第23話 初めてのゲーム実況
西木くんが、初めてゲーム実況に挑戦する動画が公開された。提案したから、まず自分がやってみると率先して、彼が最初にやってみることになった。
野球の試合が終わった後。ホテルで一人だけになった俺は、早速パソコンを開く。公開された動画を見てみることにした。
「は、はじめまして。えっと、俺は、フライドライスと申します。よろしくお願いします。チームセブンというチームに所属している、あの、ゲーマーです。海外の大会に出て、優勝したこともあります」
チームセブンのロゴが表示された画面と、西木くんの声が聞こえる。少し緊張したような声だった。動画はちゃんと編集されていて、彼の言葉に字幕も付いているので見やすい。
「えーっと、そうですね。早速、今日は俺のプレイを皆さんにも見てもらおうと思います」
ゲーム機を起動する。それから、画面にゲームのタイトルが表示された。少し前に発売された、難易度高めのアクションゲームだ。かなり評判のいい作品だった。俺も発売した日に購入して、クリア済みだった。なかなか面白かったのを覚えている。
「……さてと、いきましょうか!」
どうやら彼は、初めてのプレイらしい。チュートリアルを熱心に読み込んでから、ゲームを始めるつもりのようだ。初見プレイ、というやつか。
「えーと、これは、どういうことなんでしょうか?」
チュートリアルの最中に、いきなり敵が現れる。西木くんの戸惑う様子が伺えた。
「あ、はい! ……とりあえず、この敵を倒せばいいんですよね? じゃあ、こんな感じで」
色々な操作を試しながら、西木くんはゲームを進めていく。その動きは、初心者そのもの。
「んー、なんか、このゲームは難しいようですね……。俺は、アクションゲームとか普段はあまりやらないんですが。でも、こういうのも面白いかもしれませんね」
最初は苦戦していたものの、段々と慣れてきたのか。動きが良くなってきた。操作に慣れるのが早い。ものの数分のプレイで既に、初心者プレイヤーを脱している。
「おぉっ!? こいつ強いなぁ……。まあ、まだ負けないけどね!」
徐々にゲームの腕前を上げていく西木くん。気付けば、あっという間にボス戦まで辿り着いていた。
「よっしゃ! これで、終わりだよ!」
ボスを倒して、一度もゲームオーバーせずに最初のステージを無事にクリアする。ゲームを楽しんでいる間にテンションが上って、普段と違う口調になっていた。彼もゲームが好きなんだな。夢中になってプレイしているようだ。
「ふぅ。結構、疲れましたね……」
一息ついた後、西木くんは次のステージへ進んだ。その後も順調に進んでいくようだが編集で、一気にラスボスまで来ていた。この動画の尺に、かなり詰め込んだな。
「……よし、これで勝ちですよ!」
ゲーム画面では、ラスボスが倒れていた。見事な勝利である。そしてエンディングが流れる。
「ふう……、楽しかったです。皆さん、見てくれてありがとうございました」
西木くんが動画を締める。そして、最初の動画を見終わった。
まさか1本の動画で、クリアまでやるなんて。かなり編集されていたので、動画の時間は短かった。重大なネタバレの箇所なども配慮して、ギュッと短くまとめているようだ。それでも、十分に楽しめる内容だった。
その次に、もう一本の動画が公開されている。こっちの動画は、何だろうか。また別のゲームを実況しているのかな。見てみるか。
「は、はじめまして。えっと、フライドライス、です。チームセブンというチームに所属しているゲーマー、です」
再び、緊張した声の自己紹介から始まる。ゲームは、先程プレイしていたソフトと同じらしい。
「えっと、エンディングまでクリアしたので次は、タイムアタックに挑戦してみようと思います。最近、クリアするまでの時間を競い合うのが流行っているらしいので」
この動画では、タイムアタックに挑戦するようだ。さっき初めてクリアしたのに、もうタイムアタックに挑戦するとは。確かに、クリアタイムを競う動画は人気があるからな。
「まずは、一回やってみますね。クリアまでの時間が短くなるように、頑張りたいと思います」
早速、ゲームが始まった。
初めてのプレイに比べたら、ものすごく早い。だが、かなり苦戦している様子だ。急ぐとプレイにミスが増える。それでも、コンティニューは無しでクリアまで一発で辿り着けてしまった。やはり、彼にも常人離れしたゲームセンスがあるようだ。
西木くんのゲーム実況。なかなか楽しみながら見ることが出来た。これは、人気が出るかもしれない。
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