第37話 約束と解放
前話の投稿時刻を誤って19時に設定していました。失礼いたしました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あ、あの」
「ん? どうしたの」
「なんであれを、何も言わないんですか?」
「え、言ったでしょ? 気にしないって。怒ったり腹立ったりするでしょ、それくらい……」
「今後、ゲーム内で会うのはもうやめましょう」
「えっ、なんでそんな事言うの?! 折角会えたっていうのに……」
「私はこのゲームで今までに何度も人を殺してます、惨殺と呼べることだってしてます。そして、今後も続けるつもりです。だから、あなたには迷惑をかけたくないので離れましょうと言ってるんです。分かって貰えますか?」
「納得いかないから、だから会わないなんて言わないで!」
「……そうですか、分かって貰えませんか。…………それなら、無理矢理にでも別れましょう」
双剣を取り出してコスモスの首元に向かって切りかかる。
「っ……!」
だが彼女のLvは17、つまり《チュートリアル》で守られていることになる。そのため、刃は首を切り裂くことは無く、表面が透明な膜で覆われているかのように滑る。
「なら……」
今度は首を突き刺そうと勢いを付けて刺そうとするが、刃は触れることはなく彼女を押し倒すことになる。
「ライブラっ! 待って、落ちついて!」
「っ…………」
幾ら刺そうとしても、首を絞めようとしても全く攻撃が通らない。
――それから少しの間、攻撃出来るはずのない彼女を無我夢中で殺そうとしていた。
頭に血が上ったからか、自分のしていたことを今になってようやく理解出来た。
どうしよう、落ち着いて考えたらこれが間違いということは明らかなのに。
「もう、落ち着いてって言ってるでしょ!!」
――ガツンッ!!
突然私の頭に鈍痛が走った。
一瞬何が起きたか理解出来なかったが、私が手を緩めたタイミングで、秋川さんに頭突きをされたらしい。
「いっっ…………」
「ライブラ。今何で私に攻撃したのか、話してみて?」
「えっと、それは……私はこれからも人を殺していくつもりで、一緒にいたらコスモスさんまで悪く思われることになるので。だから私からの距離を離そうと……」
「そこ! なんで私と距離を置こうとしてるの」
「もう私といる必要はないからですよ、だから」
いきなり起き上がったかと思えば、両頬を手で挟まれた。
「へっ?」
「私がなんでライブラと一緒にいると思ってるの。私が一緒にいたいからだよ?」
「えっ、なんでですか…………」
「私最初に会った時からライブラのことずっと気にしてたんだよ? それでFIWを知った時に『これなら一緒に楽しめるようになる』って思って。だから、始めた後凄い楽しそうにしてたの見てすっごい嬉しかったの。やりたいことは出来てるんでしょ? それなら、やり続けても大丈夫だよ」
「……だからって殺戮してるのは酷いでしょう」
「ううん? 寧ろ応援するよ。普段は静かで優しいけど、裏では殺戮をしてるってギャップがあってなんかいいと思う!」
予想していたより遥かに優しい返答で気が抜けてしまった。
「もう……何なんです。ずっと心配してたのが馬鹿みたいじゃないですか……。良いんですか? 今後も殺戮はやめませんよ?」
「勿論! 何なら手伝うよ?」
「それは流石に遠慮します! そんなことしたらあなたまで異常者認定待った無しですよ」
「ライブラさんとならそれも良いかも」
冗談めかした口振りだが、その目は見ようによっては本気だった。
「……駄目ですからね?」
「しょうがないなぁ。それでも普段とゲーム内の両方は私だけが知ってられるし、定期的にこうやって会うくらいにしようか」
「そうしましょうか。コスモスさん、あなたが背中を押したんですから、後悔しないでくださいね?」
「うん、約束するよ!」
「ありがとうございます。それと…………ごめんなさい、みっともない所を見せてしまい」
さっきは何を考えてたのか自分でも分かってなかったくらいだったし。
「気にしてないよ。過ぎたことは後悔してもしょうがないから! これから何をするのか、私も楽しみにしてるから、ライブラさんも楽しむのがいいよ!」
「ええ、これからも私が楽しめること第一でいきますよ。最後まで見て下さいね――私の殺戮録を」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます