闇鍋を食レポするだけの話

まめでんきゅう–ねこ

第1話 絶望感

「すみません、急に呼び出してしまって」

「構わないよ」

ある街のカフェで、私は部下に呼び出された。


おっと、自己紹介しなくては、私は木村マサル。しがないサラリーマンだ。趣味はない、結婚もしてないと、あまりいい生活はしてないが、かと言って不自由な生活をしているというわけでもない。収入は意外と高いが、食費以外にほとんど金を使うことがないから、貯まっているのだ。


「ところで、なんの用なのだ」

「はい。僕、実は最近闇鍋にハマってまして」

「闇鍋?」

「はい。知らないんですか?知り合い同士で食材を持っていくんですけど、自分以外にはなんの食材か教えないんですよ。んでそれを鍋に入れて部屋を消して、みんなで食べるんです」

「はあ」

「その緊張感がたまらなく好きで、めちゃくちゃハマってるんですよね」

へえ、そんなものがあったのか。だが暗い部屋で食べて何が楽しいんだ?

「けど、普通の鍋を部屋を暗くして食べて、何が楽しい?」

「全く、わからないんですか?別に鍋の具材に決まりはないんですよ?みんなとんでもない食材を持ってくるんですよ」

「例えば?」

「そうですねえ。確かこの前やったときは4人でやって……、ナマズとイチゴとホイップクリームとソーダでしたね」

「マジかよ」

「まだ楽なほうですよ」

思ってたよりもやばい鍋のようだ。

「それで、今度やるとき先輩も誘おうかと」

「いや、遠慮しとくよ。ハハハハ」

流石にナマズなんて食いたくねぇ。

「大丈夫ですよ。みんなに無難なもの持ってくるよう言っといたんで」

「ああそうかよ」

マズイことになってきた。コーヒーがイチゴの味がしてきたように感じてきたのだが、気のせいだろうか?

「今度の日曜日にやるんで、僕の家に来てください」

「いやでもお前の家知らんし」

「じゃあ送っていきますので、待っててください」

なんだこの絶望感は。今度の日曜日は楽しいことでもしようと思ったのに。まあ私には趣味なんてないのだが。

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