第9話 元彼の事情

『下駄箱にある君の靴にくっつきたい』9話

体育の時間が終わり、ルーカスが結衣を保健室に呼び出した。ルーカスは宇田先生に保健室を使うことを了承してもらい、端のベッドへと結衣を誘った。

ルーカスは彼女に言った。

『なんで保健室か分かる?図書室にいても学校裏に行っても僕みたいな目立つやつは君とは話せないんだよ。ここは唯一僕が好きなところなんだ。なぜなら宇田先生は僕みたいに口が軽くないから。でも、ひとつ僕は君のことを間違って見ていた。君、前に付き合ってた人...学校で自殺したんだってね。それが自分のせいだって思ってから、笑うのも躊躇しているって聞いたよ。笑い方がブサイクっていうのも、元彼に言われたことらしいって僕の友達が言っていたよ』

結衣は怒ったように言った。

『あー、それもみんなあんたの好きを充満させた偽物の友達に聞いたんだ。あんたって最低だし、最悪すぎる。私のこと調べ上げるとか、私のこと無害とか言ったのに、本当は有害と捉えていたってこと?』

ルーカスは笑いながら言った。

『そんなこと言うなよ。この調査方法は全部父から学んだんだ。付き合う前に無害かどうかは噂、性格から学べとね。でもその噂が本当か分からないからこうして会って分かるように毎回してただけ。今まで誰とも付き合わなかったのは、告白してきた子と毎回ここであって検証してから決めてただけの話。でも、結衣が無害って言うのは元々知ってたから。だって、お前僕にひとつも興味ないだろう。愛し方を教えるとかも嘘だろ、ただ僕がどんなやつか知りたかったのと、お前の前に付き合ってた人と僕が仲良かったの知ってたから生前彼が何を言ってたか知りたかっただけだろ』

結衣はため息をついて言った。

『はい。全部当たってる。私の元彼は優しくてなんでも抱え込む人だった。それで、元彼は生徒会の人間だった。彼は飛び降り自殺をする前に、私にメールしてきたの。彼は『僕は本当は死にたくない。でも、キミを守るためなら僕は死にます。今までごめん。ありがとう』と書いてあった。

これが最初で最後の言葉だった。誰かが絶対彼を殺したんだと思う。ルーカス何か知らない?』

ルーカスは満面の笑みで言った。

『君の元彼が死んだ理由は知ってるし、誰が殺したかも知ってる。でも、正直に言うと殺した相手はもう死んでるんだ。彼は僕が2年の頃同学年で、君の元彼にテストの答えを職員室から持ってくるように言ってきたんだ。君の元彼はそれを断った。それに逆上して、彼は飛び降り自殺に見せかけて殺した。君宛に遺書を残してね。その後、殺人鬼となった彼は警察に捕まるのが怖くなり、自宅で自分の喉を切り自殺したらしい。でも、まさか君が彼の元カノだとは知らなかった。今まで黙っててごめん』

結衣はしゃがみ込み涙を流した。

そんな結衣を抱きしめた。

結衣は泣きながら言った。

『触らないで。知ってたならなんで、あなたは2年の時に食い止められたかもしれないじゃない。彼が死ななくて済んだかもしれないのに、この馬鹿...バカ』

『それは残念だけど無理よ』

割って入ってきたのは、宇田先生だった。

宇田先生は言った。

『飛び降り自殺をした彼のもとに最初に駆け寄ったのは、ルーカスくんよ。彼はあなたの恋人を助けようとしたの。でも、ダメだった。搬送時にルーカスくんと私は病院に行って、ルーカスくんは彼を助けようと血だらけだった。でも、助からなかった。ルーカスくん本当のことを言わないとダメよ。だから、あなたもルーカスくんをそんなに責めないであげて。お願い』

結衣は涙を拭いて言った。

『ごめん、最後まで彼に付いててくれてありがとう』

ルーカスは言った。

『本当は助けたかった。でも、無理だった。今でも悔やんでるよ』

宇田先生は2人の手を持ち言った。

『彼の分まで幸せになりなさい。あなたたち付き合ってるんでしょ』

2人は顔を見合わせて言った。

『『えー、知ってるの?』』

ルーカスが言う。

『困ったな。でも、先生僕ら破局した時はもっと驚いて下さいね。じゃあ、そろそろ行こうぜ結衣、泣いている暇は無いくらいこれから楽しもうぜ』

結衣は涙を拭い言った。

『りょーかい』

そう言って保健室を出て行った。

宇田先生は彼らがいなくなった後に、LINEでこないだの講義できた松野さんにLINEした。

『男女のカップル誕生!ルーカス×山地結衣。どこまで続くだろうか。乞うご期待』

宇田先生何やってるの⁈


次の話は南礼司が山地結衣とルーカスのカップルぶりにイライラして学校に嫌がらせをする話である。

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