運送ギルドの儲けのカラクリ
結局、あれから3往復して日がすっかり落ちるまで畑の収穫をしていたソイルとセモリナさん。
「すっかり日が暮れちゃったわね。こんな暗い道をゴーレムで走るのは危ないから、今日はリヒト村に泊まって明日の朝出発する? (それにソイルくんと二人だけで泊まれるし……ケイトも居ないことだししっかり添い寝しないとね)」
最後の方は小声だったので聞こえないソイルであった。
「確かにメタルゴーレムは今までと桁違いに速いので夜道を走るのは危険ですね」
ソイルが答えるのを聞いたゴーレムはなにかを伝えたそうな感じでアピールを始めた。
「ゴレ! ゴレ!」
するとゴーレムの胸から明るいライトが付いていて周りを照らす。
「明るっ!」
ゴーレム集団によって照らしまくられる夜の村。
突如現れた太陽のように明るい照明にセモリナさんは目を細めてるぐらいだ。
「ゴレ! ゴレ!」
「これなら全然問題なく夜でも走れそうね」
「じゃあ帰ろう」
「あっ? えっ? 帰っちゃうの?」
ソイルと二人きりになって婚前旅行気分でリヒト村に泊まれると思ったのに、少しガッカリなセモリナさんだった。
*
ソイルたちがウッドストックのジョン町長宅に戻ると執事さんに案内される。
「お夕飯を用意していますので、お風呂で汗を流したら食堂に来て下さい」
とのことなのでお風呂に入った後に食堂に向かうけどジョンさんもブランさんも居なかった。
「お父さんもジョンさんもいないね」
「どこに行ったのかな?」
すると執事さんが伝える。
「旦那様はブラン様と一緒に各ギルド長と話をしにいったようです」
ブランさんに喧嘩売る奴もいないだろうけど、ジョンさんと一緒なら心配ない。
そう思うソイルであったけど……。
「ジョンさんと一緒ならお父さんも喧嘩したりしてトラブル起こさないから一安心ね」
ブランさん、どれだけ娘に信用されてないんだか……。
セモリナさんはボアシチューを食べながらソイルに聞いてくる。
「ところでソイルくん、『リヒト村から食料を運ぶことが運送ギルドのダメージになる』って言ってたけどどういうことなの?」
ソイルはシチューを食べながら説明を始める。
「運送ギルドは流通を止めてると言われてるけど、実は完全に流通を止めてないと僕は思ってるんです」
「そうなの?」
「運送ギルドでは多くの御者さんを所属させているから、流通を完全に止めたせいで多くの休業保証金を御者さんに払ってると思うんですよ」
「たしかにお賃金が貰え無かったら御者さんも困るし、ギルドで飼ってる馬も餌が買えなくなって飢えちゃうもんね」
「そうなんですよ」
「給料が手に入らないんじゃ困るから、馬を持ってる人はギルドを抜けて勝手に馬車を走らせる人も出そうね」
ソイルは頷いた。
「そこで流通を完全には止めないで、物価が高騰する程度に流通量を絞ってるんだと僕は思うんです。物価が高騰したところに高値で食料を少量流せばいつもよりも多額の利益を得られるとね」
「そんなことしてたの?」
「証拠は無いけどたぶんしていると思います。でも僕らが肉も小麦も流し始めたから物価も急激に下がって今頃運送ギルドは大混乱のはずだよ」
「ソイルくん、悪知恵働きすぎ!」
セモリナさんと笑いながら夕食を取っているとブランさんとジョンさんが外出から戻って来た。
ブランさんは浮かれた顔をしている。
「お前たちも戻って来てたのか」
「はい。今戻って来たところです」
「俺たちが肉や小麦を流したことで、高騰してた物価が下がり始めて運送ギルドの奴らも焦りまくってたぞ。あとは流通ギルドが話し合いどうりに動いてくれるかだな」
ジョンさんも運送ギルドの儲けのカラクリに気が付いてブランさんと一緒に手を打って来たようだ。
話し合いがうまく行ったのか、ジョンさんも笑顔を浮かべている。
「運送ギルドから食料が流れてきても今後は流通ギルドで取り扱わないように、僕とブランさんで話をつけて来ました」
ブランさんはビールのジョッキを一気に空けると、大笑いする。
「ここまでうまく行くとは思ってなかったな、ジョン」
「お兄さんの思惑通りですね」
「さらに運送ギルドの奴らを焦らせましょうか? 僕には名案があります」
ソイルはとっても悪い顔をして名案とやらを語り始めたのであった。
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