淡い恋心

マオがリオンの部屋へと訪れる。


主は休んでいるため、カミュがドアの外にて対応する。


「マオ、ティタン様に提案された事とはどのような事だ?」


「リオン様の事を心配し、ミューズ様がこちらに来て回復魔法を掛けたいそうです。リオン様の元に来る許可を得たくて来たのですが…リオン様は今休まれてるですか?」


そっと部屋に入らせてもらう。

覗き込んだ顔は憔悴の色が濃い。


「そうだな、まだ無理かもしれんが…」

「そうですか…」


「…マオ?」




マオの声にリオンは目を開ける。


「あぁごめんね。折角君が来たのに、かっこ悪いところを見せた。体力はつけていたつもりなのに…駄目だな僕は。ティタン兄様の足元にも、及ばない」

「起きてはダメです。寝てるのです」


無理やり起きようとしたリオンの体をマオは押し止めた。

リオンは驚きで息を吸う。


「あんな筋肉王子と比べるのが間違ってるですよ。リオン様はリオン様ですので、無理してなろうとしなくていいです」


テキパキと毛布まで掛けられ、リオンは大人しくベッドの上でマオの方を向く。

「ねぇカミュ。なんでここにマオがいるんだ?君が呼んだのかい」


心配で来てくれたのなら嬉しいな。

リオンは疲れた頭でそんな事を考えていた。


「リオン様、マオはティタン様より伝言を預かってきました。リオン様の体にミューズ様が回復魔法を掛けたいと。リオン様の許可さえあれば、すぐにでもいらっしゃるそうです」

「ミューズ様が?」


彼女から感じた魔力は微弱だったと思うが、体力が回復し、魔力も戻ったのだろうか。

どれくらいの腕前かは知らないが、少しでも効くなら嬉しい。


マオがここに居てくれる時間も少し伸びるかも。


「それならばお願いしたいが、無理はしないようにも伝えてくれ」

「では、すぐに呼んで来るです」


動こうとするマオをカミュが制した。

「俺が行く。リオン様の様子を詳しくミューズ様へ伝えるから、マオがここにいてくれ」

カミュは部屋を出ていく。




マオとリオンは二人きりとなった。


「お水とかいるですか?」

「今は大丈夫、迷惑かけてごめんね」


マオは首を横に振る。


「リオン様が魔法を使ったのは、ティタン様とミューズ様の為なのです。迷惑どころか感謝しかありません」


「そう言われると嬉しいな。ありがとね」

感謝されるのは嬉しい。


「お礼をいうのはこちらです。ありがとうございます。リオン様にはいっぱい助けられてます」

マオが頭を下げた。



「助けられてるかな…」

リオンはしんみりとした声で話し出す。


「少しでも力になりたくて、色々な魔法を習ってきたんだけど、攻撃魔法はあまり覚えられなかった。僕の魔法は戦で役に立つものが少ない」 


リオンの魔法は探査や補助がメインだ。

 

せめて情報集めくらいと思ったが、こんなに広い範囲まで魔力をのばしたのは初めてだった。

そのため体に負担が来てしまった。


マオにポンポンとあやされる。

「そんな事ないです、情報が早いのは重宝します。リオン様は凄い魔法使いです」


王族相手でも物怖じしないマオ。


「もう、子ども扱いしないでくれよ」

「失礼したです、ついうっかり」




マオはリオンより年上だ。

思わず子ども時代を思い出して、行なってしまった。



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