第4話 私の今後の身の振り方についてですが

「リ、リーリエ!落ち着いて」


「サルトル!どうして落ち着いていられるのよ!あり得ないわ!私はあなたが公爵家の跡取りだから!付き合ったのよ!子爵の次男に興味はないわ!」


 あらあら……なんて嘆かわしい事でしょう。


「リーリエ!君は私のことを愛しているんじゃなかったのか!」


「愛してたわよ!公爵令息を!!公爵令息じゃない貴方なんてただの礼儀知らずの芋じゃない!」


 芋なんて酷いですわ。素朴で可愛いかったのですよ。わたくしはそんなお芋ちゃんのサルトルを10年間も好きでいたのに。

 まあ、お芋ちゃんにかけられた素敵な恋の魔法はさっきバラバラに砕け散って解けたのですけどね。


「マ、マリア……」


 リーリエさんにこっ酷く振られたお芋サルトルは、情けない顔でこちらをみますが、なんの情も浮かびませんでした。


「サルトル、マリア嬢から離れたまえ」


 不意に誰かがわたくしの前に立ちました。


「今までは婚約者だから一緒にいられた。だがもう今は違う。この夜会という公式な場で君からマリア嬢に話しかけることは無礼だぞ」


 この方は第二王子のブレア様だわ。わたくしより一つ年上でたまにお話しさせて貰った事もあったわね。


「マリア嬢、大変だったね。そしてものは相談なんだが、私の婚約者にならないか?」


「え?ブレア様にはアザレア様がいらっしゃるではありませんか」


 今もブレア様の後ろから静々と淑女がやってくる。学園で同じクラスの立派な令嬢だ。


「あら!良かったではありませんか!ブレア様。ブレア様は元々マリア様のことが大層お好きでしたので!そうしてくだされば私も心置きなく隣国へ行けますわ!そうしましょう、そうしましょう!」


「いや待て!私とてチャンスは欲しい!あんなサルトルですら、好きでいたマリア嬢の一途さはぐっとくる。私と婚約を!」


 ジルティン様が割り込んできます。


「控えよ、ジル」


「嫌ですよ、ブレア様!マリア嬢の人気を知っているから、今この場で婚約を取り付けようとしてるんでしょ!」


「う、うるさいぞ!ジル!こんなに好かれるなら、誰だって嬉しいに決まってるだろ!じゃがいもでもあれだけ愛して貰えるんだぞ!」


 えっ?!わたくしってばそんなでしたっけ??


「きょとんとしておいでですけど、有名でしてよ?マリア様は。ふふ、可愛いお方ね?これから仲良くしてくださるかしら?」


 アザレア様に言われて、わたくしはびっくりしました。そんなふうに言われてたなんて!頬が熱くなりますわ!

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