漫画大好き少年が異世界に転生したら、無自覚革命児爆誕っ。

風猫(ふーにゃん)

異世界転生と第一次領地革命編

第1話 漫画大好き少年の転生、革命児爆誕。

 気が付けば、俺はベッドに寝かせられた赤ん坊になっていた。ぼんやりと前世の記憶が蘇るが、15才で死んだことと読んだ漫画のことしか思い出せない。たぶん、死んで転生とやらをしたのだろうが、死因は不明だ。


 俺は生まれて半年らしい。毎日、母乳を飲ませてくれるのが母なのだろう。リズ様と付添いのメイド達から呼ばれている。

 まだ、少女のような若さで、髪も瞳もブリュネットの超美人だ。俺のことをジルと呼んでいるが、正式名称はジラルディ・グランシャリオと言う。

 それは、毎晩、俺を抱きに来る父親の名が、アルファロメロ・グランシャリオで、母の名がリザベル・グランシャリオと鑑定で知ったからだ。

 俺はなぜか、前世の記憶と共に名前や能力がわかる鑑定のスキルを持っていた。


「あなた、この子はあなたのブルーの瞳と私のブリュネットの髪を受け継いで、とても聡明な子よ。めったに泣かないし、とても手がかからないのよ。メイド達も感心していたわ。」


「そうか、さすがは俺の跡継ぎ息子だ。早く大きくなって助けてくれよ。はははっ。」




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 俺はまもなく自分を鑑定して、とんでもない魔法の能力を持っていることを知った。

 それは、鑑定のほか『具現科学化学魔法』というもので、異世界でもたぶん俺だけの特異なオリジナル魔法だと言うことだけ分かった。

 ただ、まだその使い方がわからない。


 やっとハイハイできる1才児になってから

魔法の実践を始めて、『具現科学化学魔法』を試して見た。

 その結果、前世の記憶にある漫画やアニメのシーンを想い浮かべると、そのシーンにあった物体や器具がこの世界に具現できるようだ。

 ただ生き物や植物はできないようだ。アニメの動物をペットにしようと、具現化を試みたができなかった。

 

 なるほど、前世の記憶がある俺しか使えないオリジナル魔法であるわけだ。

 この世界にない物を生み出すことは、混乱や俺と家族の身に危険を招くかも知れないので、極力使わず秘匿することにした。


 そして、3才を過ぎ言葉も流暢に話せるようになると、父親に連れられて領地の見学に出掛けることになった。

 父の書斎で見た大陸の地図によると、グランシャリオ領は大陸の東端の入江に面した辺境にあり、北は鬱蒼とした深い魔の森、南は大草原の果てに砂漠がある。西は山岳地帯の細い街道を抜けると我がシルバニア王国に通じている。


 俺は、漫画で見た異世界のことを想い浮かべながら、わくわくしていた。

 定番の農地改革や魚介の干物作りが既にあるのだろうか。それとも俺っちが創り出すことになるのだろうかと。 


 乗馬した父の膝に抱えられ、お尻には藁束の座布団を敷いてくれているが、揺れが酷くて、吐き気がする。

 こっそり浮遊魔法を使って、自分だけ揺れを弱めた。父の前後には10人の護衛騎士達がいる。草原地帯には盗賊が出るし、魔の森からは魔獣が現れるという。


 草原地帯と農地の境をゆったり進んで行く。季節は初夏で、ライ麦畑が広がっている。

 植えられているライ麦は、ばら撒いて植えられたせいか、随分とばらつきが多い。


「父さま、どうしてこんな植え方をするの?

収穫の時にたいへんでしょ。」


 俺は、開拓漫画に出てくる定番の農耕開拓に想いを馳せながら、父に何気なく聞いてみた。

 

「うっ、植え方とはどういうことだ? これが普通だぞ。」


「父さま、種蒔の時に規則正しく種を撒けば、陽当たりや水やりも公平になって、収穫も多くなると、どの本か忘れましたが書いてありました。」


「そっ、そうか。ジルは随分と本を読んでいるのだな。規則正しくとは、どうやるのだ?」


「種を撒く位置を縄で印を付け、その位置に、種も決めた数だけ撒くのです。」


「そうかっ、北の麦畑は、まだ種蒔が始まったばかりだから、試させて見よう。」


 入江の南端に着くと、数人の村人達が海水を釜で煮出して、塩を作っていた。

 出来上がった釜を覗いて見ると大きな釜に、ほんの一握りの塩しかできていない。

 俺は、漫画に出てきた塩田を想い浮かべて、近くにいた村人の一人に話し掛けた。


「おじさん、海水をそのまま煮出しても駄目だよ。濃い海水にしてから煮出さなくちゃ。」


「えっ、坊っちゃん。そんなことができるんかね。」


 そこで俺は、岩場の上に潮の満ち引きの跡を見つけて、満潮で海水溜まりができるように、

岸辺の土地に入浜式塩田を指示して作らせた。

 岩場は俺の魔法で削り、岸辺の内陸に満干が滑らかに行われるようにした。

 さらに、その傍らに片流れ屋根のように麦藁を並べさせて、下に塩が溜まるようにさせた。

 さらにさらに、水車の職人を呼んで、小型の水車を応用した風車を作らせて、塩田の海水を藁屋根に撒くように指示した。


 予定の時間を大巾に超過して、その日は漁村の村長の屋敷に泊まることになってしまった。

 そしてその夜は、漁師達が集まり、領主一行の歓迎会となった。


「それにしても、坊っちゃんはえらいことを知っていなさるんだな。あの塩田とかいう仕掛けだと、薪も使わないだし、おら達がなんもせんでも、塩ができちまうで。」


「砂やゴミが混ざるから、網で除いたりできた塩を撒きながら風を当てて、取り除かなきゃだめだよ。」


「そんなのかかあ達でもできるだっ。その間におら達は漁に出られるだし、すげぇことだぜ。」


「それよりおじさん、漁ってどうやるの?」


「この壁にある投網で取るだよ。投網を広げるのに年季がいるがな。あとは竿釣りだわさ。」


「そこにある藁籠だけど、入口を返しになるように編んで、籠の中に餌を入れて海に沈めれば蟹や海老が取れると思うよ。

 それから、投網のでかい網を作って、錘と反対側に浮きを付けて、皆んなで沖から浜に引き上げると、魚がいっぱい採れると思うよ。」


「なんちゅうこっちゃ、こりゃ、浜の漁に革命が起きるじゃあ。明日から網作りじゃあっ。」


「領主さまっ、坊っちゃんは天才だがにゃあ。皆の衆、明日は朝から網作りすっぞ。酒は程々にしとくんぞっ。」


 その夜、漁村では夜遅くまで賑やかな話し声が途切れることなく続いていた。



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