第30話 十三
「だから、この世界にも名前なんて無いわよ」
「え? いや、だって……。異世界転生したら、何とかの世界で何とかという魔王を倒すとかセオリーだろ?」
「ここは、あなたが夜中に見ていたアニメの世界じゃないわよ」
「あ……」
やっぱ俺、まだどこか現実じゃないな……。まぁ、こんな体験なんて普通はしないからな……。
「ミーナおねえちゃん、いじめられてるの?」
考え込んでいると、突然ミミが俺の顔を覗き込んできた。
「ん? あーいじめられてるかも?」
「ちょっと! 小さい子供になに言ってるのよ!」
「別に、本当の事だろ?」
「本当じゃないでしょ!」
アナトと言い合う俺を、ミミがジッと見る。
「ミーナおねえちゃん、なんだかいつもとちがうね」
「え?」
突然のことに、俺とアナトの動きが止まる。
「俺、じゃない、私、そんなに違う?」
「うん。いっつもベッドのうえにずっとすわってるけど、きょうはちがうね」
「あ、あぁ。ちょっと体調が良くなったからミミと遊ぼうかなって思ったんだ」
ふぅ……。別人って訳じゃないのか。びっくりしたぜ……。子供って、なんだかみょうに鋭かったりするからな……。
「あ! ぱぱだ!」
嬉しそうにそう言うと、ミミは窓の外に向かって手を振りだした。帰ってきたのか。どれどれ……。興味本位で外を覗くと、クマ? みたいな凶暴そうな巨大動物を背負っている父親が見えた。思わず、俺の視線は凶暴そうな巨大動物に釘付けになった。あれ、獲ってきたのか? ってことは、父親は猟師? 狩りが仕事? ハンターってやつ? ヤベー燃える! 某、モンスターを退治するゲームみたいだ。後で、話を聞いてみよう。
「ままー! なーなおねえちゃん!」
続けて、ミミが外に向かって手を振る。ん? ナーナさんとお母さん? もしかしなくても、二人もハンターとか? おそるおそる、父親の後ろへ視線を向ける。円柱型の籠を背中に背負った二人の姿が見えた。籠の中には植物? が見えるので、ハンティングはしていないようだ。だよな。あのナーナさんとお母さんがハンターとか、どうかしてるよな。
まぁ、とりあえず今日の夕食は肉ってことか? ぶ厚いステーキみたいなのが食えるのか? それとも、原始人の肉みたいな、骨付きのやつか? 晩飯を想像すると、急に腹が鳴り出した。やっぱ、スープと野菜と果物じゃな……。一応、身体が女の子だからか、あまり量を食えないから空腹とか物足りないとかは無いんだが、食った気がしないんだよな。
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