてくれ! ゲームとかも結構やってるからな! まあそんな感じだ! これから1年間よろしく頼む!」


 そんな感じの挨拶をし、大きな拍手が起こる。

 そして次は僕の番。こう言うことは苦手なのですぐに終わらせてしまおう。


「………はい。どうも皆さん、こんにちは。北村 悠と申します。趣味はゲーム、漫画、アニメみたいな感じですね。皆さんよろしくお願いします」


 あきらか二人より小さな拍手が起こる。

 いざ前で発表するとなると、とても緊張した。

 そのため、二人とは違い、よどよどしいあいさつになってしまった。

 それから、光は優しく慰めてくれたのだった。


 そして、もう1人明るい人がいた。それは、森下 澪もりした みおさんである。

 森下さんの挨拶は、


「どうも! 私は森下 澪と言います! 中学の時に吹奏楽部してたので、続けていきたいなーって思ってます! 天野さんとかも言ってましたけど、彼女と一緒でゲームしたり、小説読んだりします! 良かったら仲良くしてね! これからよろしくお願いします!」


 森下さんは早速天野さんにアピールしており、天野さんも、


「あとで喋りかけてみよー!」


 と、呟いていた。


 そしてクラス全員の自己紹介が終わりを迎えた。


「はい! 皆さんお疲れ様でした! では今日はこれで終わりなので、気をつけて帰ってくださいね! 来週の月曜日には課題テストがあるので週末はしっかりと勉強してから来てくださいね!」


 教室が静まりかえる。

 入試終わってからそんなに経っていないので、みんな勉強したくないのだろう。


「あれ?」


 先生が戸惑っている。

 先生は「はーい!」と返事されることを願っていたのだろう。


「まあ、終わります!」


 そうしてLHRの終わりを迎えた。


 それからすぐに、


「なーなー! 悠! 連絡先交換しようぜ!」


 光はそんなことを言ってくる。

 なんや感やでもう、打ち解けたと言っても過言ではないだろう。


「うん!」


 そうして初めて、高校の友達の名前がメッセージアプリに登録される。


「ありがとな! じゃあ、また月曜日にな!」


 そう言って光と別れる。

 そうすると、後ろから天野さんが来た。


「北村君! 見てたよ! 私たちも交換しよ!」


 天野さんがそう言って来る。

 僕は嬉しさと驚きで倒れそうだったがなんとか持ち堪えて、


「うん! わかった!」


 光の時とは大きく違う返事をしてしまう。もちろん嬉しいからだ。だが、天野さんは気にした様子はなかった。

 そうして僕のスマホに2人の連絡先をげっとした。しかも1人は僕の初恋の相手である、天野さんの連絡先をゲットすることができた。

 これは良い学校生活を送れる予感!

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