第4話 天野さん波乱の入学式◎

 僕らは入学式に出るために入場門の前にきてた。なにやら少し準備しているようで、


「待機時間が10分ぐらいあるから、ちょっとまっててねー」


 と言う報告を先生から受けていた。


 (あー、10分も暇なんて。天野さんと話そうにも一番前だから行けるわけないし。他の人と話そうにも話す人なんて……いた!)


 目の前の人があくびをして暇そうにしている男子が目に入った。

 体育館で叫んでしまったので、頭おかしいやつ認定されてないか不安になりながらも、


「こんにちは。よければ少しお話ししませんか?」


 僕は丁寧に敬語で話しかける。


「お? あー、あの大声で叫んでた奴じゃねーか。いいぜ。お前、面白そうだしな」


 あの体育館で叫んでしまったのを聞かれてるのは恥ずかしい限りだが、そこは一旦置いておく。


「じゃあまずは自己紹介しますね。僕は北村 悠と言います。よろしくお願いします」


 そう言うと、


「北村 悠な。じゃあ悠だな! それにしてもいい名前だな! 俺はな、大倉 光おおくら ひかるって言うんだ! これからよろしくな!」


 光と名乗った男子のことを僕は


(やけにフレンドリーで、とてもからみやすそうな人だなぁ)と、感じるのであった。


「大倉 光だな。光、よろしく!」


「おう!」


 光がソワソワした様子で


「で? で? なんであんなに叫んでたんだ?」


 と、聞いてくる。

 それから続ける。


「まあそのことにつながるけどな、第1印象は頭おかしいやつって感じだったけど、話してみてよく分かった。悠は頭おかしいやつじゃない」


 と、僕がこの高校に入り、抱え込んだ第1の不安をすぐに解消してくれた。


「ありがとう!」


 僕は素直に嬉しくてお礼を言う。

 

「ん。で? 前者の質問については?」

 

「いやー、それはな…」


 一番言いたくないことを聞かれてしまった僕。


 (一目惚れしてしてしまった女子と同じクラスになれた! と、馬鹿正直に言うと、光に天野さんが好きだと言うことがバレてしまうしな…)


 そんな事を考えていると、


「んー、まあ悠が言いにくいことなんだったら言わなくていいけどよ。流石に、今初めて喋ったばっかりだし深くは言及できないしな。まあいつか聞かせてくれよな!」


 (光の方が引き下がってくれて助かったー! でも、こう言う事を察してくれる人っていいよな)


 と思いながら


「うん。わかったよ、光」


 光は僕に微笑んで見せた。

 そのノリで、僕も微笑み返しておいた。なんやかんやで僕にも男友達が出来たのであった。


 それから色んな会話をしているうちに10分が経ち、僕たちは入場して、入学式が始まった。


 式辞や校長先生のお話、生徒会会長の話と、順調に進んでいった。

 そして、次のプログラムは新入生代表の挨拶となった。

 そのアナウンスが流れると、天野さんが壇上の上に登って、今話し始める。


「桜の花が咲き始め、温かい日差しが降り注ぐようになりました。この度は…………………この学校に入学できたのはこの学校の入試の時に私と単語勉強をしてくれた方のおかげだと思っています!」


 思わず


「へ……?」

 

 と言う言葉が口から出てしまったが、あまりにも小声だったので、幸いにも気にしている人はいないようだ。

 

 (天野さん、なんてことを言ってくれてるの!? それにそんなにあの入試前の単語問題の勉強効果あったの!?)


 そんなことを思っている時にも、天野さんは話続ける。


「わたしはその人にとても感謝しています! その人も実際この会場におり、びっくりしていることでしょう! とりあえずこの場を借りて感謝を! ありがとう!! これからも仲良い友達としてよろしくね!! ……この学校に入学できたことに私たち、87回生は感謝すると共に入学の言葉といたします」


 パチパチパチパチ!!!


 大きな拍手が鳴り響く。


 (え? なんで? なんで今のでこんなに拍手すごいの?? 校長先生の話とは比べ物にならないよ?? と言うか今の挨拶何? 僕への感謝の言葉がほとんどですごく照れるんですけど?? てか、本当なんでこんなこというの???)


 そんなことを頭が大混乱を起こしながら考えていると、


「おーい、悠。退場だぞー」


 どうやら式は終わってしまったらしい。

 数十分頭がこんな感じだったようだ。


「あ、うん。ありがとう」


 何が起こったのか、頭の中で処理ができないまま僕たちは教室に戻っていくのだった。

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