異世界のゴミをリサイクルして、最強を生み出す

サプライズ

第1話



「私は謝罪と賠償を求めます。」


目の前には間抜けな顔。おそらく国王と思しき冠をつけた人間が、何を言っているんだこいつは、というような顔をしていた。


だが、これははっきりといわねばならない。

私には言う権利があるのだから。




さて、皆さんはまず様々なことを聞きたいと思うだろう。


ここはどこだって? それは私も知らない。

だが、どこか城の一部屋だ、おそらくファンタジー世界の。


先ほど俺はこの世界にやってきた。やってきた、というよりかは誘拐されたが正しい。


どうやらこの城の一室、おそらく地下で行われた召喚の儀式により、無理やりこの世界に連れてこられたのだ。


召喚と言うと皆さんはどう思うだろう。嬉しいと思う? 新たな希望を思う?


私は召喚というと新たな可能性を考えていた。


たが、現実は違った。いや召喚と言うか、ファンタジーで何を言ってるんだと思うかもしれないが、これは紛れもなく現実。


その現実は最悪で始まった。


この世界のファーストコンタクトはまずパンチで幕を開けた。


ああ、思い出すとイライラしてくる。


いや、わかるよ? 召喚された最初の光景が、目の前にあった死体だし。 その周囲にいろんな人が悲しい表情浮かべてたから、おそらく大事な人だったのだろうし。


おそらくだが、召喚の時の何かで死んでしまったのだろう。


確かに悲しいよ、それは。


けどね、俺からしたら誘拐の手助けして死んだとかじゃないの? 悲しもうにも悲しめないよ。


しかもそれを俺にぶつけることないじゃん。しかも固い握りこぶしで。


久しぶりに殴られたわ。人間、慣れてないことされるとマジで頭真っ白になるな。




いいかい。人間同士、最初にやることはまず挨拶だ。その挨拶がパンチは、我々は肉体言語を思考言語にしていますってか? オークか。


…以前いたゴミを思い出すなぁ、おい。 こちらの話をまったくもって理解しない感じだ。


わずかな怒りが全身を巡ったとき、俺の右手がうずいた。明らかに、今までなかった感覚だ。


召喚チート。


そんな言葉が頭をよぎる。そして、何をすれば何になるかを直感で理解した。

正義の行いに対する正当な権利。



いま、行使するか? いや、無理だな。条件を満たしていない。


それにあいつらはまだ情状酌量の余地あり…。まだ。




で、その時のパンチで知的でインテリな俺は肉体言語が交わせず一発で瞑想に入った。


そして目が覚めて連れられた場所が、今目の前にいるおっさんがいる部屋だというわけだ。



相手が何か言う前に先制する。これが正義の会話術。長年鍛えてきた金剛の論理を通すための技術である。


出会って開口一番でこういった。


「私は謝罪と賠償を求めます。」














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