第33話 古代兵器の実力

「はじめにことわっておきますが、今までの暗殺剣士だと思ったら大間違いですよ」


 僕らの前に突如現れたフードの男が機械兵と呼ばている人形2体を指さしてニヤリとする。


「エレニア? あれどういう魔物なの?」


 フードの男が現れてからエレニアの様子がおかしい。何か知っているようだけど。


『マキアス様、あれは魔物ではありません』


「え? 魔物じゃない?」


『はい、機械兵といって古代の大戦時に使用された古代兵器です』


「え? 古代の大戦てそれ何千年もまえの話じゃない。昔お父様に読みかせてもらった記憶があるわ」


 リーナの言う通り、ぼくも聞いたことはあるけど実際の話だなんて思いもしない。昔話として記憶している程度だ。


『そうね、今の人たちにとってははるか昔の出来事、でもわたしにとっては…』


「まああなたちは知る必要はないことですよ、さて」


 フードの男はエレニアの言葉を遮るように会話に割って入り、機械兵たちに指令をだす。


「機械兵A、B! 報告!」


[サー!シレイカン! ゼンパーツイジョウナシ、オールグリーン。 MSIジュウテン100パーセント。 サー! サー! ]


『MSIを製造していたのはあんたの差し金ね? あんなに大量のMSIを製造して何を考えているの! そこの2体にあそこまで大量のMSIは必要ないはずよ!』


 そういえば、エレニアの言ったようにポーション工場の火事の際にそんな名前の樽があったような気がする。


「そうですよ、無数の機械兵を起動させるには大量のエネルギーが必要ですからね。あなたがポーション工場を破壊してくれたおかげで、計画が多少狂いましけどねぇ。ここで不安要素をすべて排除できるのでまあ良しとしましょう」


『排除だなんてバカなこと言わないで! マキアス様! この者たちは絶対にここで倒さないといけません!』


「わかった! エレニア!」


 エレニアとフードの男の会話は良くわからないが、いずれにせよリーナを狙っていることに変わりはない。ここは全力で切り抜ける。


「さて、おしゃべりはここまでですね。機械兵A、B! 攻撃目標前方の男1名マキアスと女1名リリローナ第三王女!」


[サー! シレイカン! モクヒョウハイジョのメイレイ、カクニンカンリョウ、ハイジョコウドウヲカイシスル。サー! サー!]


 機械兵2体が、敬礼のポーズをとり「サー! サー!」と命令を復唱している。


「よし、試運転もかねますか。機械兵A! 武器を使用せず打撃のみで攻撃せよ! 機械兵B 現距離から歩兵小銃を使用せよ!」


 1体の金属人形がガチャガチャと音を立てながらこちらに前進を開始する。なんか変な歩き方だな。

 もう1体はなにか筒のようなものを背中から取り出して構えた。剣にしては短いし刃もないようにみえけど、なんだあれ?


「考えていてもしょうがない! 先手必勝!」


 僕は抜刀して走りつつ、斬撃を機械兵Aに放つ。鋭い剣閃が機械兵の胴体に直撃するも鈍い音とともに弾かれた。

 僕は構わず、連撃で剣を振るう、空を鋭い剣閃が飛びまわるがいずれもダメージをまったく与えられない。


「ぐっ! 物凄く硬い!」


[ダゲキコウゲキカイシ。オラ、オラ、オラ、オラ、オラ]


 金属のグーが無数に飛んできた。僕は剣で1発目を防ぐも凄まじい反動で後ろに吹っ飛ばされそうになる。


「ぐっ! 物凄く重い! 硬い! 【風力創成】速力アップ! 」


 スピードを上げてグーをかわす! かわす! かわす!


[ダゲキソクドアップ! オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ]


 うお! グー速い!! 

 速力を上げないとかわしきれない! 僕はさらに速度をあげる、体の負荷が増えるが今はそんなこと言ってられない。


「これは…なるほど風力創成のコードを自身に付与してスピードを上げているのですか。ユニークなコード使いですねぇ。機械兵B! なにをボーとしているのですか! 歩兵小銃にて目標を攻撃しなさい!」


 フードの男が後方から声をあげる。


[サー! シレイカン! サー! シャゲキカイシ! サー!]


「やれやれ、いちいち命令が必要ですか。指令コマンドの整備が不十分ですね、改善の余地ありですか。あとサーサーうるさいですねぇ」


「うわっと! 危ない!」


 高速のグー攻撃に気を取られていると、後方から何か光の筋が飛んできた。 


「え、エレニア? 何あれ? 魔法??」


『いえ、マキアス様、あれは古代文明の兵器のひとつで、おそらく機械兵標準装備の歩兵銃、いわゆるレーザー銃です』


 レーザー銃? 後ろにいる機械兵Bとやらの構えている杖がその銃なんだろう。杖の先端から魔法の光が矢のように無数に飛んでくる。

 僕は速度をあげてなんとか回避を重ねる。僕の後ろにある馬車が穴だらけになっていく。リーナは自身の周りにライトシールド展開して防いでいるようだ、一安心か。


「なるほど! レーザーて魔法か! 当たると痛そう!」


『いえ、魔法ではなく古代文明の科学兵器です。荷電粒子を銃本体の粒子加速器によって高速で打ち出す…て何言ってるのわたし! あと当たっちゃだめです! 死にますよ!』


「え? 何? ごめんグーとレーザーを避けるの必死で聞いてなかった!」


『………と、とにかく! このままだと体力が削られる一方です! 広範囲のコードを使用して攻撃しましょう!』


「わかった! 【太陽光創成】! 目標! 機械兵2体! 」


 僕は近接していた機械兵Aからいったん距離を取り、瞬時にスキルを発動する。


 □-------------------------------


【万物創成コード】


「太陽光創成」


 ☆空から光が降ってくる

 ・天候状態が晴天の場合発動可能

 ・複数の目標捕捉が可能(使用者のレベルによる)


 □-------------------------------


 上空から光の束が地上の機械兵2体めがけて降り注ぐ。次々と光の束が命中して機械兵の周辺に砂煙が舞う。


『マキアス様! 全弾命中です! さすがです!』


 たしかに命中した、だけど…


「―――っ!」


 砂煙の中から高速のグーパンチが飛んでくる! 


『そんな! 直撃したはずなのに! まさかシールド装備!』


「ええ正解ですよ、大戦後期型の防御シールドを標準装備させていますからねぇ。ダメージなど受けるはずがありません。なんども言ってるでしょう、あなたたちはここで全滅するんですよ。機械兵B! 小銃をグレネードランチャーに切り替え! 攻撃開始!」


[サー! シレイカン! テキダンホウハッシャ、サー!]


 後方の機械兵Bが構えた筒から、黒い塊が煙を吹きながらこちらに突っ込んでくる。


『マキアス様! 伏せて! リーナ! 自分の周りにライトシールドを展開し続けなさい!』


 僕はエレニアが言いう通りに伏せた瞬間、後方で激しい爆発音が響き渡る。


「り、リーナ!」


「マキアス! 私は大丈夫よ! 何の魔法よこれ、馬車が!」


 即座に後ろのリーナの無事を確認すると、リーナはライトシールドに守られて無事だった。しかし、馬車は粉々に吹き飛んでしまい、あたり一面に細かな残骸が宙を舞っている。


 今まで長旅を支えてくれた馬車なので色々と思い入れはある。そして、なにやら白い布がたくさん宙を舞っている、荷物の一部だろう、黒や赤もあるな。


「ん? なんかこれ前にも見たような…」


『ああ、マキアス様…これリーナの下着ですね、正確に言うとパンツですね』


 な、なるほど、パンツだったか。

 って、エレニアさんマジですか!?


「ちょ、な、なによこれ! いや~~~~~~~~~!!!」


 第三王女の叫びが、僕らと古代兵器の決死の戦場に響きわたった。

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