新たな依頼
「オーナー、今日もあの方来てましたよ」
メィリィはリザから報告を受け、嬉しさを感じる。
オスカーはあれから度々メィリィの元に来てくれていた。
返品されたドレスには新たな刺繍が施されており、デザインも少々変更されて、プレゼントしてもらえた。
美味しいお菓子付きで。
オスカーが着る騎士服の依頼も、実際にしてもらえた。
オスカーの考えるデザイン画を持ってきて、どのようにするか一緒に語り合うなど、なかなか楽しいものだった。
「アタシ、生まれがパルスなのよ。宝石の国と呼ばれてる華やかなところで、実際にキレイな人が多いのよね」
そのパルスでもオスカーは王家に縁があり、美しく着飾った人とたくさん会った。
しかし、見た目の美しさと裏腹に内政はドロドロしていた。
国王が急逝し、王位争いで空気はギスギス。
新たな国王が決まったおかげで今は落ち着いているが、オスカーが小さい頃はそれは酷いものだった。
時には王子の暗殺未遂も起こり、オスカーはそんな物騒なパルスにいたくなかった。
「幸いにもアタシは縁あってこちらに来れたけど、こっちはこっちで面倒だったわ」
パルス国の者というだけで、金持ちに見られる。
パルスは華やかだが、当然皆が裕福なわけではない。
貧富の差はどこにでもある。
「その頃のアタシは何もなくて、本当にこちらに来ただけ。将来の為にと何とか学校には通わせて貰えたけど、散々だったわ」
平々凡々な見た目と能力。
いつしか誰からも見向きされなくなった。
「手を差し伸べたのがエリック殿下だわ。あの人は敵が多いから、味方が欲しいんだって。裏切らなければ助けてやるって言われたわ」
ヤスリで爪を磨きつつ、ふっと息を吐く。
「だからアタシは頷いたの。生憎とアタシはお飾りの護衛騎士だから、他の騎士に比べて対して強くないわ。だから見た目を飾って言葉を変えて、注目をこちらに集めたの。後ろに控えていざという時にえいやぁって出来ないから、寧ろ最初にこっちから狙ってほしいのよ。アタシがやられてればその間にニコラが必ず来るから、エリック様だけは逃げられるでしょ」
「囮という事ですかぁ?」
確かに目立つけど、派手すぎるのもいかがなものかと。
「そうよ。アタシがキラキラしてればエリック様を狙いづらいでしょ?視界にいつでもアタシが入るもの」
うふっと可愛く笑っている。
「最近ではもう周りは慣れちゃってね、新しい来賓の人しかビックリしなくなっちゃったからもうしなくていいみたいだけど、まぁ、趣味みたいなものよね。もう慣れちゃったし」
「普段のオスカー様はどのようなお顔立ちですかねぇ、気になります」
「あら、見たいの?」
「えぇ、もちろん〜どのような衣装が合うか楽しみですぅ」
化粧が変われば合わせる服も変わる。
興味は尽きない。
「そうね、折角ならばメィリィちゃんに選んで貰いましょうか。アタシの普段着」
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