第71話 闇の再訪

 掲示板があんなろくでもないことを話す所だったとは……。

 私の下着について話し始めてた時は掲示板の削除依頼出した後、一人一人探して殺しに行こうかと思ったよ。


 ……通報に留めておいたけど。載せられた写真は全部削除させるようにも依頼したし、これはもういいでしょう。



 掲示板を見ていたら、いつの間にかこの場に100人が集まっていたらしい。この部屋の中央に運営の人が現れていた。


「最終ラウンドを勝ち残った皆様、おめでとうございます! 賞品とこの後について説明に参りました」


 そういえばそうだ。殺すことに夢中になってたから賞品のことすっかり忘れてた。


「お話するのはこちらのきり漏斗じょうごについてですね。他のプレイヤーの方々も後々使えるようになりますが、皆様には早期解禁という形になります。詳しい性能については《鑑定》でご覧下さい」


 なるほどね。早く使えるならそれだけ良いし、後で見てみましょうか。


「こちらのエリアについてですが、タブレットから交流エリア、通常世界に自由にお戻りになれます。ですが、こちらには戻れませんのでご注意ください。8時間後まではこのまま利用になれますので、それまでご自由にご歓談ください。それでは失礼します」


 私は元の世界に戻っていいかな。話すこともないし、知り合いがいたとしてもチャット使えばいいでしょう。


 タブレットから通常世界を選んで転移した。



「……っと。周りは……大丈夫か」


 《自由飛翔》の訓練をした山に戻って来ていた。時間が夜なこともあり、周りに人影は無いようだった。



 さて、賞品と第3Rのお礼の品の確認としましょうか。一つ一つ《鑑定》しておいた方がいいでしょうね……



 まずは錐を確認する。


□□□□□

臨時帰還の錐 Lv.1

耐久力:∞/∞

帰還の羽を使用して転移する地点を追加出来る。宝玉に先端を触れさせることで設定可能。

□□□□□


 簡易的な転移に使えるようだった。帰還の羽のCTである24時間の制限付きということにはなるが。



 次に金属製の30cm程の大きさの漏斗を確認する。真ん中に黒い膜が張られていて、中を見通せなくなっている。

 

□□□□□

魔道具合成機 Lv.??

耐久力:10000/10000

触媒を用いると、大きい方に入れた魔道具を分解し、小さい方にある魔道具を強化することが出来る。

□□□□□


 魔道具の強化アイテムというところらしい。持っている魔道具自体数は少ないため、使う機会は先になりそうだった。


 その次に防具を見る。


□□□□□

鎧武者の篭手 Lv.20

耐久力:4000/4000

闇属性耐性増加(中)。即死耐性増加(弱)。


鎧武者の兜 Lv.20

耐久力:5000/5000

火属性耐性増加(中)。水属性耐性増加(中)。即死耐性増加(弱)。

□□□□□


 鎧武者の付けていた防具だった。耐久力は高いが重さや今の装備との相性を考えると使い道は少ないようだったので、今のところは置いておくことにした。


 残りは鉄のインゴット、銅のインゴット、通貨のネイ、メダル、回復薬系統が幾らかと、見たままの品だった。



「それじゃあ次は……」


 第2Rのお礼に貰った品の確認に移る。

 ネイとメダルは置いておいて刀を確認する。


□□□□□

断魂の刀 Lv.30

※詳細鑑定不能※

□□□□□


 第2Rで倒した鎧武者の持ってた刀と同じようなものだった。Lvから見るに、そのまま同じ品という訳では無いらしい。近いうちに使えるようにLvを下げたとかそういう所だろう。



 私のLvが足りてないから《インベントリ》で眠ってて貰いましょうか。魔道具の類でしょうけど、Lv足りないと効果は出ないし………………え?


 刀を《インベントリ》に仕舞った所で、非常に良くないものを見つけてしまった。


「――――!」


 そこには150cm程の大きさの人型をした闇がいた。まだこちらを見つめるだけで攻撃をする気配はないので、一先ず《鑑定》を試す。


□□□□□

見定める闇 Lv.1

HP:30000/30000 MP:18000/18000

耐性

火:80 水:80 氷:80 雷:80 風:80 地:80 光:0 闇:100 物理:100

□□□□□


 相変わらずLvとステータスが噛み合ってない。


 さて、闇も物理も完全に無効化されるし逃げ……


「!?」


 逃げられなかった。

 正確には離れられなかった。この闇を中心とした円の中でしか動けなくなった。


 これは……鎧武者も使ってた《影踏み》かな。


「――――!」


 闇が何かしようとするのに合わせ、《無形の瘴霧》で姿を消す。

 消えると同時に闇の周りに黒いドームが現れ、内側に向けてアイアンメイデンの如く針が飛び出てきた。


 霧状態になれるお陰で中では刺さらずにやり過ごせた。



 危ない危ない。視界はモノクロサーモグラフィー状態だけど、多分これ真っ暗なんでしょうね。暗闇の中で全身を刺されるって中々酷そうだ。


 ……ちょっとこのスキル欲しいかも。



 そんなことを考えていると、針は戻りドームも無くなっていた。


「――――?」


「ちょっ……えっ!?」


 霧状態が強制的に解除された。あまりにも唐突だったため、理解が追いつかなかった。だがそれを待つほど優しくは無いようだった。


「――――!!」


「あ゙だっ!? ……え」


 一瞬、全身を激しい痛みと不快感が襲ったが、その感覚はすぐに無くなった。




「……――――、――――――」


 その直後、闇は何かを話した後、箱を残して消え去った。



「え、ええ…………?」


 嵐のように過ぎ去った今の出来事を、何から何まで理解できなかったので一度落ち着いて考える。



 えっと、まず最初に拘束されて針のドームに閉じ込められる。その後、スキルを解除されて一瞬何かされる。それで何か話した後、箱を残して居なくなった……と。


 最初の2つは普通に攻撃でしょうね。一瞬激痛が走ったのは何だろう……



「最初に会った闇と照らし合わせて考えると、即死攻撃?」


 最初に会った時は死んで、今のは死ななかった。つまり、即死耐性があったから死ななかった、って考えれば納得は出来る。


 ドレスにあった即死耐性のお陰で助かったよ。


「話したことは分からないとして、残した物は……」


 さっきまで闇がいた場所を見ると、アイテムボックスが残されていた。

 近づいて開けてみると、中には……




「うわぁ…………何これ」


 見るからに危険でまるで呪われているような、厚さ1,2cm程の薄い本があった。



 どうみても危ない物だよねこれ。今まで見たことないくらい禍々しいオーラが溢れ出てきてるけど。

 でも流石にスルーする訳にはいかないか、《鑑定》! …………え?



 今までで最も理解出来ない結果が表れた。

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