ハヅルの深夜ラヂオ

羽弦トリス

第1話テレホンショッピング

「さぁ、始まりました『ハヅルの深夜ラヂオ』。今夜はDJハヅルが初登場と言うことで多少緊張してます。キンチョーの夏。日本の夏って言いますよね。あ、もう9月か。さて、記念すべき1曲目は、サブ北島で『函館の女』どうぞ!」


「いや~サブちゃんはいいですね。今夜はイベントがあります。高橋電気の前田さんのテレホンショッピングのお時間です。前田さん宜しくお願い致します」

「はい、高橋電気の前田です。今夜はお値打ちで、更にこのラジオを聴いていらっしゃる方にリスナー割引があり、チャンスです。ちょっと、ハヅルさん、トイレ行っていいかな」

「生放送だよ。我慢しろよ!」

「腹下してんだよね」

「仕事してから、トイレ行けよ!さて、皆さまメモのご準備は出来ましたか?前田さん、1品目は?」

「……ひ、1品目は高橋電気イチオシのカーナビです」

「カーナビですか~」

「気になるのは、値段ですよね?」

「早い、早い。それは、僕の言葉だからさ、説明して下さい!」

「トイレに行きたくて」

「バカ、お前の状況の説明じゃなくて、商品の説明だよ!」

「分かりました。このカーナビは行きたい場所を設定すると、道順を知らせてくれるシロモノです」

「それって普通じゃない」

「が、しかし~」

「おっ!くるか?」

「テレビも見れます」

「バカ、最近のカーナビはどれもテレビ、音楽イケルは!」

「ですから、高橋電気は値段で勝負です」

「おっ、てことは値段が気になる!」

「な、なんと1500円で提供します」

「えっ、1500円?」

「はい、1500円……あっ、15000円です」

「それでも、安いですよね」

「なんと、今ラジオを聴いているリスナーさんには、更に高橋電気は炊飯器もお付けします」

「斬新ですね、カーナビ買うと炊飯器がついてくるんだ」

「はい。もういいでしょ?トイレ行きたい!」

「我慢しろよ!」

「続いての商品は……あっ……」

「前田さんどうしましたか?」

「ハヅルさん。さっきオマケした炊飯器が次の商品でした。どう、します?終わる?」

「何か出せよ!」

「う◯こは、出せるよ……あっそうだ、次の商品はこちらになります」

「もう少しで手が出るところだったぜ。さて、前田さん何でしょうか?」

「電動歯ブラシです」

「あぁ~、今流行りですね」

「この商品、歯垢除去率98%です」

「お高いんでしょう?」

「高橋電気は頑張りました。通常17500円の値段をぐんと下げて、200円です」

「えぇ~大丈夫?ホントに大丈夫?前田さん」

「私、営業本部長です。ウソはつきません」

「じゃ、前田さん。電話番号をお願いします」

「えぇ~と、080ー××××ー××××です」

「何の番号?」

「私の会社スマホの番号です」

そこに、スタッフがハヅルに近付き、紙を渡した。

「テレホンショッピングの最中ですが、臨時ニュースです。家電製品大手の高橋電気が事実上倒産しました」

「えっ、うちの会社が?」

「はぁ~、前田さんお疲れ様でした」

ブリッ!

「くさっ、前田さん」

「実が出ちゃった」

「ハヅルの深夜ラヂオ、また明日!エンディングは高田渡で『値上げ』です。皆さんサヨナラ~」

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