第17話 尚とふたりきりの再会

自然と涙がこぼれてしまった。




私は急いで、涙と拭おうとした。




「花宮さん。」


翔は震えた声で、私を優しく抱きしめた。




私はそれを拒むことができなかった。




そして、私は泣き続けた。




落ち着いた後、翔は私の家まで送ってくれた。




家に着くと、罪悪感でいっぱいになった。




ああ、翔を困らせてしまった。


翔は悪くない。


始まりは尚と私の問題だった。


いや、私だけの問題だったはずだ。




それなのに私は他人に迷惑までかけて…


はぁ。このままじゃダメだ。




尚と話さなければならないと思った。




翔に、尚の連絡先を聞くことにした。




翔は、なんの疑いもせず、私に連絡先を教えた。




そして、私は尚に些細な連絡を入れた。




「この間はすみませんでした。ちゃんと話したいです。会えませんか?」




返事はすぐに返ってきた。




「こっちこそごめん。いいよ。」




そして、週末に会うことに決まった。


このことは翔には秘密だった。


これ以上、関係のない翔に迷惑はかけたくなかった。




あっという間にその日は来た。




「花宮。久しぶり。いや、この間以来か。」




「ええ。柴田さんはお変わりないですか。」




他人行儀な会話を進めていくと、久しぶりに上司だった柴田尚を思い出す。




今思うと、この人はかなり、口下手だったんだな。


私の仕事は認めてくれた。


ひとりひとりをちゃんと見てくれる。




でも、思い出すのは、私に放たれたひねくれた言葉や尖った言葉。




素直になれない性格なのだろうか。




今になってやっと、尚のことを冷静に客観的に見ることができる。




ああ、なんであれだけで会社辞めちゃったんだろ、自分。




ばかだなぁ。




「花宮。覚えてるか。あのとき。」




柴田尚の声で我にかえる。

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