第18話 一
「今、水を汲むから待っててね」
「うん」
俺が答えると、ナーナさんが嬉しそうに笑う。ナーナさんが笑うと、なんだかドキドキするけど……、俺、今は女の子なんだよな? 同性、しかも姉にドキドキってどうなのよ?
「はい。まずは顔を見てみる?」
井戸から水をくみ上げた桶が俺の前に置かれた。見たいような見たくないような……複雑な気持ちでゆっくりと桶の中を覗き込む。どうか、お母さんやナーナさんに似てますように……。あのごついおっさんには、似てませんように……。
まだ、くみ上げたばかりで水面が揺れる水面を見た。ゆがんだ水面でも分かるほど、ちょー美少女だ! こんな美少女なら、人生イージーモードだろ? 玉の輿だっていけるだろ? 一生、左うちわの人生、確定だろ? ってことは、死因は自殺じゃないよな……? 事故? それとも……。
「ニーナ?」
「うわっ!」
不吉な考えが頭をよぎったとき、いきなり背後から声をかけられて飛び上がるほど驚いた。
「え? ごめん、驚かせた?」
いきなり叫んで飛び上がった俺を、心配そうに見つめるナーナさん。
「あ、ちょっと見惚れてたから……」
違うって! 自分で自分の顔に見惚れるって変な奴だろ!
「じゃなくて……その……」
なんとか言い訳をと思ったら、ナーナさんは嬉しそうに笑う。
「ミーナも色々と気にするようになったね。誰か気になる人とかできた?」
それはあなたです! とは答えられないよな……。
「その、そういうわけじゃなくて、寝込んでいたからちょっと気になって……」
「ちょっとやつれてるけど、大丈夫! 可愛いよ」
「あ、ありがと……」
身内の欲目を除いても、確かにこの顔は美少女だからナーナさんも本音なんだろうな。それにしても、こんなに美少女なのにニートっぽいし、家族もなんだか腫れ物を扱うみたいな感じだったし……。この身体の元の持ち主がどんな人物だったのか気になる。なんだか、家族には聞きにくいし……。
あ、そうだ! アナトに聞けばいいんだ。今日、来るって言ってたし、この身体を選んだのもアナトなんだろうし、詳しく知ってるよな?
「ミーナ、お母さんがご飯って呼んでるから、急ごう」
「あ、うん」
ご飯と聞いて、俺の腹が空腹を訴えた。急いで桶の水を手に取り、バシャバシャと顔を洗う。あ、そういえば顔を洗う洗顔料? とかは……あるわけ無いか……。手早く顔を水で洗い終わると、ナーナさんがタオル? のようなものを差し出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます