ゴーレムの進化

 ウッドストックへ到着したブランはジョン町長の屋敷に行くと庭に大量の支援物資を降ろす。


 物資は50頭のボアと大量の薪だ。


 狭くはない町長宅の庭が支援物資で埋め尽くされた。


「本当に食料を運んできてくれたんですね。ありがとうございます」


「俺が嘘を言うわけが無いだろ。約束通り食料と薪を運んできたぞ。準備の方は出来ているか?」


「はい、お兄さんの言った通り食料と薪はギルド経由で流通経路に乗せるように手筈を取りました」


 支援物資と言えど無料で住民に配布するような事はしない。


 そんなことをしてしまえば住民は助かるだろうが、屋台や料理店が困るし流通関係者やギルド関係者も困り果てることになる。


 あくまでもジョン町長の敵を作らないことを最重要課題とし、足りない物資をハーベスト村から供給しいつも通りの生活を町民全てが送れることを目標とした。


 続々とギルド関係者と流通関係者がやって来て物資を買い取りに来る。


 流通関係者は物資を買い取ると流通経路に乗せるのか足早で町へと戻って行った。


 これでウッドストックは急場をしのげることになるだろう。


 ブランはソイルたちに指示を出す。


「よし! ウッドストックの事は俺に任せて、リヒト村の救出に向かって来い!」


「はい!」


「特にブレイブ、お前の好きなようにやってこい!」


「それって好きに暴れていいってことか?」


「おうよ、ここは俺の領地じゃねーし、俺は見ちゃいねぇ」


 ブランの言いたいことはこうだ。


 俺の目の届かない所では行動規範なんて関係ない、好きなだけ悪人を成敗して来い。


 そう言うことだった。


「それとコスモスとケイト、お前たちには野暮用があるんで残れ」


 長旅で疲れたケイトさんはともかく、コスモスさんはリヒト村に行けずに不服だったようでブラン町長に突っかかる。


「武装化した敵が複数いるのにブレイブとローズとセモリナ、ソイルの4人で本当に大丈夫なんですか?」


 ブランはなだめる様にいった。


「コスモスにしか任せられない野暮用があるんだ」


「野暮用ですか」


「野暮用だ」


 野暮用の中身を察したコスモスが頷くとブランはさらに続ける。


「それにローズもブレイブも戦士としてかなり仕上がってきて、既にお前の知ってるひよっこじゃねえ。今度手合わせしてみろ。かなり苦戦すると思うぞ」


「わかりました」


 それを聞いて安心したコスモスさんは引き下がったようだ。


 *


「よし! いくぜ!」


 馬に乗って早速出撃しようとするブレイブたちをソイルは止める。


「救出した村人の移送にゴーレムを使うからゴーレムで行こう」


「村人が襲われてるんだろ? ゴーレムなんかでちんたら行ってたら間に合わねぇ」


「リヒト村までは馬で30分ほどと聞いたし、ゴーレムも大きな荷物が無ければ速いはず」


「俺が先に行って悪人を退治しとくからソイルは解決してからゴーレムと一緒に来い」


「そうよ、私たちに任せておいて!」


 ブレイブはローズを早馬の後ろに乗せるとリヒト村へと駆け出した。


 セモリナさんもソイルもあきれ顔。


「せっかち過ぎるわね」


「しょうがないな」


「まあ、ブレイブの腕前なら悪人のちょっとした集団ぐらい一人で退治できるだろうし心配は要らないかな」


 ソイルはブレイブたちを追いかけずにゴーレムのメンテを始める事にした。


 メンテ道具を持って来たケイトさんがやって来る。


「ゴーレムのボディーのチェックはしておくから、ソイルくんはMPの補充をお願い」


 ソイルはトレーラーとゴーレムのジョイントを解除し、ゴーレムたちに魔力を注入する。


 重量物を運んでいただけあってかMPが結構減っている。


 MPを注入し終えると黒光りしていたゴーレムたちが光り輝き始めた。


 ――魔力の注入を確認しました。魔力が満タンです。これよりレベルアップの判定を開始します。


 ――ゴーレム1号の作業経験値が溜まりましたのでレベルが122上がりました。

 ――ゴーレム1号のレベルは200を超えました。ダークゴーレムからメタルゴーレムに進化します。


 ――ゴーレム2号の作業経験値が溜まりましたのでレベルが122上がりました。

 ――ゴーレム2号のレベルは200を超えました。ダークゴーレムからメタルゴーレムに進化します。


 ――ゴーレム3号の作業経験値が溜まりましたのでレベルが122上がりました。

 ――ゴーレム3号のレベルは200を超えました。ダークゴーレムからメタルゴーレムに進化します。



「噓でしょ」


「またレベルアップしたの?」


 ケイトさんも腰を抜かす勢いで驚いている。


「メタルゴーレムって今じゃ作れる技師がいなくて作り方も不明になっていて、国に3体しか残っていないレジェンダリーのゴーレムじゃない……。まさかダークゴーレムが進化してメタルゴーレムになるなんて思ってもいなかった……」


「メ、メタルゴーレムって、そんなにすごいの?」


「すごいってもんじゃないわよ」


 よくわからないセモリナさんと違ってケイトさんは驚きすぎて口をあんぐりだ。


 ゴーレム軍団の輝きが収まると、そこには鏡のようにギラギラと反射しやたらマッチョなメタルゴーレムたちの集団が立っていた。

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