Sid.18 お泊まり彼女は幼女の相手

 適当に遊ぶと昼になり、レストランエリアで飯を食う。

 お子様用メニューがしっかり揃っているから、子どもが喜びそうだな。

 菅沢はすっかり馴染めたようで、乃愛に「何食べようか」とか聞いてるし、乃愛も「これがいい」とか言って、リクエストしてる。

 まあ何にしても、俺の負担が減ったのは幸いだ。

 ただ、ちょっと嫉妬気味だけどな。すっかり仲良しだし。


「横倉君は何食べる?」

「ハンバーグ」

「子どもみたい」

「いいんだよ。メニューもその系統ばっかりだろ」


 テーブル席と座敷席があって座敷席にした。

 俺の隣に乃愛が座るかと思ったら、菅沢の隣に座りやがった。すっかり取られた感じがする。あんまり距離を縮められてもなあ。俺の乃愛だぞ。

 食事が済むとしばらく食休み。その間も良く話し掛ける菅沢だ。


「まだ疲れてないかな?」

「あそべるよー」

「じゃあ、次はプロジェクション広場で遊ぼうか」

「あそぶー」


 食休みが済むと言ってた遊び場に移動し、ふたりで揃って楽しんでるし。

 菅沢って子どもをあやすのが上手いな。やっぱ母性本能って奴か? 子どもを産んでなくても元来持ってるものかもしれない。それにしては、乃愛の母親は粗末すぎるけどな。捨てるなんて選択をするあたり、やっぱり精神的に子どものまま、だったんだろう。


「横倉君も見てないで遊ぼうよ」

「ぱぱもあそぶんだよ」

「へいへい」

「パパはすでにお疲れ気味だね」


 パパじゃねえ。

 楽しんだあとには、少し休憩を挟み「キッズサーキットだって」と、菅沢の方が乗り気な気もする。

 乃愛を連れて「どれにしようか」とか言ってるし。


「おうまさんがいい」


 あれか、パンダカーと似たようなものだ。電動でのろのろ動く。あのお馬さんは俺と違って疲れ知らずだな。バッテリー切れさえ無ければ。その分、遠慮なく扱き使えばいい。

 跨って動き回る乃愛が居て、その傍で一緒に移動する菅沢が居る。


 その後もはしゃぎまくって、午後三時頃には、すっかり草臥れた感のある乃愛だ。


「はしゃぎ過ぎたんだね」

「おねむのようだな」

「帰りは?」

「俺がおぶってく」


 こういう場所だと親は楽できそうだな。疲れ切るまで遊ばせておけば、勝手に寝てくれるし、寝たらそのまま抱えて連れ帰ればいい。家でも静かに過ごせそうだし。

 どうせ翌日になれば元気になってるだろうけどな。


 屋内型遊園地をあとにするが、すっかり眠りこける乃愛が居て、おんぶして家まで帰る。


「重くない?」

「重くはない。ただ暑苦しい」

「子どもは体温高いから」

「背中に汗掻きそうだ」


 帰りの道すがら、何やら口にする菅沢だ。


「今日、泊まっても大丈夫かな?」

「準備して来たのか?」

「下着とね、シャツだけ」


 なんか変に期待する俺が居るけど、母さんも父さんも居るから、そっち方面は無理っぽいよな。だとすればあれか、乃愛を風呂に入れてもらえる。それだけでも俺が助かるってのはあるな。


「そっちの親は許可してるのか?」

「うん。小さい子の世話しに行くって」

「間違っちゃいないけど、俺の存在は?」

「一応、中学時代の同級生の家って」


 よく許可出たな。どんな倫理観の親なんだよ。


「その、あれか? 関係持っても」

「その辺はね、あんまり煩く言わないから」

「ずいぶん大らかだな」

「だって、あたし十八だよ」


 ああ、すでに成人してんのか。だったら四の五の言っても、反発するだけだよな。


「横倉君はまだなの?」

「俺は来月」

「じゃあ、あたしが少しだけお姉さんだね」

「数か月の差なんて、あって無いようなものだろ」


 行きより少し早い十八分程度で家に着いた。乃愛と一緒に歩かないからだな。

 背中はすでに汗で濡れてるし、なんか着替えるなり、風呂に入ってさっぱりしたい。

 家に入ってキッチンに行くと、母さんが「おかえり。楽しんできた?」とか言ってる。乃愛を見て「しっかり遊べたみたいね」だって。


「乃愛ちゃんは起きそうにない?」

「いや、今動かしたら目覚めたみたいだ」

「じゃあ、お風呂入れちゃって」


 汗掻いてるし、服もそのままだと風邪を引くからと。

 菅沢を見ると待ってました、とばかりに「じゃあ、あたしが一緒に」とか言ってる。


「蒼太も一緒に入れば?」

「あのなあ」

「えっと、い、いんですか?」

「遠慮要らないし、ちゃんと乃愛ちゃんの面倒見るなら、中で好きにしてていいから」


 そもそも男子だから、気を遣う必要は無いとか言ってるし。むしろ菅沢に気を遣わないと、と俺に向かって言ってる。

 一緒は無いだろ。反応したら乃愛が大騒ぎするぞ。

 入りたい気持ちはあるけど。ふたりきりでだ。乃愛と一緒は無い。


「菅沢と乃愛で」

「横倉君は?」

「あのなあ、それだと意味無いだろ」

「あ、そうだね」


 乃愛が股間で遊びたがるから、菅沢に頼んでるわけで。

 先に入ってもらい、俺はあとから入ることに。


「一緒に入ればいいのに」

「だから」

「乃愛ちゃんの手が出たら、握らせても文句言わないから」


 ねえんだよ。アホか。相手は幼児だ。興味本位で握らせるものじゃない。

 ふたりが風呂に入ってる間、菅沢が泊まって行くと言っておき、部屋の準備だけ済ませておく。


「布団は?」

「押し入れにあるでしょ」


 布団だの枕を用意し、適当に丸めて置いていると、風呂から声が聞こえてくる。

 脱衣室に行くと風呂場から「タオル無いんだけど」とか言ってる。そう言えば出してなかった。

 タオルを用意して風呂のドアに掛けようとしたら、勢いドアが開いて乃愛が飛び出してくるし。


「ぱぱぁ! おふろいなかった」

「俺はあとから入るからな」

「あ、横倉君……」


 声のする方に視線を向けると、あれだ、ラッキースケベのシチュエーション。アホくさい程にラブコメにありがちな。目にしたブツは思っていた以上にでかい。

 隠すのかと思ったら全然隠さないし。そこはラブコメと違う部分だな。


「タオル」

「ああ、これ」


 結局手渡しするけど丸見えだ。すげえぞ。

 なんか股間が、と思ったら乃愛が触ってるし。膨張したせいだ。


「乃愛」

「あ、駄目だよ、怒っちゃ」

「いや、でも」

「ぱぱ、なかになにはいってるのぉ?」


 いつも見てる奴だ。変化してるけどな。

 なんかすごいものを見て、乃愛にタッチされて脱衣室をあとにする。童貞には刺激が強過ぎたな。なんか脳裏に焼き付いてるし。菅沢も隠す気無かったってことは、その気満々ってことか。

 でもなあ、夜にやってたら父さんと母さんにバレバレ。やり辛いなんてもんじゃない。


 入れ替わりで俺が風呂に入り、上がると風呂場での乃愛の行動を聞かされた。


「遊ばれちゃった」

「何を?」

「あのね、胸」


 でかいもんなあ。遊び応えありそうだし。乃愛はまだ真っ平だからなあ。自分に無いものには興味を示すんだろう。


「気持ちよくなったか?」

「ならないけど、横倉君だったら」

「いや、そこで」

「あんたらふたりとも、今夜決めればいいでしょ」


 母さんはアホだ。下手したら聞き耳立ててそうだし、恥ずかしいから無し。

 その後、夕飯を済ませて寛いでると、父さんが帰宅した。


「その子は?」


 座っていたが立ち上がってあいさつする菅沢だ。


「菅沢咲奈さなです。お邪魔してます」

「ああ、蒼太のいい人って奴か」

「なんだそれ」

「童貞卒業か。赤飯でも炊いてやるか?」


 要らねえ。そんなめでたいことじゃ無いだろ。たかが童貞卒業程度。


「泊まるのか?」

「はい。あの、お邪魔でしたら」

「邪魔なもんか。家の中が華やいでいい」


 スケベオヤジだな。女子高生ってことで鼻の下が伸びてるぞ。

 男子の家に女子が遊びに来る分には、受け入れる側は歓迎するよな。その逆は相当警戒されると思うけど。

 どこの馬の骨野郎だ、とかでたっぷり吟味しそうだし。その上で駄目出しとかもありそうだ。

 一応、母さんから菅沢の両親に、電話であいさつはしておくようだ。


「礼儀だからね」


 寝る時間になると菅沢に懐く乃愛が居る。俺じゃないのか。


「一緒に寝る?」

「うん」

「俺はいいのか?」

「ぱぱはこんど」

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