第33話 闇勇者ハヤトとの闘い中

「『解析(アナライズ)』」


 戦闘が始まるよりも前に、俺は敵である闇勇者ハヤトのステータスを『解析(アナライズ)』のスキルで読み取った。闇勇者ハヤトの力は間違いなく強い。不吉なオーラから感じ取る事ができたが、やはり正確にどれほど強いのかを知る必要があった。


 やはり戦闘においては敵の事を知るのがとても大事な事なのである。

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人物名。闇勇者ハヤト。

LV52 HP520 弱点属性聖属性

※闇の女神ネメシスにより、闇落ちした元勇者。その力は勇者すら凌ぐ。

欠点のないステータスとチート級のスキル。技スキル。魔法スキルを持っている。回復魔法などは使えないが、再生能力などがあり耐久戦にも秀でていて隙がない。

唯一の弱点は闇落ちした事で、闇属性になっている事。聖属性の攻撃が弱点であるが、闇勇者ハヤトの防御ステータスが高い為、有効打にするにはそれなりの威力が必要である。

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「強い……この闇勇者ハヤトは今の俺よりも強い。きっとハヤトが予定通りにチートスキルをあの女神から貰っていたとしても、ここまで強くはなっていなかったはずだ」


 俺は客観的に見た闇勇者ハヤトの強さに慄いてしまった。闇勇者ハヤトは俺は勿論、エステルやレティシアよりも圧倒的な程の強さを持っていた。言わばこいつはボスモンスターだ。


 俺は闇勇者ハヤトに対する警戒心を一層強める。


「皆、気を付けてくれ。こいつはとんでもない相手だ。俺達全員が一致団結しないと勝てない相手だと思ってくれ」


「おいおい……カゲト君。余り僕を見くびらないでくれよ。雑魚が束になって一生懸命に闘いでもすれば、まるで僕に勝てるみたいじゃないか。くっくっく。さあ、それじゃあ、始めようか」


 闇勇者ハヤトは怪しく笑う。闇勇者ハヤトの持っている黒い、怪しい剣が不気味な光を放った。


「『勇者の闘志』発動」


 闘いが始まるよりも前に、俺はパーティー全体に支援(バフ)効果を発揮するスキル。『勇者の闘志』を発動する。このスキルは一定時間(5分程度)、見方全体のステータスを上げるスキルだ。上昇幅はそれほど大きくないが、それでも全ステータスを引き上げる事ができる為、使い勝手の良いスキルだった。


 輝かしい光が俺達のパーティー全体を包んでいった。


「不思議です……かつてない程、力が満ちていきます。流石はカゲト様です」

 

 エステルは感嘆とした様子で呟く。


「よく見逃してくれたな? 俺が支援(バフ)スキルを使用するよりも前に、攻撃してきた方が良かったんじゃないか?」


「ハンデだよ……カゲト君。それに、君達が全力を尽くした上で、それを叩き潰した方が面白いじゃないか。全力を出して、それでも敵わない程の圧倒的な実力差を見せつけた方がさ。その方がより絶望感を人は感じる事ができる。言い訳のしようがなくなるからね」


「……そうか。ありがとうよ。ハヤト、ハンデをくれて」


 やはり、こいつは力に酔っている。絶対的な力は人を傲慢にさせるのだ。そしてそこに隙が生まれる。そこに勝機はあり得るかもしれない。奴に勝てる僅かな可能性はそこにあった。


「それじゃあ、もう準備はいいかな。準備が済んだらこっちから行かせて貰うよ」


 闇勇者ハヤトの手に闇の力が集中している。間違いない。奴は魔法スキルを使用するつもりだ。


「『防御障壁(プロテクションウォール)!」


 賢者であるレティシアもその事をいち早く察したようだ。レティシアもまた、防御系の魔法スキルである『防御障壁(プロテクションウォール)』を発動させる。俺達の目の前に無色透明な盾が展開され、その身を護るのである。


「ふっ……無駄な抵抗を。『ダークウェイブ』」


 闇勇者ハヤトは暗黒の波動を放ってきた。強力な闇の光が俺達に襲い掛かってくる。

 レティシアの放つ『防御障壁(プロテクションウォール)』は非常に強力なものだった。大抵の攻撃を、魔法、物理問わずに弾き返せる、言わば万能の盾であった。だが、闇勇者ハヤトの『ダークウェイブ』は一撃を持って、その盾を破壊した。


「くっ!」


「「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 エステルとレティシアが甲高い悲鳴を上げる。

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 ※俺達のHPが減った。『防御障壁(プロテクションウォール)』を使用した為、レティシアのMPが50減った。

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「……だ、大丈夫か? 皆」


「え、ええ……何とか、大丈夫そうです」


 エステルは剣を、レティシアは杖を使って、立ち上がるのであった。


 凄まじい威力だった。闇勇者ハヤトの魔法スキル『ダークウェイブ』。レティシアの防御魔法である『防御障壁(プロテクションウォール)』がなければと思うと、ぞっとしてしまう。

 少なくとも俺がまともに食らっていたら、一撃で全HPを喪失していた事だろう。そうなればどうなるか……。蘇生アイテムか、蘇生魔法があれば別だが、死んでしまえばこの世界も終わりになってしまうのは現実世界と変わりない。


 そこで俺の冒険は終わりになってしまう。そしてこの闇勇者を、魔王軍を止められる者がいなくなってしまう。


「ふっ……頑張るじゃないか……ゴミ虫のくせに。生意気なんだよ! カゲト君」


 闇勇者ハヤトは連続で攻撃を仕掛けてくる。やはり、素早さのステータスが高いからか。攻撃の後、間髪入れずに攻撃をする事ができるようだ。いつまで経っても俺達のターンが回ってこない。そんなイメージだ。


「いい加減、死んでしまえよ。ゴミ虫共」


 闇勇者ハヤトは暗黒の剣を振りかぶる。奴は技スキルを発動するつもりだ。しかも間違いなく、強力なものだ。


「『ダークエクスカリバー』」


 あの漆黒の剣——恐らくは『ダークエクスカリバー』と言うのであろう。その剣の名を呟いた。剣の名前とスキル名が同じになっているようだった。


「な、なんだ、あれは」


 俺は慄いた。


 天まで届く程までに、暗黒の波動が伸びていく。そのエネルギー量はあまりに膨大だった。その一撃で国すら滅ぼしてしまえそうな程に。実に強力なものであった。


 闇勇者ハヤトは、その暗黒の剣『ダークエクスカリバー』を振り下ろしてくる。


「皆! 逃げろ! あの攻撃を当たったらやばいっ!」


 俺は叫んだ。


「死ね! 虫けら共っ!」


 巨大な暗黒のエネルギーの塊が俺達に降り注いでくる。


 突如、巨大な、爆風のような衝撃が俺達を襲ってきたのであった。







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