第62話 枚田の制裁(後編)
驚きの表情を見せる渡部部長。それも当然か。
「渡部部長は“知らなかった”ですもんね? 向井さんのコラボの全容を」
「どういうことだ渡部」
「え、えっと……」
そんな渋らないでくださいよ。渋ったところで私が“全部”話すんだから。
「彼は嵌められたんですよ。ラピスベリーの浅羽副社長に。彼女にあの事件の全容をこんな感じで言われたんじゃないんですか?
『狡噛レンがやらかしました。“そちら側”の落ち度で配信は炎上しています。
これからも我々のラピスベリーとコネクトを得たいのなら、何かこちらにメリットがあることを提示してください。
狡噛レンの処置はそちらに任せます』って」
「…………」
私は先に向井くんから話を聞いていた。だから勝手に思い込んでいた。“ラピスベリーが事実の隠蔽を頼んだ”のだと。
けど、違った。浅羽は大胆にも、“事実を変えて隠蔽”した。
あの時盗み聞きした時に感じた違和感はこういうことだったんだ。
オフコラボの後でも、浅羽副社長>渡部部長と関係性が変わってなかった理由は。
なんならもっと渡部部長は浅羽副社長に頭上がらなくなっているというね。
そしてこの渡部部長はまんまと策にハマりしっかりと調べもせず浅羽に踊らされ、向井くんを活動休止の判断をした。
「そしてこちらをご覧ください」
私は明に用意してもらった資料を社長に手渡した。ここでもっと畳み掛ける!
「こ、これは……【エターナル株式会社のメタバース技術を一度使用させてもらう権利】とはどういうことだ!?」
「!? ……そ、それは……」
渡部部長はラピスベリーとのコネクトを繋ぎ止めるために、エターナル株式会社の武器である“メタバース技術”を無断で提供しようとしたのだ。
「渡部ぇえ゛! お前がしていることは会社の裏切り行為だぁ゛……お前はどういう考えでこんなことをしでかしたんだ。あぁあ゛?」
「ひぇ……!? 申し訳ございませんんん! こ、これは私なりにラピスベリーとのコネクトを保とうと考えた結果であって……」
「何が考えた結果だ! ただただ踊らされていただけではないか!
それに何も相談せず、我々の最大技術であるメタバースの権利を与える件についてはどう説明するんだ!!」
先ほどまで温厚な社長がみるみる鬼と化していく。会議室も騒然としている。
「そ、それは……説明しようとしていましたが……忘れていまして……ぐへへ」
気持ち悪い苦笑いで逃れるわけがないだろう。ちょっと言わせてもらおうか。
「あれ? 渡部部長。社会としての必要最低限のことは“報連相”じゃなかったんですか?」
「!? お前!?」
絶対言おうと決めていた言葉。お前が特大ブーメランを向井くんに言っていたことを思い知らせてやる。
「まー自分で何も考えず、綺麗に踊らされてたら仕方ないですよね?
そうそうあなたバカで! アホ! で部長の器ではないですから、ここいらで潮時でもいいんじゃないですか??」
「ぐぬぬぬぬぬ……!?!?」
言ってやった。向井くんが言われたこと…。言い返してやったぜ! 向井くん!
「私は彼のゲームしてる姿が好きだった……あんな楽しそうにやる彼の姿をみんなに見てもらいたいとも思った……それを君が潰したんだ……処分は追って連絡する。
これにて定期会議を終了する! 解散!」
社長の締めで会議に参加していた人たちがざわざわと話しながら続々と退出する。
そんな中、全てを暴露され俯いている渡部と私と社長だけが残った。
「枚田くん……本当にありがとう」
社長はいち社員の私の前で深く深く頭を下げた。
「頭を上げてください! 本当に!」
流石に社長から頭を下げられる筋合いはない。全部渡部が悪いんだから。
「本当にありがとう。このバカのせいで事業が傾くところだった。本当にありがとう」
メタバースの件だろう。メタバース技術はエターナル株式会社の唯一無二の武器。
そう簡単に与えられるものではない。
この技術が広まってしまったら一気にエターナル株式会社の価値は落ちるからね。
「向井くんの件も本当に残念だ……もっと私が視野を広げていれば……」
悲しい表情を見せる社長。本当に向井くんのことを心から思っていたんですね……
「大丈夫ですよ」
「いや、彼の居場所を与えときながら私は……
「彼はそんなことでへこたれる男じゃありません」
向井くんは辛いことからしっかりと立ち直って……今も配信している。彼は強い男だ。
「今でもファンを思って、配信をしてるはずです。向井くんはそういう子です」
「………そうだな……よし、悔やんではいられない! 我々がすることは今までに広まった向井くんの冤罪を世に晴らしていくことだな!」
「そうですね! 手伝います!!」
こうして私たちの制裁は終わった。浅羽副社長、渡部部長の謎! 見破ったぜ!
V(ブイ)!
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正直書きたい最低限のこと書けました(⌒▽⌒)
この先、全然考えてない( ; ; )
枚田が狸に言ってたブーメランは12話の【社会の闇に直面】のシーンです!
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