聖女なんだなぁ、せいじょ
どかんとぱおん。
序章 はわわ!私が聖女なの?(激かわ)
第1話 はあ、聖女なんですか
「すなわち!貴方様こそが聖女様なんです!」
「ほへー(感嘆)」
なぁんでこんな事になっちゃったかなー。
そんな事を考えながら、私は今日1日の始まりを思い返していた。
********************
ここは羊毛の名産地。一度はおいでよソンダケ村。沢山の羊たちと一面に広がる草原以外ほとんど何もない辺境の田舎村だ。でも、私はここののんびりとした雰囲気がとても気に入っている。
今日も私ハリナは、幼なじみの村長の息子・エランソとその妹、ヘラーテルちゃんと一緒にお花畑で遊んでいた。
「おらぁ!くらえ!バックドロップ!」
「ぐぁー!!!!!」
「ひゅー!ハリナお姉ちゃんかっくいー!」
地面にめり込むエランソとクマのお人形さんを振り回しながら応援してくれる可愛い可愛いヘラーテルちゃん。
ソンダケ村は今日も何事もない平和な一日だ。
だったのに…。昼過ぎになって、とっても綺麗な金の装飾をあしらった馬車がやってきてから村は大騒ぎだ。どうやら王国の偉い人が来たみたい。神父服を着た若い男の人が、エランソのお父さんと何か話している。
私たちはそれを木陰からチラチラ覗きながら、こそこそ話をしていた。
「うわっ!見ろよあの神父。すげーイケメン。うちのしわくちゃ神父とは大違いだぜ」
「そう?確かに若くはあるけどなんか胡散臭くない?」
「カッコいいお顔だねぇ。この村になんのようなのかなぁ」
「うちの羊毛がすげーから褒めに来たとか?」
「んなわけないでしょ。うちの羊毛は並み中の並みよ。むしろ下かもしれないわ。なんか生臭いし」
「なんだと〜!」
「しっ!お兄ちゃんうるさい!」
あ。気づかれた。私たちの方を見て、一瞬キョトンとした表情をした神父だったが、まるで花が開くようにキラキラ笑顔に打って変わる。
「やべっ!逃げるぞ!」
逃げる必要あるかな?
エランソが私とヘラーテルちゃんの手を掴み、駆け出したので私もなんとなく走る。
何やら背後に気配を感じたのでチラリと後ろを見てみると、超絶笑顔の神父さんがものすごい勢いでこっちに走ってきてた。
「な、何あれ!手と足の動きが早すぎてめちゃくちゃ気持ち悪い!」
しゃかしゃか走るその動きがまるで虫みたいでぞわわと鳥肌が立つ。
「来てる!来てるよ!早く早く!」
私は声を荒げ、2人を急かす。あれは絶対やばい人だ。初めて不審者を見てしまった。
「お待ちくださーい!お待ちくださーい!!」
声が!声がどんどん近づいてくるぅ!やばいやばいよ!
「エランソ!なんかいい道具とかないの!?このままじゃ追いつかれちゃう!」
「んなこと言っても手ぶらだ!なんもありゃしねえよ!」
「む!ハリナおねぇちゃん何かあるかも!」
でかした!ヘラーテルちゃんは持っている熊のお人形の背に手を突っ込み中を探り始める。これでもない、それでもない、と中からフォークや石ころ、お花などが飛び出してくる。え?その中どうなってるの?うわ!今なんか手みたいなの出てき「出てきてないよ」えぇ?ほんとぉ?
「あったぁ!」
ようやく見つかったとばかりに取り出したのは顔くらいの大きさの瓶だった。え?本当にどうやって入ってたの?ま、まぁいいや。その瓶を見てみると、中にはどろっとした青っぽい液体が入ってるみたいだった。
「これスライムの粘液だよ!この前、商人さんがきた時にお父さんにおねだりして買ってもらったの!」
えへ♡と愛らしい笑顔で首を傾げながら答えるヘラーテルちゃん。将来は男たらしになりそうだなぁ。
「お待ちををををををを!!!」
ってやばいやばい!超近いよ!
「エランソそれあいつに投げて!」
「俺、俺、前なんも買ってもらえなかったのに!」
んなことどうでもいいわぁぁぁ!!!!
「馬鹿エランソ!ありがとうヘラちゃん!オラぁ!くらえェッ!!!!」
私はヘラちゃんからスライム入り瓶を受け取り、中身を背後の地面にぶちまける。
「お待ちを゛ごぼらぁっ!!!」
しゃぁっ!決まったぁっ!スライムに足を取られた神父は顔から地面に突っ込み、勢いのままごろんごろん転がっている。
「よし!今のうちに隠れよう!」
「ふふ、無駄です!」
なにっ!?つい先程転んだはずの神父の声が再び聞こえ、動揺し振り返る。なんとそこには、
そこには土下座の体勢でこちらにスライディングしてくる神父の姿があった。
え?なんで土下座?
「なっ!?あいつ、スライムを塗りたくることで摩擦を利用しやがった!?」
え?なんで土下座?(2回目)
「ふふふ、スライムを使い、足止めしようとしたのは見事です。ですが、我らジョルスキヌス12神教の神父はスライムの使い方を心得ている!多忙な中生み出された、神に祈りながら移動する新感覚懺悔スタイル!今、貴方は神の奇跡を見ている!」
ぐぅぅっ!速い!というか土下座で移動ってなに!?新感覚すぎるでしょ!神様って寛容なんだね!そんなことを考えてると、土下スラ神父がものすごい勢いで私たちとの距離を詰めてくる。
まずい!追いつかれる!何かないか、周囲を見回して思いついたままに私は叫んだ。
「そうだ!あいつ勢いつきすぎて曲がれないんじゃ!」
私の提案に、顔を見合わせ三人でうんと頷いた。近くの家を指差し叫ぶ。
「あの家の角で曲がろう!せーのっ!」
ザザザザザザザザザザッッッ!!!!!
しかし回り込まれてしまった!
土煙を上げて回り込んできた神父さん。なんと長い足を伸ばすことで、それを起点に曲がったらしい。それに驚いた私たちは疲れからか驚きからかへたり込んでしまう。
神父はざっと立ち上がり、息一つ荒げずキラキラした笑顔で私たちに近づき、ガッと私の腕を掴んでこう言った。
「お迎えにあがりました!我らが世界の救世主!貴方様こそ聖女様に違いない!!」
はえ?
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