第27話 今後の活動方針口論会(後編)

 〔傷を抉ろうとなんて考えてない! 我々は自分の本能に忠実に提案しているだけだ! 我々の推しであるレンは深い傷を負った! だが、我々のために! 我々のためにまた新しく挑戦しようと決めてくれたんだぞ!

 彼の今後の配信の原動力は我々なんだ! 我々がレンのことを思うなら! 彼に欲望をぶつけるべきだ! それが有名になってほしい! 一生配信続けてほしい! 顔を見せてほしい! 全ての欲望を彼にぶつけなければまた新しく始めようとしているレンに失礼だ!!〕


 よほどこの言葉に感銘を受けたのであろう。誰一人この後に続く者はいない。


 だが、逆にたけきのこ山里は心の中で「あわわ……やばいやばい、なんか勢いでやっちゃったけどこれ何を伝えたかったんだっけ!? なんも反応ないのすごい堪えるんだけど!!!!!」と叫んでるに違いない。

 今まで数々の人物の謎行動を的確に説明していたつもりだが、これだけは本当に無理。俺の仕事奪うな! もうちょい考えて行動しろー!!


 



 失礼。そんな沈黙の空間を払い除けた人物がいる。


 進行を務めるサワタライだ。


 〔す、素敵な演説ありがとうございます……で、転生陣営……はやく〕


 先程の進行具合で学生時代毎年、謎に誰もやりたがらない学級委員に積極的にやっていたかのような華麗な進行をしていたサワタイラが、今では知り合いとしか強気に喋れない陽キャがなんか知らんうちに進行任されて、時間だけが過ぎていく低レベル進行を仕出した。


 彼女もたけきのこ山里によって本来の姿を見失った一人だ。同志よ、我々は今から兄弟だ!!


 〔なんとなく言いたいことはわかりました……レンがまた配信を始めようと思えたのはファンがいたから。我々が待っていたから。

 これからの配信の原動力である私たちがレンの顔色を伺って雰囲気盛り下げるより、欲望に忠実になってレンには配信を集中してもらう。こういうことですね。〕

 〔………そうです〕


 ……転生陣営のアバラカタハラーさんには伝わっていたそうだ。分からん、何故わかったんだ……今すぐなんだこれミス○リーに依頼しても良いだろうか。


 〔確かにレンのことを考えるなら、ファン同士でこんな争いしてるのもおかしいですね〕

 〔私もそう思ってました。言い争ってしまいましたが、みんなレンを思う気持ちは変わらないですからね。

 転生っていう案も全然私は構いません。顔出しというのはあくまで我々の欲でしかないので〕

 〔実は私個人もレンの顔は気になっている。けど、顔出しとなるとレンの意志も必要となるから我々で“決める”のではなく“案を提示”するのはどうだろう。〕

 〔いいですね。確かに完全に自分本位で語ってましたが、あくまで配信をするのはレンですもんね〕

 〔よし、決まりだな。進行、代表同士の話し合いは終わった。まとめてくれ〕

 〔わかりました。まとめ! 我々ファン一同からは“活動方針の案を狡噛レンに提示する”。異論のある方はいませんか?〕

 〔〔〔〔〔意義なーーし〕〕〕〕〕

 〔全員賛同の意思があるとみなし、今回の口論会はここで終了です。お疲れ様でした。〕




 今回はあまり私の仕事はなかった。次に期待していてほしい。

 とりあえず見ての通りだが、サワタライがしっかり締めて閉幕となった。




 *向井雄馬*



 「我々はレンについていき支えるファンとして、レンの意志に従うと決めました!」


 ほ、ほう……どうしたものか。

 現在あまり俺の意思が確定していない。


 美瑠さんに話した「ファンと決めていきます!」は建前で、正直ファンがして欲しいことをしようかなとしか考えてなかった。


 ファンに決めてもらうっていっても、前回したツイートの反応から考えるに、俺に着いてきてくれるファンは10万人超えている。

 逆に10万人いるのに「レンの意思に従う」っていう考えにまとめてきたのがすごいな。

 逆にどこでそんなん話すんだろうな。


 いろいろ考えようとスマホを机に置いたらまたデェスコードに通知がきた。


 「しかしレン一人で考え任せるのは気がひけるため、我々から二つの案を提示します! 判断材料にしてくれたらありがたいです!」


 まじか! 俺のファン優秀すぎる!!! 何も考えてないのを察知したのかな!! 

 ファンからの案ってことはみんなの思っていることを知れるってことだろ? そういうの求めてた!


 ・一つ目、転生


 ま、そうだよな。俺もそれは思った。Vtuberとしてまたやり直すなら転生だよな。

 ……ファンが決めたやつにするって言ってたけど……わがままを言わせてもらうなら、“もうVtuberとしては活動したくない”。

 トラウマとまではいかないが、気乗りしないんだ。


 一度失敗してるからかな。あまりVtuber界で生きたくない。Vtuber界で生きてたら、俺を裏切ったぐらぶるダクションやコラボ配信失敗の元凶の最爽エリーの動向が嫌でも入ってくるはず。

 正直やつらと関わりたくない。


 「ってわがまますぎるかー! やっぱ転生しかねぇーかな、とりあえず二つ目見るか」


 そして次に書かれてる文を見る。

 

 これが彼の人生を大きく変える。


 ・二つ目、顔出し(あくまで我々の欲です。あまり本気になさらず)


 「顔出し……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 次で向井の活動方針決まりです。長かった……



 

 



 

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