私の馬鹿な妹~婚約破棄を叫ばれた令嬢ですが、どうも一味違うようですわ~

鏑木うりこ

第1話 わたくしのお馬鹿な妹

私には馬鹿な妹がいます。


「エリーゼ・カタリナ!私はお前との婚約を破棄し、新たにお前の妹であるカレッタ・カタリナとの婚約を結ぶ!」


「……な、何故でございますか、レオール殿下。わたくしとレオール殿下の婚約は家と家、ひいては貴方様の後ろ盾として……」


「ええい、黙れ黙れ!お前のカレッタに対する嫌がらせの数々、私が知らぬとでも思ってか!それにカレッタには聖女の血が流れている!お前などよりよっぽど素晴らしい血が!」


「し、しかし……聖女の血とはいえ……ローラ……様は……」


「黙れ!誰かエリーゼを連れていけ!そうして……辺境へでも追いやってしまえ!」


 レオール殿下はこの国の王太子。わたくしの6歳の頃からの婚約者でございました。


「エリーゼ嬢、見苦しいですよ。殿下の言う事も最も。さあ、手荒なことをされる前に……」


「……ジゼル騎士団長……あなたもカレッタに……」


「なんとでも言ってください」


 私の前に立ちはだかるのはこの国の騎士団の壇上ジゼル様。この方もカレッタに「骨抜き」にされた方。ああ、もう……。


「わかり……ました。失礼致します……!」


「二度と私の前に顔を出すな!」


「ふふふ、さようなら。お姉様!」


 レオール殿下の横に半分だけ血のつながった妹のカレッタが、笑みを浮かべて立っています。……ああ、なんて事なのかしら。


 ざわざわ……ざわざわ……陛下がいない夜会で、わたくしはレオール殿下に婚約破棄を叩きつけられ、辺境に追いやられたのでした。さざめく貴族達……こんな醜聞、わたくしはこれからどうやって生きたら良いのでしょうか?




「うふふ……ざまぁみろですわ!エリーゼお姉様!」


 カレッタの勝利の声が響いたのです。




「……ホント、カレッタちゃんはやっちゃったねえ」


「可愛いなあ、カレッタちゃんは」


「ホントですよね、うちの妹はお馬鹿で可愛いんですわよ」


 本当にうちの妹はお馬鹿で可愛い……あの子はわたくしが……


「エリーゼ、本当にウチなんかに来てくれるの?」


「ええ、王太子命令ですもの……っていうのは建前ね。わたくしで本当に良いの?ルーシュ?」


「勿論だよ!ああ!エリーゼが僕のお嫁さんなんて……!カレッタは本当にいい子だ!」


「いい子過ぎてお馬鹿でしょう?」


 カレッタから見えない位置で私を呼び止めたルーシュ・アドラス辺境伯令息はにこにこと笑う。


「本当に聖女ローラ様の娘だもんね」


「ふふ、わたくしとも半分は血が繋がってますのよ?」


「君の自慢の「お馬鹿」な妹だもんね」


「はい!」


 わたくし達はそこらへんの婚約破棄とは一味違うのでございます。

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